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日本初の「クリエイティブリユース」の拠点とは?-倉敷玉島のまちに息づく“創造の源”を訪ねて

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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はじめに
などと考えて、あれこれ調べ、2012年に「『すてる』と『つくる』をつなぐ仕事 - アップサイクルによるモノづくりと、まちづくり」1を執筆した。その過程で出会ったのが、大月ヒロ子さんのクリエイティブリユースに関する論文である。当時はまだ「IDEA R LAB」はオープンしておらず、大月さんの著書2も出版前だった。
2013年夏にオープンしてからは、ずっと訪問するチャンスを探していたのだが、ついに昨年実現した。そしてすぐに後悔したのである。もう少しゆっくり時間を作って訪れればよかったと。
倉敷玉島のまちに息づく“創造の源”「IDEA R LAB」を訪問した様子をお伝えする。
1 基礎研レポート2013年1月29日 http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=40454?site=nli
2 「クリエイティブリユース―廃材と循環するモノ・コト・ヒト」著者:大月ヒロ子 中台澄之 田中浩也 山崎亮 伏見唯 発行:millegraph
1――「IDEA R LAB」―300年の歴史ある建物を改装
拠点などというとものすごい施設をイメージしてしまうが、大月さんの生家を改装した建物は、実に周囲の環境に溶け込んでいる。それもそのはずで、300年の間そこに建ち続けてきた歴史がある。
大月さんに、旧母屋と2つの蔵からなる建物を隅々まで案内していただいた。柱や梁は、堅牢さに加え、古民家特有の月日を重ねた深みのある表情を見せている。障子や襖などの建具は、まったくもってシンプルな意匠で、日々の生活で使われ続けてきたことを一目で理解させる。
母屋を改装した、大月さんが「ラボ」と呼ぶ空間は、前面道路に面してガラス戸が広く取られ、外の様子がよく見通せて、とにかく開放的で気持ちいい。外からも中の様子がよくわかり、ここが地域に開かれた場として誕生したことを納得させられる。
2――創造的な雰囲気に満ちた「マテリアルライブラリー」
ここには、大月さんが収集した廃棄素材や、世界中で集めたクリエイティブリユース製品が展示されており、年間を通じて様々なワークショップの会場として使われている。内装や展示ケースなども、生家で使っていた家具や、譲り受けた廃材を活用している。その多くが、参加者を募りワークショップで製作、施工したものだ。
展示されている廃材に創造性をかき立てられ、ワークショップを通じてそれを形にする。創造的な活動は楽しい。この日も、「ミミヤーン」と呼ばれる廃棄素材を使って、ポーチを作るワークショップや、LEDバッジを作るワークショップが行われており、楽しい雰囲気に包まれていた。ワークショップには、近隣の人ばかりでなく、岡山市など周辺地域からも参加者が訪れるという。
3Dプリンターなどのデジタル工作機器を設置した、ファブ機能を有する工房を設けたことで、モノづくりを行う人々をも惹きつけている。筆者が訪れたときも、名古屋や香川から工房利用者が訪れていた。
興味深かったのは、このようにワークショップの参加者とその講師、工房利用者、そして筆者のような見学者が同じこの場所で活動していることだ。それぞれが活動する空間もつながっていて、見通しも、風通しもよく、お互いのちょっとした配慮が効いた心地よい距離感を感じる。空間の仕立て方もあるのだろうが、訪問目的が異なっても共通するこの場所への共感が、その心地よさを生み出しているように思う。
(2017年03月08日「基礎研レター」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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