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2017年01月12日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(3)-EIOPAの報告書の概要報告-
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4―主要国の各措置適用状況(適用会社及びSCR比率への影響等)
2|SCR比率への影響
各措置によるSCR比率への影響を、主要国についてまとめると、次ページの図表の通りとなる。
各措置適用による影響は、それぞれの措置を適用している会社の影響を示しており、合計数値は少なくとも1つの措置を適用している会社の影響を示しているため、各措置の影響の和が合計の影響になっているわけではない。これによれば、
・ドイツにおけるTTPの影響が際立っている。
・英国やスペインは、MAとTTPによる恩恵を大きく受けている。
・これらの3カ国に比して、フランス、イタリア、オランダは相対的に措置適用による恩恵をあまり受けていない。
ただし、MAやVAのようないわゆる狭義のLTG措置と、TRFRやTTPのような移行措置とは、その意味合いが異なっており、これらを分けて、その影響を考えていく必要がある。
各措置によるSCR比率への影響を、主要国についてまとめると、次ページの図表の通りとなる。
各措置適用による影響は、それぞれの措置を適用している会社の影響を示しており、合計数値は少なくとも1つの措置を適用している会社の影響を示しているため、各措置の影響の和が合計の影響になっているわけではない。これによれば、
・ドイツにおけるTTPの影響が際立っている。
・英国やスペインは、MAとTTPによる恩恵を大きく受けている。
・これらの3カ国に比して、フランス、イタリア、オランダは相対的に措置適用による恩恵をあまり受けていない。
ただし、MAやVAのようないわゆる狭義のLTG措置と、TRFRやTTPのような移行措置とは、その意味合いが異なっており、これらを分けて、その影響を考えていく必要がある。
この図表によれば、主要国の間では、措置適用前では、イタリアが224%という高水準を維持している一方で、英国が51%とかなりの低水準となることが注目される。ただし、これが各国の保険会社のソルベンシー水準の真の差異を表しているとは限らないことには注意が必要である。
これらの措置の適用の有無以外に、各種リスク(ソブリンリスク等)の評価手法の問題等もあり、単純には比較できない。こうした点も考慮した上での、真のソルベンシー状況については、各国の保険市場や資産運用市場、さらには各社のリスク・プロファイル等の特性を踏まえた上で判断していく必要がある。
3|技術的準備金への影響
技術的準備金への影響については、以下の図表の通りとなる。
この図表で、各措置適用による影響は、それぞれの措置を適用している会社の影響を示している。さらに、合計数値は、ストレステストのサンプルベースの数値を示しているため、両者は直接的には関係していない。
ただし、この表によれば、技術的準備金への影響は、TTPが最も大きなものとなっている。
これらの措置の適用の有無以外に、各種リスク(ソブリンリスク等)の評価手法の問題等もあり、単純には比較できない。こうした点も考慮した上での、真のソルベンシー状況については、各国の保険市場や資産運用市場、さらには各社のリスク・プロファイル等の特性を踏まえた上で判断していく必要がある。
3|技術的準備金への影響
技術的準備金への影響については、以下の図表の通りとなる。
この図表で、各措置適用による影響は、それぞれの措置を適用している会社の影響を示している。さらに、合計数値は、ストレステストのサンプルベースの数値を示しているため、両者は直接的には関係していない。
ただし、この表によれば、技術的準備金への影響は、TTPが最も大きなものとなっている。
5―まとめ
以上、今回のレポートでは、EIOPAの報告書に基づいて、ソルベンシーIIにおける欧州保険会社のLTG措置や株式リスク措置の適用実態とその財政状態に与える影響について、主要国を中心とした各措置の適用状況やその影響をまとめるとともに、会社別の状況について報告した。
全体としてみた場合に、各種措置の適用による影響は、英国、ドイツ、スペインのように影響度が大きな国々と、フランス、イタリアのように比較的影響度が小さな国々に分かれている。その影響度の内訳も、狭義のLTG措置によるものと移行措置によるものとで、状況が異なっている。
改めて、表面的なSCR比率のみを比較することが必ずしも適切でなく、どの措置(狭義のLTG措置や移行措置)を適用しているのか、その他のSCR比率を算出するための各種リスク評価の考え方がどのようになっているのか等を考慮した上で、数値を判断していくことが重要であると認識させられる結果となっている。
次回の4回目のレポートでは、「LTG措置や株式リスク措置が会社の財政状態以外に与える影響」や「措置を使用するための承認プロセス」について報告する。
全体としてみた場合に、各種措置の適用による影響は、英国、ドイツ、スペインのように影響度が大きな国々と、フランス、イタリアのように比較的影響度が小さな国々に分かれている。その影響度の内訳も、狭義のLTG措置によるものと移行措置によるものとで、状況が異なっている。
改めて、表面的なSCR比率のみを比較することが必ずしも適切でなく、どの措置(狭義のLTG措置や移行措置)を適用しているのか、その他のSCR比率を算出するための各種リスク評価の考え方がどのようになっているのか等を考慮した上で、数値を判断していくことが重要であると認識させられる結果となっている。
次回の4回目のレポートでは、「LTG措置や株式リスク措置が会社の財政状態以外に与える影響」や「措置を使用するための承認プロセス」について報告する。
(2017年01月12日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
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