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- トランプ政権が発足-選挙公約から政策の軌道修正は不可避
2017年01月20日
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(2)トランプ氏の政治手腕、経済政策に懸念
トランプ氏は、選挙以降に同氏を支える閣僚の指名を行っているが、経済政策運営で重要な経済関係の閣僚人事も含めて順調とは言えない状況となっている。同氏は、財務長官や商務長官については比較的早いタイミングで指名したものの、大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長ポストは、大統領就任式直前の本稿執筆時点(1月19日)でも指名されていない(後掲図表6)。これをオバマ氏が当選した08年と比較すると、経済危機が進行していたという環境の違いはあるものの、オバマ氏が選挙後3週間で指名していたのとは大きな違いがある。
CEAは、大統領に対して経済関係のアドバイスを行うエコノミスト集団で、その委員長は当代一流のエコノミストが就任することが多い。実際、過去にはグリーンスパン氏、バーナンキ氏、イエレン氏など、後のFRB議長や、マンキュー氏、ステイグリッツ氏など著名なエコノミストが就任しており、如何に重要なポストか分かる。
トランプ氏は、選挙以降に同氏を支える閣僚の指名を行っているが、経済政策運営で重要な経済関係の閣僚人事も含めて順調とは言えない状況となっている。同氏は、財務長官や商務長官については比較的早いタイミングで指名したものの、大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長ポストは、大統領就任式直前の本稿執筆時点(1月19日)でも指名されていない(後掲図表6)。これをオバマ氏が当選した08年と比較すると、経済危機が進行していたという環境の違いはあるものの、オバマ氏が選挙後3週間で指名していたのとは大きな違いがある。
CEAは、大統領に対して経済関係のアドバイスを行うエコノミスト集団で、その委員長は当代一流のエコノミストが就任することが多い。実際、過去にはグリーンスパン氏、バーナンキ氏、イエレン氏など、後のFRB議長や、マンキュー氏、ステイグリッツ氏など著名なエコノミストが就任しており、如何に重要なポストか分かる。
トランプ氏が掲げる保護主義的な通商政策や、不法移民対策の強化などの政策については、主流派エコノミストから、経済に悪影響であるとの評価が一般的である。また、11月の選挙前には米エコノミスト370名がこれらの経済政策に対して、批判的な公開書簡を送っていることも、有望なエコノミストを指名するのを困難にしているだろう。
さらに、既に指名された閣僚候補も、政治家や担当分野の専門家が少ないことも気がかりだ。トランプ氏は、政治家でない(アウトサイダーである)ことを標榜して大統領になったこともあり、ある程度アウトサイダーで構成されるのは仕方ない。しかし、例えば、中小企業庁長官人事では、トランプ氏と親交があるプロレス団体WWEの元CEOであるリンダ・マクマホン氏が指名されたのをみると正直不安である。オバマ政権の前任者が、中小企業向け銀行プロメリカの創業者で、カリフォルニア州でビジネス・運輸・住宅局長官も歴任したマリア・コントレラス・スウィート氏であることと比較するとトランプ政権の人材不足を痛感せざるを得ない。
一方、トランプ氏は、1月11日に選挙後はじめてとなる記者会見を行ったが、多くの米国民や市場が期待する減税、インフラ投資、規制緩和などに関する具体的な政策の言及は無かった。これには同氏とロシアの関係や、ファミリービジネスの利益相反問題で質疑の時間が多くとられたとの理由はあるものの、CEA委員長をはじめ閣僚人事の停滞を考えると、選挙公約から実際の政策に落とし込んでいく作業が進んでいない可能性が懸念される。
このような状況もあり、株価や個人、企業センチメントが改善したのとは対照的に、支持率でみたトランプ政権への期待は高まっていない。12月にピューリサーチセンターが行った世論調査は、トランプ氏に対する支持率が41%に留まっているほか、同氏が指名した閣僚に対する支持率も40%となっており、歴代政権就任時に比べて低くなっている(後掲図表7、8)。
議会共和党との協調においては、トランプ氏が有権者からどのように評価されているかが重要である。議会共和党は支持率が高いうちは、トランプ氏に政策協力するとみられるものの、支持率の低迷が続けば、トランプ政権に対する政策協調が消極化する可能性があり、今後の動向が注目される。
さらに、既に指名された閣僚候補も、政治家や担当分野の専門家が少ないことも気がかりだ。トランプ氏は、政治家でない(アウトサイダーである)ことを標榜して大統領になったこともあり、ある程度アウトサイダーで構成されるのは仕方ない。しかし、例えば、中小企業庁長官人事では、トランプ氏と親交があるプロレス団体WWEの元CEOであるリンダ・マクマホン氏が指名されたのをみると正直不安である。オバマ政権の前任者が、中小企業向け銀行プロメリカの創業者で、カリフォルニア州でビジネス・運輸・住宅局長官も歴任したマリア・コントレラス・スウィート氏であることと比較するとトランプ政権の人材不足を痛感せざるを得ない。
一方、トランプ氏は、1月11日に選挙後はじめてとなる記者会見を行ったが、多くの米国民や市場が期待する減税、インフラ投資、規制緩和などに関する具体的な政策の言及は無かった。これには同氏とロシアの関係や、ファミリービジネスの利益相反問題で質疑の時間が多くとられたとの理由はあるものの、CEA委員長をはじめ閣僚人事の停滞を考えると、選挙公約から実際の政策に落とし込んでいく作業が進んでいない可能性が懸念される。
このような状況もあり、株価や個人、企業センチメントが改善したのとは対照的に、支持率でみたトランプ政権への期待は高まっていない。12月にピューリサーチセンターが行った世論調査は、トランプ氏に対する支持率が41%に留まっているほか、同氏が指名した閣僚に対する支持率も40%となっており、歴代政権就任時に比べて低くなっている(後掲図表7、8)。
議会共和党との協調においては、トランプ氏が有権者からどのように評価されているかが重要である。議会共和党は支持率が高いうちは、トランプ氏に政策協力するとみられるものの、支持率の低迷が続けば、トランプ政権に対する政策協調が消極化する可能性があり、今後の動向が注目される。
(2017年01月20日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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