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【アジア・新興国】なぜ韓国では民間医療保険の加入率が高いのか?-韓国における実損填補型保険の現状や韓国政府の対策-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
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3――実損填補型保険の改善案と期待効果
(1)各社の商品構造改善による自律的な市場規律の確立
1)包括的・画一的な保障の仕組みを多様な仕組みに変更(新しい商品を販売、2017年4月から)
・現在:2009年以降、疾病、傷害に対する治療行為を包括・画一的にカバーする標準化された単独商品を販売。
・改善案:過剰診療になる可能性が高い診療群(五つの診療行為)を特約に分離:消費者は「基本型」あるいは「基本型」+ 「特約」((1)徒手療法4、体外衝撃波治療、増殖治療、(2)公的医療保険が適用されない注射剤、(3)公的医療保険が適用されないMRI)という形で商品を選択することが可能。
2)加入者のモラルハザード・逆選択防止装置を用意(規定を改正、2017年3月から)
・現在:一部加入者の医療ショッピング等が発生。
・改善案:「基本型」の本人負担率や保険金の限度額等は従来の水準を維持。「特約」に加入し、過剰な医療サービス利用することを防止するために、特約項目に対する「医療ショッピング制御装置(保障回数や保険金の限度額を下向調整)」を導入。
3)医療サービスの利用量が少ない消費者に対してインセンティブを提供(細則を改正、2017年3月から)
・現在:実損填補型保険は、性別、年齢以外の危険要因を考慮せず、単一の料率を適用。
・改善案:直前2年間、保険金未請求者の保険料を10%以上引き下げる。
4)実損填補型保険を単独商品化(抱き合わせ販売5の禁止、2018年4月から施行)
・現在:保険会社の販売戦略の一環として、実損填補型保険を別の商品にセットして販売する抱き合わせ販売が横行(単独商品の割合は3.1%に過ぎない)
・改善案:実損填補型保険(基本型+特約(1)~(3))だけで構成された商品の販売を許可。消費者が他の保険、例えばがん保険や死亡保険等に加入しなくても、実損填補型保険商品に加入できるように許可(One-Stopサービスを提供)。
4 神経筋骨格系の問題に対応するための治療方法の1つで、クリニカルリーズニングを基本とした評価・治療(手技、運動)である。狭義には運動療法を含まない治療手技として解釈されるが、広義には機械や物理器具を用いずに徒手を用いる運動療法であれば徒手療法に含まれると解釈される。
5 ある商品やサービスを販売する際に、その購入者らに対し、不当に他の商品やサービスを一緒に購入等させる行為。
1)公的医療保険が適用されない診療等のコードや名称の段階的標準化・公開拡大(継続)
・現在:公的医療保険が適用されない診療等は、医療機関別に管理コード・名称・定義等がそれぞれ相違。→ 診療行為に対する料金が医療機関によって相違、価格に対する情報が不足 → 国民の知る権利や選択権が制限。
・改善案:社会的要求が大きい診療行為等からコードや名称等を段階的に標準化する計画 → 標準化された診療行為等に対する公開を持続的に拡大し、2017年4月1日まで病院以上の医療機関はすべて公開することを義務化。
2)診療費の明細内訳書に対する標準様式を用意・拡散(2017年下半期から)
・現在:医療機関別に診療費の明細内訳書が異なるため、診療サービスの適正性を確認することが難しい状況。
・改善案:診療費の明細内訳書を標準化し、消費者が分かりやすくする。2017年下半期からすべての医療機関に適用。
3)実損填補型保険の細部統計を直接管理(細則の改正、2016年12月から)
・現在:保険会社が実損填補型保険の保険金を支給する際に、保険金の総額だけシステムで管理しており。項目別の細部統計は集積されていないのが現状。
・改善案:個別保険会社が金融監督院に提出した業務報告書を通じて契約状況、支払保険金、損害率6等の細部統計を直接管理。
4)医療系中心の民間専門家で構成された中立的な諮問機構を設置・運営(2017年下半期から)
・現在:保険が適用されない医療行為に対する標準化された情報がなく、約款を解釈する際に審査担当者の主観的判断が入る可能性が高いのが現実。
・改善案:実損填補型保険の保険金支給が曖昧な件に対して医療的な諮問ができる中立的な諮問機構を設置・運営7
5)保険金の不正請求の点検・広報強化(2017年下半期から)
・現在:実損填補型保険等長期の損害医療保険と関連した保険金の不正請求が急増。→ 2015年における保険金の不正請求金額は2,429億ウォンと推計。
・改善案:保険金の不正請求に対する点検を持続的に実施、「保険金の不正請求は必ず処罰される」というメッセージを送る等の広報活動を強化、保険金の不正請求を防止するための国と保険会社の間の協力体制を強化。
6 保険金を保険料で除したもの。
7 保険協会の外部に独立的な機構として設立する方案や既存の他の委員会(例:損害保険医療審査委員会)を改編・拡大する方案などが検討されている。
(2017年01月17日「保険・年金フォーカス」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/04/15 | 韓国は少子化とどう闘うのか-自治体と企業の挑戦- | 金 明中 | 研究員の眼 |
2025/03/31 | 日本における在職老齢年金に関する考察-在職老齢年金制度の制度変化と今後のあり方- | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/28 | 韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- | 金 明中 | 研究員の眼 |
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