2016年12月22日

一億総活躍社会の「働き方」-「生産性向上」、「長寿化社会」、「共働き社会」の実現に向けて

  土堤内 昭雄

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3―共働き社会への対応

1|仕事と子育ての両立

労働力人口が減少するなかで女性の就労促進は不可欠だ。近年では女性の労働参加率が高い国ほど出生率も高いという傾向がみられるが、わが国では実際に子育てしている女性が、安心して仕事ができる保育所などの就労環境は十分には整っていない。仕事と子育ての両立が難しい状況下では、出産を機に離職する女性も多く、出産による機会損失を恐れて結婚自体を躊躇する人もいる。

出生数を増やすためのひとつの有効な方策は、新たな「共働き社会」を構築することだ。日本の高度経済成長期の「働く夫+専業主婦」という男性片働きモデルの時代は終焉した。世帯収入の多寡に関わらず、妻が就労することで夫の家計負担を、夫が主体的に家事を担うことで妻の家事負担を軽減する「夫と妻」双方の仕事と子育てが両立する「共働き社会」である。

日本において女性就労の促進が出生率を高め、少子化の歯止めになるためには、男女が共に仕事と子育てを両立できる環境整備および男性の働き方改革と家事・育児などのケア労働に対する意識改革が重要だ。今日の少子化を解消するためには、男女の意識改革と協働による新たな「共働き社会」をつくり、仕事と子育てを共に担う「男性と女性の活躍推進」が不可欠だろう。
2|配偶者控除の見直し
図表5 共働き世帯数等の推移 配偶者控除ができた1961年当時は、大多数が専業主婦世帯だった。その背景には工業化に伴う雇用労働の増加と職住分離があり、家事・育児などの無償労働を主に女性が担う性別分業による近代家族の主流化があった。1990年代後半から共働き世帯数は専業主婦世帯数を上回り、2015年には専業主婦世帯の1.6倍に当たる1,114万世帯になった。近年では、女性の高学歴化や産業のサービス化、ICTの発達による多様な働き方の拡大が女性の社会参加を促し、「共働き世帯」化というライフスタイルが拡がった。

最近、税制改革の論議で俎上によくあがるのが「配偶者控除」の見直しだ。政府は本格的な人口減少時代の労働力を確保するために女性の活躍を推進し、その就労を後押ししている。しかし、パートやアルバイトなどで働く女性が、配偶者控除の「103万円の壁」という年収要件があるために、就労時間を自己抑制しているケースが多くあることから、見直しが検討されているのだ。

2017年度税制改正に向けては、配偶者控除の全面廃止、共働き世帯にも適用する「夫婦控除」の新設、パート主婦世帯の減税枠の拡大が検討された。その結果、政府与党の税制改正大綱では、パート主婦の年収要件を150万円に引き上げ、減税分の税収をカバーするために夫の年収が1,220万円を超えると適用外にすることが決まったが、高所得者層からの反発も予想される。

今回の配偶者控除の見直しは、女性のフルタイム就労者の増加を図るものではなく、減税枠の拡大は家計補助的な女性就労促進が目的と考えられる。本来の一億総活躍社会が目指す「女性の活躍」には、男女が経済的に対等な関係の女性就労を促進し、「働き方」に中立的な個人単位課税が望ましい。

一方、世帯単位でみると、同一収入レベルの者同士の同類婚が増え、世帯間格差が拡大している。その是正には世帯収入の合計に対する世帯単位課税が有効だ。結婚を促し出生数の増加を図るには、フランスのような世帯人員で分割する世帯単位課税が有効だろう。所得税の改正は税体系全体との整合が難しいが、配偶者控除の見直しが対症療法を重ねた弥縫策であってはならない。社会経済環境の変化に応じた抜本的な税制改革ビジョンと軌を一にした税制改正を期待したい。「税制」は国民が共有する価値観を表し、国が目指す社会の姿を写す鏡でもあるからだ。
3共働き社会に向けた「働き方」

2015年の雇用者は5,284万人、そのうち非正規雇用者は1,980万人と全体の37.5%を占めており、年々上昇している。年代別では、55~64歳が412万人(20.8%)と最も多いが、増加傾向が著しいのは65歳以上の高齢者だ。長寿化社会では、多様な働き方はますます重要になり、非正規雇用が高齢期の働き方の大きな選択肢のひとつになっている。

一方、非正規雇用者のなかで「不本意非正規(正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者)」の割合は16.9%で、年代別では25~34歳の子育て世代が26.5%と最も多くなっている。お金のかかる子育て期に安定した正規雇用を望むものの、子育てをしながらフルタイムで働くことが難しい「共働き世帯」が多いことの証左だろう。

2015年の非正規雇用者は、女性全体では55.6%、有配偶女性に限ると62.9%に上る。共働き世帯の増加は、妻がフルタイムで働く共働き世帯が増えているのではなく、パート雇用など短時間勤務の就業者が増えたことによるものだろう。つまり多くの妻が非正規雇用で、主たる稼ぎ手である夫の家計補助的な位置づけにあるのだが、妻の収入の比重が相対的に大きくなっているのだ。

夫婦が共働きになると、従来の家事・育児・介護などの家庭における無償労働をどのように負担するのか大きな課題になる。外部サービスの利用には相応のコストがかかり、それに見合う収入が必要だ。また、育児や介護といったケア労働は、労働集約的で非効率な面もあり、膨大な需要を満たすだけのサービスをすべて供給することは難しく、完全に外部化することはできないだろう。

今後、AI(人工知能)などの活用により大幅に労働生産性が向上すれば、男女が有償労働の時間に替えて、より多くの無償労働の時間を共有することが可能になるだろう。一億総活躍社会では、多くの人が有償労働において活躍すると共に、ケア労働などの無償労働においても一定の役割を担うことが必要だ。男と女が、それぞれの「有償労働」と「無償労働」が調和する“ワークライフハーモニー”のなかに幸せを見出すことができるような一億総活躍社会の実現を期待したい。
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土堤内 昭雄

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