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- 低PBR株の復活は時期尚早か
2016年10月05日
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PBRとは、株価を一株当り自己資本で割った株式指標である。値が小さいほど株価は割安、大きいほど株価は割高であることを意味する。日本の株式市場では、低PBR株は高PBR株と比べて堅調に株価が推移し、超過収益を得られる傾向があることが知られている。しかし近年、その傾向が見られなくなってきている。
実際にRussell/Nomuraスタイル・インデックスの年度ごとのパフォーマンスをみてみよう(図表1)。Russell/Nomuraスタイル・インデックスでは、バリュー指数が低PBR株で構成された指数、グロース指数は高PBR銘柄で構成された指数となっている。つまり、バリュー指数がグロース指数よりも高パフォーマンスだったならば、低PBR株は超過収益を得ていたといえる。
2012年度以降、バリュー指数がグロース指数を劣後し続けており、低PBR株は相対的に低迷していたことが分かる。それ以前の2010年度もグロース指数が優位であった。2011年度はバリュー指数がグロース指数を上回る収益をあげていたが、リターンの差は0.6%しかなかった。2010年度から2015年度まで通してみると、グロース指数の累積リターンが70%に対してバリュー指数が44%と、6年間で26%も劣後したのだ。
ここで低PBR株が低迷した要因として、金融株の影響がまず挙げられる。低PBR株には銀行、保険、証券などの金融株が多く含まれている。ゆえに、低PBR株のパフォーマンスは金融業独特の要因の影響を受けやすくなっている。特に2013年度や2015年度は、金融株が低PBR株全体のパフォーマンスを押し下げたと考えられる。
実際にRussell/Nomuraスタイル・インデックスの年度ごとのパフォーマンスをみてみよう(図表1)。Russell/Nomuraスタイル・インデックスでは、バリュー指数が低PBR株で構成された指数、グロース指数は高PBR銘柄で構成された指数となっている。つまり、バリュー指数がグロース指数よりも高パフォーマンスだったならば、低PBR株は超過収益を得ていたといえる。
2012年度以降、バリュー指数がグロース指数を劣後し続けており、低PBR株は相対的に低迷していたことが分かる。それ以前の2010年度もグロース指数が優位であった。2011年度はバリュー指数がグロース指数を上回る収益をあげていたが、リターンの差は0.6%しかなかった。2010年度から2015年度まで通してみると、グロース指数の累積リターンが70%に対してバリュー指数が44%と、6年間で26%も劣後したのだ。
ここで低PBR株が低迷した要因として、金融株の影響がまず挙げられる。低PBR株には銀行、保険、証券などの金融株が多く含まれている。ゆえに、低PBR株のパフォーマンスは金融業独特の要因の影響を受けやすくなっている。特に2013年度や2015年度は、金融株が低PBR株全体のパフォーマンスを押し下げたと考えられる。
つまり、相対的にBPS成長率が高かった分、低PBR株よりも高PBR株の株価は下支えされていたと考えられる。実際に高PBR銘柄と低PBR銘柄との年度ごとのBPS成長率の差の推移を見ると、金融株の有無に関係なく、高PBR株が低PBR株と比べて一貫してBPS成長率が高い傾向があった(図表2)。特に、2015年度はBPS成長率の差が大きかった。
さらに2010年以降、BPSの成長格差が拡大していたことも、低PBR株にはマイナスに働いたと思われる。BPSの拡大が緩慢な企業は、投資家の間で評価が見直されにくいのではないだろうか。そのため、この6年間は低PBR株が低PBRのまま放置されやすい環境にあったと思われる。
低PBR株は足元、復調の兆しが見えている。7月中旬以降の株価の反発に伴い、低PBR株の株価が大きく上昇したためである。しかし、BPSの成長格差は維持され、BPSの成長を織り込む過程で再び高PBR株(グロース指数)が浮上してくる可能性がある。また、金融株は金融政策や市場の動向に左右され、引き続き大きく変動することもあるだろう。ゆえに、足元の低PBR株の急反発は長く続かず、一時的な動きで終わってしまうこともあると筆者は考えている。今後の動向には注意が必要といえよう。
さらに2010年以降、BPSの成長格差が拡大していたことも、低PBR株にはマイナスに働いたと思われる。BPSの拡大が緩慢な企業は、投資家の間で評価が見直されにくいのではないだろうか。そのため、この6年間は低PBR株が低PBRのまま放置されやすい環境にあったと思われる。
低PBR株は足元、復調の兆しが見えている。7月中旬以降の株価の反発に伴い、低PBR株の株価が大きく上昇したためである。しかし、BPSの成長格差は維持され、BPSの成長を織り込む過程で再び高PBR株(グロース指数)が浮上してくる可能性がある。また、金融株は金融政策や市場の動向に左右され、引き続き大きく変動することもあるだろう。ゆえに、足元の低PBR株の急反発は長く続かず、一時的な動きで終わってしまうこともあると筆者は考えている。今後の動向には注意が必要といえよう。
(2016年10月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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