2017年01月24日

EIOPAによる2016年度保険ストレステストの結果について(1)-EIOPAの報告書の概要報告-

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6|SCR比率7
サンプル会社全体で、SCRを上回る自己資本は2800億ユーロで、SCR比率は196%、MCR比率は533%となっている。

個別会社ベースでは、SCR比率が100%を下回ったのは2社で、サンプル会社の総資産の0.02%を占めているにすぎない。サンプル会社の7割以上が160%以上のSCR比率となっている。

これらの数値は、EIOPAによる2014年のストレステストで観測されたものと比較して、ポジティブなものとなっている。
図表 SCR比率の会社数分布(ベースライン)
 
7 この「6|SCR比率、7|SCR比率(LTG及び移行措置の影響)」の内容については、「EUソルベンシーⅡにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(3)-EIOPAの報告書の概要報告-」でも引用している。
7|SCR比率(LTG及び移行措置の影響)8
サンプル会社の大部分が、LTG措置を適用している。技術的準備金に関する移行措置は、サンプル会社の20%未満が、利率に関する移行措置は1%のみが適用している。

これらの全てのLTG及び移行措置の適用を除外した場合、全体のSCR比率は136%に低下する。適格自己資本が19%減少し、SCRは17%増加する。この場合、100%を下回るSCR比率となる会社は32社で、サンプル会社の14%、総資産ベースで26%に達する。
図表 SCR比率の会社数分布(ベースライン、LTG及び移行措置非適用ベース)
LTG及び移行措置のうち、ボラティリティ調整(Volatility Adjustment:VA)は64%の会社が適用して、最も幅広く適用されている。マッチング調整(Matching Adjustment:MA)は7%、技術的準備金に関する移行措置(Transitional on the Technical Provision:TTP)は18%の会社が適用しているが、リスクフリー金利の移行措置(Transitional on the Risk- Free Rate:TRFR)を適用しているのはわずか3社でしかない。

なお、LTG及び移行措置の非適用により、技術的準備金は3%増加し、EU/EEA平均でのAOL比率は110%から107%に減少する。
 
 
8 以前のレポート「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの報告書の概要報告-」(2017.1.10)で説明したように、「2016 EIOPA保険ストレステスト報告書」では、MAとVAがLTG措置に、TRFRとTTPが移行措置(transitionals)に区分されている。これらのLTG及び移行措置の具体的内容については、上記レポートを参照していただきたい。
 

5―まとめ

5―まとめ

以上、今回のレポートでは、今回の報告書の概要とストレス前の貸借対照表に基づくベースラインの状況について報告してきた。

次回と次々回のレポートでは、今回の報告書の第3章に記載されているストレステストの結果の概要について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2017年01月24日「保険・年金フォーカス」)

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