2017年01月25日

EIOPAによる2016年度保険ストレステストの結果について(2)-EIOPAの報告書の概要報告-

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4|AOL比率への影響のまとめ
ここまでの全体的な影響をまとめると、以下の通りとなる。

(1)ダブルヒットシナリオ
ダブルヒットシナリオの下では、資産価格は下落し、負債も多数の国々でより低い程度で減少する。

負債が減少する理由の一部は、有配当契約やユニットリンク型契約のように、資産価格の低下が資産のパフォーマンスに依存している将来の給付支払いの減少をもたらすことによる。さらに、スワップレートあるいは結果としての基本リスクフリーレートの引き下げは、再計算されるボラティリティ調整(スプレッドの拡大で増加)によって相殺され、さらにそれ以上のものとなる。この過剰補填が、ボラティリティ調整がベースラインに比較して適用される場合に、ダブルヒットシナリオにおける割引率の増加をもたらし、負債が減少することになる。

スウェーデン、リトアニア、クロアチアでは、ボラティリティ調整が使用されていないため、負債は増加する。

(2) 長期低利回りシナリオ
長期低利回りシナリオの下では、資産も負債も増加する。

一般的に、負債のデュレーションは資産のデュレーションよりも長いので、負債の増加は資産の増加以上のものとなり、このためAOLにマイナスの影響を与えることになる。ドイツ、オランダ、スウェーデン、オーストリアは負債が10%以上増加する。これらの国々の負債のデュレーションは相対的に長いので、長期低利回りシナリオに対する脆弱性を示す形になっている。
図表 国別の資産と負債への影響度
5|負債超過資産への影響の要素別分解
ストレスシナリオによる負債超過資産への影響を、資産及び負債の構成要素別にみると、次ページの図表の通りとなる。

(1)ダブルヒットシナリオ
資産では、国債や社債に加えて、インデックス、ユニットリンク型契約の影響が大きいが、最も影響が大きいのは、LTG及び移行措置によるものとなっている。これは、LTG及び移行措置が設定された意図を反映したものとなっているといえる。
図表 負債超過資産への影響の分解(ダブルヒットシナリオ)
(2) 長期低利回りシナリオ
技術的準備金の影響が最も大きくなっている。LTG及び移行措置の影響も一定程度存在しているが、ダブルヒットシナリオのケースに比べてかなり小さくなっている。これは、例えば、ボラティリティ調整は急激で予想外の変化を有するシナリオにおいて影響を持つように構築されており、低金利の継続のような長期の変化を有するシナリオにおいて、保険セクターを支援することを意図していないことと整合している。
図表 負債超過資産への影響の分解(長期低利回りシナリオ)
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中村 亮一

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