2016年12月12日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(12月号)~3ヵ月ぶりのマイナスも回復基調は継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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16年10月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比1.7%減と、前月の同3.5%増から低下した(図表1)。輸出は資源価格の底打ちによって年明けから緩やかな回復の動きが続いてきたが、10月はレバラン(断食明け大祭)に伴う営業日数の減少によって下振れた7月に続いて下振れし、3ヵ月ぶりのマイナスとなった。もっとも10月の輸出は小幅の下落に止まり、増加傾向に変化はないものと見られる。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN6ヵ国輸出の伸び率(3ヵ月移動平均)
タイの16年10月の輸出額は前年同月比4.2%減(前月:同3.4%増)と低下した(図表3)。10月の輸出はマイナスに転じたものの、年明けからの上下に振れながらも緩やかな増加傾向は続いている。

品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同2.7%減(前月:同4.2%増)と3ヶ月ぶりのマイナスとなった。機械・装置(同6.2%増)こそプラスを維持したものの、電子製品・部品(同5.7%減)、家電製品(同2.5%減)、自動車・部品(同2.1%減)など幅広い品目が減少したことが全体を押下げた。また鉱業・燃料は同22.1%減(前月:同13.5%減)と、引き続き石油製品を中心に前年割れとなった。さらに、農産品・加工品は同6.5%減(前月:同3.2%増)と、果物(同76.3%増)こそ大幅に増加したものの、コメ(同24.4%減)、ゴム(同5.1%減)、タピオカ(同26.8%減)を中心に2ヵ月ぶりのマイナスとなった。

輸入額は前年同月比6.5%増と、前月の同5.6%増から上昇した。結果、貿易収支は2.5億ドルの黒字(前月から23.0億ドル減少)と、18ヵ月連続の黒字となった(図表4)。
(図表3)タイ輸出の伸び率(品目別)/(図表4)タイの貿易収支
マレーシアの16年10月の輸出額は前年同月比6.8%減(前月:同1.7%増)と低下した(図表5)。輸出の伸び率は原油・天然ガスを中心にマイナスに転じたものの、これは前年同期の輸出額が大きかったことによる影響があるため、年明けからの底打ちの動きは続いているものと見られる。

品目別に見ると、鉱物性燃料は同21.5%減(前月:同5.2%減)と、原油・天然ガスを中心にマイナス幅が拡大した。また製造品も同28.3%減(前月:同12.3%減)と、ゴム手袋を中心にマイナス幅が拡大した。一方、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同0.4%増(前月:同4.0%増)と電気・電子製品が伸び悩んだものの、小幅のプラスを確保した。また動植物性油脂も同5.7%増(前月:同8.4%増)と、パーム油・同製品を中心に底堅い伸びとなった。

輸入額は前年同月比4.8%減と、前月の同4.9%増から低下した。結果、貿易収支は23.4億ドルの黒字と、前月から5.0億ドル黒字が拡大した(図表6)。
(図表5)マレーシア輸出の伸び率(品目別)/(図表6)マレーシア貿易収支
インドネシアの16年10月の輸出額は前年同月比4.6%増(前月:同2.3%減)と2ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表7)。7月こそレバラン(断食明け大祭)に伴って営業日数が少なかったことから下振れたが、コモディティ価格の上昇を受けて底打ちの動きが続いている。

品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同25.2%減(前月:同27.0%減)と引き続き全体の重石となる一方、製造品が同5.8%増(前月:同3.3%増)と機械類を中心に拡大傾向が続いている。また鉱業製品が同29.8%増(前月:同7.0%増)と一段と上昇して2013年12月以来の二桁増を記録した。農産品も同15.9%増(前月:同3.5%増減)と約1年ぶりの二桁増となった。 輸入額は前年同月比3.3%増と、前月の同2.3%減から上昇した。結果、貿易収支は12.1億ドルの黒字と、前月から0.6億ドル黒字が縮小した(図表8)。
(図表7)インドネシア輸出の伸び率(品目別)/(図表8)インドネシアの貿易収支
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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