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- 2017年原油相場の注目点と見通し~金融市場の動き(1月号)
2017年01月06日
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1.トピック:2017年原油相場の注目点と見通し
昨年春以降、40ドル台前半~後半で推移していたWTI原油価格は、11月30日のOPEC総会での減産合意を受けて50ドル台に上昇、12月10日のOPEC非加盟国による減産合意もあって、以降も50ドル台前半をキープしている。昨年は金融市場を大きく揺るがした原油相場だが、今年の展開はどうなるのか?注目材料を点検する。
(供給サイド:合意遵守状況と除外国の動向)
(供給サイド:合意遵守状況と除外国の動向)

1月分のOPEC生産量が記載される2月のOPEC月報公表日は2月13日だが、それ以前の段階でも報道等で各国の生産状況が断片的に伝えられるだろう。また、1月21日~22日には産油国による減産監視委員会が開催される予定となっており、遵守状況に関する情報が出てくる可能性が高い。
このように、今後は減産効果が期待される状況にあるが、OPEC減産から除外された国の動きには要注意だ。具体的にはリビアとナイジェリアである。両国ともに紛争や武装勢力による石油施設攻撃によって原油生産量が減少し、現在は生産再開に向けた取組みを進めている段階にある。この2カ国が生産を回復させるインパクトはかなり大きい。両国は11月にかけて増産を進めてきたが、リビアが正常な状況であった2010年を基準にすると、リビアの生産量は日量98万バレル、ナイジェリアは37万バレルも低い水準に留まっている。もちろん短期でこの水準に回復するものではないが、今後の増産余地は大きい。実際、ナイジェリアの12月の生産は再び落ち込んだ模様だが、リビアは直近で日量70万バレル(11月は58万バレル)まで急ピッチで増産しているとの報道があり、動向が注目される。
また、そもそも減産合意の枠組みから外れている米シェールオイルの動向も重要になる。原油価格の持ち直しを受けて、米国のリグ稼働数は昨年5月末に底入れし、以降は増加傾向が続いている。直近の稼働数は5月末時点から7割弱高い水準にある。従来、米国のリグ稼働数と原油生産量には半年前後のタイムラグがあるため生産量の回復は遅れたが、10月からは生産量も増加しつつある。リグ稼働数は今後も増加が予想され、米国の生産量も増加していく可能性が高い。
これらの国々の生産量が増加すれば、減産合意国による減産効果はその分相殺されることになる。減産合意国の実際の減産規模とリビア、ナイジェリア、米国の増産規模のバランスが重要になる。
また、米シェールに関しては、トランプ新政権によるエネルギー・環境規制緩和が増産に繋がる可能性がある。年内の生産量への影響は考えにくいが、将来の増産観測が油価の抑制に働くことは有り得る。
これらの国々の生産量が増加すれば、減産合意国による減産効果はその分相殺されることになる。減産合意国の実際の減産規模とリビア、ナイジェリア、米国の増産規模のバランスが重要になる。
また、米シェールに関しては、トランプ新政権によるエネルギー・環境規制緩和が増産に繋がる可能性がある。年内の生産量への影響は考えにくいが、将来の増産観測が油価の抑制に働くことは有り得る。
(需要サイド:中国・インド経済の動向)
一方、原油の需要サイドの注目はやはり世界経済の動向ということになるが、とりわけ、インドと中国経済の動向が重要になる。なぜなら、両国は世界の原油需要の牽引役であるからだ。OPECによれば、2016年の世界原油需要は前年から日量124万バレル増加する見込みだが、このうち両国の増加分が56万バレルと半分弱を占める。
ただし、両国ともに景気の減速懸念が高まっている。インドは11月に突如高額紙幣を廃止した影響で経済活動が混乱。11月以降、同国の企業景況感は急落、株価も軟調になっており、自動車販売も失速するなど、景気の下振れは避けられない情勢にある。
中国経済は政府のインフラ投資や自動車減税など政策の下支えによって下げ止まり感が出ていたが、住宅バブル抑制措置や自動車減税規模の縮小によって、今後は減速に向かう恐れがある。
供給サイドの材料ほどのインパクトはないものの、需給バランスに直結するだけに留意が必要になる。
一方、原油の需要サイドの注目はやはり世界経済の動向ということになるが、とりわけ、インドと中国経済の動向が重要になる。なぜなら、両国は世界の原油需要の牽引役であるからだ。OPECによれば、2016年の世界原油需要は前年から日量124万バレル増加する見込みだが、このうち両国の増加分が56万バレルと半分弱を占める。
ただし、両国ともに景気の減速懸念が高まっている。インドは11月に突如高額紙幣を廃止した影響で経済活動が混乱。11月以降、同国の企業景況感は急落、株価も軟調になっており、自動車販売も失速するなど、景気の下振れは避けられない情勢にある。
中国経済は政府のインフラ投資や自動車減税など政策の下支えによって下げ止まり感が出ていたが、住宅バブル抑制措置や自動車減税規模の縮小によって、今後は減速に向かう恐れがある。
供給サイドの材料ほどのインパクトはないものの、需給バランスに直結するだけに留意が必要になる。
(金融市場の動向:ドルの変動とリスクオフ)
原油需給以外の注目材料としては、ドルの変動が挙げられる。ドルの複数通貨に対する強弱を表すドルインデックスと原油価格の関係は、通常逆相関になることが多い。国際原油価格はドル建てのため、ドルが高く(低く)なると、ドルを自国通貨としない国にとって割高感(割安感)が強まり、売られやすく(買われやすく)なるためだ。昨年11月半ば以降は、ドル高にもかかわらず原油高が進んだが、これは減産合意という強力な原油価格押し上げ材料が働いたためだ。今年のドル円はトランプ政権次第の面が強いが、その変動は原油価格に影響を与えるだろう。
また、リスクオフ(回避)にも注意が必要だ。従来、市場で警戒感が強まり(米VIX指数は上昇)、リスクオフ地合いになると株などとともに原油も売られやすくなる。原油はリスク資産であるためだ。
今年は、トランプ政権の発足、欧州での重要な国政選挙、Brexit、新興国からの資金流出懸念(人民元安も含む)など、展開次第で市場のリスクオフに繋がるイベントが盛りだくさんなため、原油相場も影響を受けそうだ。
原油需給以外の注目材料としては、ドルの変動が挙げられる。ドルの複数通貨に対する強弱を表すドルインデックスと原油価格の関係は、通常逆相関になることが多い。国際原油価格はドル建てのため、ドルが高く(低く)なると、ドルを自国通貨としない国にとって割高感(割安感)が強まり、売られやすく(買われやすく)なるためだ。昨年11月半ば以降は、ドル高にもかかわらず原油高が進んだが、これは減産合意という強力な原油価格押し上げ材料が働いたためだ。今年のドル円はトランプ政権次第の面が強いが、その変動は原油価格に影響を与えるだろう。
また、リスクオフ(回避)にも注意が必要だ。従来、市場で警戒感が強まり(米VIX指数は上昇)、リスクオフ地合いになると株などとともに原油も売られやすくなる。原油はリスク資産であるためだ。
今年は、トランプ政権の発足、欧州での重要な国政選挙、Brexit、新興国からの資金流出懸念(人民元安も含む)など、展開次第で市場のリスクオフに繋がるイベントが盛りだくさんなため、原油相場も影響を受けそうだ。
(2017年01月06日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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