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方向感失う中、金利懸念が拡大~不動産価格は「当面横ばい、東京五輪前後に弱含み、以後下落」が4割~第13回不動産市況アンケート結果

増宮 守
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「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク(3つまで選択)」を聞いたところ、「金利」が52.8%、「欧米経済」が44.1%、「国内景気」が43.3%、「政治・外交」が31.5%、などであった(図表-6)。
今回、「金利」(52.8%)が大幅に増加し、初めて最も懸念されるリスクとなった。日銀が長期金利操作目標を「ゼロ%前後」としているにもかかわらず、米国金利が上昇する中、国内でも金利上昇が早まるとの懸念が生じている。
次に、「欧米経済」(44.1%)が続いた。昨年は「海外経済」として回答者の79.3%が選択していたが、主なテーマは中国経済の失速懸念であった。今回、「アジアおよび新興国」(16.5%)の影響はさほど懸念されておらず、米国のトランプ新政権が金融市場の高い期待に応えられるか否かが主な懸念となっている。また、英国のEU離脱が進む中、結束の弱まる欧州経済に対する懸念も大きいとみられる。
同様に「政治・外交」(31.5%)も大幅に増加した。米国がTPP離脱やNAFTA再交渉に向かう中、日本の輸出企業にとって保護主義の台頭は大きな懸念である。また、2017年は欧州各国で選挙が相次ぎ、英国に続いてEU離脱に向かう各国の動きが懸念される。アジアでも、米国の出方次第で東シナ海の緊張が高まる懸念や、韓国の政権交代がさらなる反日感情に繋がる懸念などがある。
J-REIT市場の見通しとして、「2017年の東証RETI指数の年間騰落率の予想」を聞いたところ、「0~+15%」が72.4%、「-15~0%」が21.3%、などであった(図表-8)。±15%以内の価格変動に収まるとする見方が9割以上であった。
2016年11月の米国大統領選以降、ドル高と株価の大幅上昇がみられた一方、J-REIT価格の上昇は小幅に止まっている。株価に対する出遅れ感もあり、J-REIT価格の年間騰落率はプラスになるとの見方は多い。
ただし、J-REIT価格の大幅な上昇は見込まれていない。実際の長期金利がゼロ%前後に止まっているにもかかわらず、市場の意識が金利低下期待から上昇懸念に変化したことで、J-REIT価格の上値は抑えられている。J-REIT価格が株価同様に上昇するには、賃料上昇期待の高まりが必要である。しかし、米国の内需主導政策は、ドル高を通じて間接的に日本国内に影響するに過ぎず、不動産賃貸市場への恩恵は限定的とみられる。
一方、トランプ新政権への失望が広がる局面では、急騰した株価に比べJ-REIT価格が反落する懸念は小さい。また、再びの金利低下期待の高まりや、一定の利回り水準に魅力を感じる投資家の買い需要がJ-REIT価格の下値を支えるとみられる。
「東京の不動産価格の中長期的な推移」について聞いたところ、「当面は横ばい、東京五輪前後に弱含み、以後は下落傾向」が40.3%、「当面は上昇、東京五輪前後に頭打ちし、以後は下落傾向」が16.5%、「当面は横ばい、東京五輪前に一旦上昇も、以後は下落傾向」が15.7%、などであった(図表-9)。
当面は、米国大統領選以降の株価回復や、日銀が長期金利操作目標を「ゼロ%前後」としていることから、不動産価格の下落懸念は限られ、「当面は横ばい」が約3分の2、「当面は上昇傾向」が約3分の1を占めた。
一方、東京五輪前後の不動産価格推移については、「弱含み」や「頭打ち」などの価格下落懸念が7割強を占めた。2018年以降はオフィスビルの大量供給が続き、賃貸オフィス需給が悪化する可能性が高く、また、2019年10月には、消費税率の10%への引き上げが予定されている。さらには、日銀の金融緩和の出口が議論される可能性も無視できない。また、近年、東京五輪に向けた価格上昇を見込んで取得した投資家も多く、それらの投資家の出口戦略が価格下落圧力になるとの見方もできる。
最後に、東京五輪以降の長期的な価格推移については、「下落傾向」が8割近くを占めた。東京五輪を経て東京の国際競争力が向上する、あるいはインフレの定着によって不動産価格の上昇傾向が続く、といったポジティブな見方は限定的であった。東京都では2020年以降に東京都の人口も減少に転じると予測しており、構造的に不動産価格の上昇は見込みづらいとする見方が多いようだ。
(2017年01月27日「不動産投資レポート」)
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