2017年02月03日

トランプ相場とアベノミクス相場の相違点(為替)~金融市場の動き(2月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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(ドル円レート)

1月の動き 月初117円台後半からスタートし、月末は113円台後半に。
月初、米雇用統計を控えたポジション調整やトランプ氏による保護主義的な口先介入を受けたリスク回避で、6日には115円台後半まで円高が進行。その後はトランプ氏の記者会見に対する失望、英国のEU強硬離脱懸念などから、18日には113円台前半にまで円が上昇した。イエレン議長のタカ派的な発言で19日には一旦114円台を回復したものの、トランプ大統領の保護主義的な就任演説を受けて懸念が高まり、24日には112円台を付ける。月終盤には、27日に日銀の国債買入れオペ増額で一旦円安に振れたが、その後にトランプ大統領による入国制限発令・司法省トップ解任を受けてドルが売られ、月末は113円台後半で終了した。

当面の予想
今年に入って、トランプ大統領による円安けん制発言が伝わったこと、FOMCの声明が予想よりもハト派的であったこと、日本の長期金利が上昇したことから一時112円付近まで円高が進んだが、足元は本日の指値オペ実施による本邦金利低下を受けて113円台前半で推移している。目先は本日の米雇用統計の内容次第だが、先行して発表された雇用関連指標を見る限り、大崩れは無さそうだ。今後ともトランプ政権の動きに揺さ振られる展開が予想され、保護主義姿勢やドル高牽制姿勢が強まる際にはドル安圧力が強まるだろう。一方、市場が待ちわびている経済対策関連の情報が出てくるタイミングでは一旦ドル高の反応が見込まれる。当面は110円~116円のレンジで一進一退の展開を予想する。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)

1月の動き 月初1.04ドル台後半からスタートし、月末は1.08ドル台前半に。
月初、持ち高調整のドル売りで5日に1.05ドルに上昇。さらに12日にはトランプ氏の記者会見に対する失望から1.06ドル台後半までユーロ買いが進んだ。その後は一進一退の展開が続いたが、トランプ大統領の保護主義的な就任演説を受けてドル売りが強まり、23日には1.07ドル台に上昇。月末にはユーロ圏の物価上昇率上昇、トランプ政権幹部によるユーロ安批判を受けてユーロが買われ、1.08ドル台前半で終了した。

当面の予想
米雇用統計を控えたポジション調整によって、足元は1.07ドル台後半へとやや下落している。今後については、ドル円同様、目先は本日の米雇用統計次第だが、今後ともトランプ大統領の言動に左右される展開が続くだろう。ただし、欧州は春に蘭仏の重要選挙を控えており、政治リスクが意識されやすいことから、ユーロの上値は重たい。当面は1.05ドル~1.09ドルでの一進一退の展開を予想している。
金利・為替予測表(2017年2月3日現在)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2017年02月03日「Weekly エコノミスト・レター」)

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