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2016年11月11日
3|相続税改正に伴う節税需要の喚起
貸家については、消費増税実施後も実績値が推計値を大きく上回る状況が続いている要因として、2013年度税制改正による相続税増税(2015年1月実施)が指摘できる。主な改正の内容は、(1)相続税の基礎控除の引き下げ、(2)税率構造の見直し、である(図表10)。(1)については、相続財産から差し引く基礎控除の引き下げによって、課税対象額が増加することになる。これまで被相続人からの相続財産の合計額から控除する金額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」とされていたが、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人数」に引き下げられた。非課税限度額の引き下げにより改正後は課税対象となるケースが増えるほか、基礎控除に引き下げで法定相続分に応ずる取得金額が増えるため、被相続人の税負担は大きくなる。(2)については、「2億円~3億円」、「6億円超」に適用される税率が引き上げられ、相対的に多額の遺産を相続する場合の税負担が従来に比べて重くなった。こうした相続税改正によって相続税の課税額が増額したため、富裕層を中心に節税需要が高まったものと考えられる。
貸家については、消費増税実施後も実績値が推計値を大きく上回る状況が続いている要因として、2013年度税制改正による相続税増税(2015年1月実施)が指摘できる。主な改正の内容は、(1)相続税の基礎控除の引き下げ、(2)税率構造の見直し、である(図表10)。(1)については、相続財産から差し引く基礎控除の引き下げによって、課税対象額が増加することになる。これまで被相続人からの相続財産の合計額から控除する金額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」とされていたが、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人数」に引き下げられた。非課税限度額の引き下げにより改正後は課税対象となるケースが増えるほか、基礎控除に引き下げで法定相続分に応ずる取得金額が増えるため、被相続人の税負担は大きくなる。(2)については、「2億円~3億円」、「6億円超」に適用される税率が引き上げられ、相対的に多額の遺産を相続する場合の税負担が従来に比べて重くなった。こうした相続税改正によって相続税の課税額が増額したため、富裕層を中心に節税需要が高まったものと考えられる。
相続税は相続する財産が金融資産か不動産かによって評価方法が異なり、相続税額に差が生じる。例として、2億円の財産をもつ被相続人が法定相続人1人に相続する際、相続財産がそれぞれ金融資産、不動産である場合について相続税額を概算してみた。
まず、金融資産で相続する場合、課税対象となる相続財産の評価額は2億円となる。改正前では、相続財産の評価額から基礎控除(5,000万円+1,000万円×1人)を除いた1億4,000万円に、相続税が課せられ、税額は3,900万円(1億4,000万円×40%-1,700万円)となる。改正後は基礎控除が引き下げられるため(3,000万円+600万円×1人)、基礎控除後の1億6,400万円に相続税が課されることで、税額は4,860万円(1億6,400万円×40%-1,700万円)と960万円の増税となる。
まず、金融資産で相続する場合、課税対象となる相続財産の評価額は2億円となる。改正前では、相続財産の評価額から基礎控除(5,000万円+1,000万円×1人)を除いた1億4,000万円に、相続税が課せられ、税額は3,900万円(1億4,000万円×40%-1,700万円)となる。改正後は基礎控除が引き下げられるため(3,000万円+600万円×1人)、基礎控除後の1億6,400万円に相続税が課されることで、税額は4,860万円(1億6,400万円×40%-1,700万円)と960万円の増税となる。


このように、金融資産を貸家に代えて相続する場合の節税額は、改正前で▲3,764万円(金融資産:3,900万円→土地・貸家(特例適用):136万円)であるが、改正後は約▲4,332万円(金融資産:4,860万円→土地・貸家(特例適用):528万円)と大きくなる。こうした税負担の軽減効果が相続税の節税を目的とした貸家需要の喚起につながっているものと考えられる。因みに、金融資産を持家に代えて相続しても、図表12のとおり節税効果はあるものの、貸家相続時に比べると借地権分、借家権分の評価減が適用されないため、節税効果は小さい。
上記の例では相続財産額を2億円としたが、相続税の改正によって相続財産額が2億円を超えると税負担の増加がより大きくなる。なかでも2億円以下から2億円超、3億円以下から3億円超、6億円以下から6億円超に変わる場合は、図表10のとおり基礎控除の引き下げに加えて新たな税率が適用される。これらに該当する場合は、特に節税のインセンティブが強いと推測される。
4 更地価格に対する借地権の価格割合
5 家屋の評価額 に対する貸家の評価額(借家権部分)の割合。一般にアパートなどの貸家に供されている建物は、借家人の権利が付着しているため、家屋の評価額から借家権部分を控除した金額が貸家の評価額となる
(2016年11月11日「基礎研レポート」)
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