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資産の世代間移転の状況-現役世代への資産移転は進んでいるか
生活研究部 井上 智紀
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総務省統計局の「全国消費実態調査」および同「国勢調査」を用いて2010年と2015年の家計の総資産および金融資産の世帯主年齢階層別の構成比を比較すると、いずれも70代以上の構成比が3~4ポイント上昇している(図表 2)。図表は省略するが、実際の金額についてみても総資産では60代以上で、金融資産では50代と70代以上で、それぞれ増加し、その他の世代では減少していることから、今のところ高齢世帯に家計資産が集中する傾向には変化がなく、むしろさらに集中が進んでいることがわかる。
贈与税の非課税制度や、相続時精算課税制度など、現役世代への資産移転を促す政策は税制面においても様々実施されているが、今のところ目に見える成果にはつながっていないようである。制度の周知や、利用の拡大には時間を要するであろうことを考慮すれば、これらの政策の成否を語るには時期尚早ではあるが、仮に資産移転が進んだとしても、現役世代が譲り受けた資産を上手く活用できなければ、家計消費の拡大や、現役世代における資産形成の促進といった期待に対し、その効果は限定的なものに留まることになるだろう。
1 一般に、世代間における資産の移転は相続によりなされることが多いものの、厚生労働省「人口動態統計」によれば、2010年以降、年間の死亡者数は80歳以上が過半を占めていることから、相続による資産移転の多くは高齢世代間で行われているものと思われる。
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(2016年12月15日「研究員の眼」)
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