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- 欧州経済見通し-17年は政治の年。緩やかな拡大続くが投資の加速は期待できず-
2016年12月09日
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金融政策:ECBは量的緩和を17年12月まで継続
ECBは、12月の政策理事会で、政策金利を16年3月以来の主要レポ金利ゼロ、中銀預金金利マイナス0.4%の水準での据え置き、国債等を買い入れる量的緩和を17年12月まで延長することを決めた。
17年3月までは、今年3月に引き上げた現在の月800億ユーロのペースの買入れを継続(図表8)、同年4月以降は、15年3月のプログラム開始時の600億ユーロに戻す。
超金融緩和策の長期化は、金融機関の収益を圧迫する副作用があり、リスクは時間の経過とともに拡大する。とは言え、現在のユーロ圏は、失業率の水準が示すとおり、なおかなりの余剰を残している。17年12月に量的緩和の期限が到来した後も、テーパリングのプロセスを経るなど、金融緩和の出口戦略は慎重に進めざるを得ない。今回の予測期間である18年末までに追加利下げも回避するが、利上げに着手することもないと見ている。
17年3月までは、今年3月に引き上げた現在の月800億ユーロのペースの買入れを継続(図表8)、同年4月以降は、15年3月のプログラム開始時の600億ユーロに戻す。
超金融緩和策の長期化は、金融機関の収益を圧迫する副作用があり、リスクは時間の経過とともに拡大する。とは言え、現在のユーロ圏は、失業率の水準が示すとおり、なおかなりの余剰を残している。17年12月に量的緩和の期限が到来した後も、テーパリングのプロセスを経るなど、金融緩和の出口戦略は慎重に進めざるを得ない。今回の予測期間である18年末までに追加利下げも回避するが、利上げに着手することもないと見ている。
政治の年に期待されるECBのバッファーとしての役割
ユーロ参加国の世論調査では中道左派・中道右派など主流派の政党への支持の低下と極右・ポピュリスト政党への支持の拡大という傾向がはっきりと表れている。景気・雇用の回復の遅れ、財政緊縮策や構造改革への不満、さらに難民危機やテロの脅威がある。
欧州の政治リスクと経済、金融システムの関係は、制度面での説明などが欠かせないため、別項で改めて論じるが、今回の見通しでは17年の各国選挙で、極右・ポピュリスト政党が躍進することはあっても、極右の大統領誕生、極右・ポピュリスト政権の単独政権の誕生はないことを前提としている。また、政治リスクが金融システムを通じてユーロ圏全域へと拡大するような展開、ましてユーロ離脱、EU離脱へと動くこともないと見ている。市場に一時的な動揺をもたらすことはあったとしても、ユーロ圏の景気や世界の市場に持続的な影響を及ぼす事態に発展するリスクは、ごく限定的というのが基本認識だ。
しかし、英国の国民投票、米国の大統領選挙における国民の選択が専門家の予測を覆す結果となったことから、予想外の結果となる可能性を排除することはできない。
12月4日のイタリアの国民投票はレンツィ首相への不信認に意味合いを持つ反対多数という結果にも終ったが、市場はおおむね平静を保った。否決が広く予想されていたことに加えて、否決イコールポピュリスト政権の誕生でもないということもあろうが、ECBが量的緩和、さらにターゲット型資金供給(TLTRO)という形で分厚いバッファーを提供している安心感も大きい。
ECBの金融政策には、引き続きショックを吸収するバッファーとしての役割が期待される。
欧州の政治リスクと経済、金融システムの関係は、制度面での説明などが欠かせないため、別項で改めて論じるが、今回の見通しでは17年の各国選挙で、極右・ポピュリスト政党が躍進することはあっても、極右の大統領誕生、極右・ポピュリスト政権の単独政権の誕生はないことを前提としている。また、政治リスクが金融システムを通じてユーロ圏全域へと拡大するような展開、ましてユーロ離脱、EU離脱へと動くこともないと見ている。市場に一時的な動揺をもたらすことはあったとしても、ユーロ圏の景気や世界の市場に持続的な影響を及ぼす事態に発展するリスクは、ごく限定的というのが基本認識だ。
しかし、英国の国民投票、米国の大統領選挙における国民の選択が専門家の予測を覆す結果となったことから、予想外の結果となる可能性を排除することはできない。
12月4日のイタリアの国民投票はレンツィ首相への不信認に意味合いを持つ反対多数という結果にも終ったが、市場はおおむね平静を保った。否決が広く予想されていたことに加えて、否決イコールポピュリスト政権の誕生でもないということもあろうが、ECBが量的緩和、さらにターゲット型資金供給(TLTRO)という形で分厚いバッファーを提供している安心感も大きい。
ECBの金融政策には、引き続きショックを吸収するバッファーとしての役割が期待される。
英国経済:17年はポンド安と離脱選択の副作用で1%台に減速
(2016年12月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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