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- 右側通行?左側通行?(1)-「車は左、人は右」と言われている歩行者の通行ルールは本当はどうなっているのか-
コラム
2016年11月14日
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何故、歩行者は右側通行なのか-GHQの指導で変更された
それが、自動車の交通量の増加に伴い、第2次世界大戦後の昭和24年に、占領軍GHQの指導で、当時の道路交通取締法の改正が行われ、対面交通の考え方に基づいて、「歩行者は右側通行」に変更された。
当時から既に、米国は「自動車は右側通行」、「歩行者は左側通行」の国であったので、GHQは「自動車を右側通行」に変更するように要求したが、日本が「道路上の施設の変更や車両(バス等)の乗降口の変更等に天文学的な財政支出を必要とし、また長期の期間を有する」との理由で反対したため、結局は、安全上の観点を考慮して、「対面交通」の考え方の導入を優先するために、「歩行者を右側通行」に変更することで了解した、とのことのようである2。
これだけ、米国との関係が深い日本において、なぜ「自動車の通行ル-ル」が異なっているのか、不思議に思われていた方も多いと思うが、これで一定納得できたと思われる。なお、何故、米国で「自動車が右側通行」なのかについては、次回の「研究員の眼」で説明することにする。
(参考1)鉄道駅構内では、「人は左側通行」が原則
さて、「歩行者は右側通行」がル-ルとなったと述べたが、実は、鉄道駅構内では、「歩行者は左側通行」が原則となっている3。これは、GHQの指導が、車道だけに限られていたため、車の走らない駅構内には指導が徹底せず、「歩行者は左側通行」の例外が認められた、と言われている。
実際に、現在の駅構内の階段等に「左側通行」の指示板を見ることができる。
(参考2)エスカレーターの立ち位置は、自動車の通行ルールに準拠が原則
現在の「エスカレーターの乗り方」における基本的なルールは「エスカレーターでは歩かない」ということであり、歩行禁止が呼びかけられている。ただし、実際は多くの人が歩いている。
このエスカレーターの乗り方の慣例が、東京と大阪で異なっているというのは有名な話である。東京では「左立ちで、右側を通行のために空ける」のに対して、大阪では「右立ちで、左側を通行のために空ける」ということになっている。
エスカレーターの立ち位置については、世界的にみて、一般的には自動車の通行ルールに準拠している。即ち、右側通行の国は右立ちで左側が通行(追い越し)用に空けられ、左側通行の国は左立ちで右側が通行(追い越し)用に空けられる。こうした観点からは、「自動車は左側通行」の日本では、大阪のルールが原則を外れた(?)ものということになる。
大阪で東京とは異なるルールが定着した理由について、一般的には、以下のように説明されている。
1967年に阪急梅田駅でエスカレーターが設置されたとき、(右利きのため)右手で手すりを持つ人が多かったため、混乱を避けるために右側に立つというルールをアナウンスした結果、それが定着した。その後、1970年に開催された「大阪万博」を機に、多くの外国人が大阪に訪れるのに備えて、「国際標準の右立ち」4を徹底したと言われている。ただし、右立ちのルールは、大阪以外では、兵庫や京都の一部に限定されているようだ。
2 道路交通問題研究会「道路交通政策史概観」
3 歩行者や自動車の通行ルールとは異なり、全てが統一されているわけではないので、右側通行となっているケースもある。
4 米国や英国、ドイツ、フランス等の欧米主要国が右立ち、オーストラリア、ニュージーランドが左立ちとなっている。
当時から既に、米国は「自動車は右側通行」、「歩行者は左側通行」の国であったので、GHQは「自動車を右側通行」に変更するように要求したが、日本が「道路上の施設の変更や車両(バス等)の乗降口の変更等に天文学的な財政支出を必要とし、また長期の期間を有する」との理由で反対したため、結局は、安全上の観点を考慮して、「対面交通」の考え方の導入を優先するために、「歩行者を右側通行」に変更することで了解した、とのことのようである2。
これだけ、米国との関係が深い日本において、なぜ「自動車の通行ル-ル」が異なっているのか、不思議に思われていた方も多いと思うが、これで一定納得できたと思われる。なお、何故、米国で「自動車が右側通行」なのかについては、次回の「研究員の眼」で説明することにする。
(参考1)鉄道駅構内では、「人は左側通行」が原則
さて、「歩行者は右側通行」がル-ルとなったと述べたが、実は、鉄道駅構内では、「歩行者は左側通行」が原則となっている3。これは、GHQの指導が、車道だけに限られていたため、車の走らない駅構内には指導が徹底せず、「歩行者は左側通行」の例外が認められた、と言われている。
実際に、現在の駅構内の階段等に「左側通行」の指示板を見ることができる。
(参考2)エスカレーターの立ち位置は、自動車の通行ルールに準拠が原則
現在の「エスカレーターの乗り方」における基本的なルールは「エスカレーターでは歩かない」ということであり、歩行禁止が呼びかけられている。ただし、実際は多くの人が歩いている。
このエスカレーターの乗り方の慣例が、東京と大阪で異なっているというのは有名な話である。東京では「左立ちで、右側を通行のために空ける」のに対して、大阪では「右立ちで、左側を通行のために空ける」ということになっている。
エスカレーターの立ち位置については、世界的にみて、一般的には自動車の通行ルールに準拠している。即ち、右側通行の国は右立ちで左側が通行(追い越し)用に空けられ、左側通行の国は左立ちで右側が通行(追い越し)用に空けられる。こうした観点からは、「自動車は左側通行」の日本では、大阪のルールが原則を外れた(?)ものということになる。
大阪で東京とは異なるルールが定着した理由について、一般的には、以下のように説明されている。
1967年に阪急梅田駅でエスカレーターが設置されたとき、(右利きのため)右手で手すりを持つ人が多かったため、混乱を避けるために右側に立つというルールをアナウンスした結果、それが定着した。その後、1970年に開催された「大阪万博」を機に、多くの外国人が大阪に訪れるのに備えて、「国際標準の右立ち」4を徹底したと言われている。ただし、右立ちのルールは、大阪以外では、兵庫や京都の一部に限定されているようだ。
2 道路交通問題研究会「道路交通政策史概観」
3 歩行者や自動車の通行ルールとは異なり、全てが統一されているわけではないので、右側通行となっているケースもある。
4 米国や英国、ドイツ、フランス等の欧米主要国が右立ち、オーストラリア、ニュージーランドが左立ちとなっている。
歩行者は右側通行か左側通行か
以上、日本における歩行者の通行ルールについて述べてきた。
私自身は、何となく、常に「歩行者は右側通行」という潜在意識が強くある。ところが、実は、安全性の確保等の観点からの「車との対面交通」との考え方がよりベースにあるだけで、実態は「歩行者は左側通行」といった方がマッチしている状況が多い。即ち、「車は左、人は右」といった形で、自動車との対比で考えた場合には、あくまでも「歩行者は右側通行」となるのだが、それとは全く独立に、歩行者自身を一つの交通車両(?)と考えた場合には、「歩行者は左側通行」というのが自然な言い方といえることになるものと感じられるが、いかがだろうか。
私自身は、何となく、常に「歩行者は右側通行」という潜在意識が強くある。ところが、実は、安全性の確保等の観点からの「車との対面交通」との考え方がよりベースにあるだけで、実態は「歩行者は左側通行」といった方がマッチしている状況が多い。即ち、「車は左、人は右」といった形で、自動車との対比で考えた場合には、あくまでも「歩行者は右側通行」となるのだが、それとは全く独立に、歩行者自身を一つの交通車両(?)と考えた場合には、「歩行者は左側通行」というのが自然な言い方といえることになるものと感じられるが、いかがだろうか。
まとめ
世の中には数多くのルールが存在している。我々はそれらを何気なく当然のものとして受け入れている。しかし、よくよく考えてみると、何故そのようなルールになっているのか、その歴史的・文化的背景等はどうなっているのか、を知ることで、そのルールの持つ本当の意味や奥深さを知らされることになる。たまには、一般に認識されているルールについて、その詳細を調べてみることも結構大事なことだと改めて感じた次第である。
(2016年11月14日「研究員の眼」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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