2016年08月23日

消えたPBR効果~足元の復調は続くのか~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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■要旨

PBR(Price to Book-value Ratio)とは、株価を自己資本で割った指標です。自己資本に対してPBRが大きいほど株価は割高、小さいほど株価は割安であることを意味します。昨今急速に活用が広がっているスマート・ベータにも、企業の割安度合いを測る際に活用されるくらい、一般的な株価指標です。

日本の株式市場では、低PBR銘柄への投資は高PBR銘柄へ投資するよりも高い収益が得られる傾向がありました(本稿ではこの傾向を「PBR効果」と呼びます)。しかし、近年その傾向が見られなくなっています。

そこで本稿では、PBR効果が見られなくなった要因を探ると共に、今後PBR効果は復活するかについても考えたいと思います。

■目次

1――はじめに
2――2010年以降、見られてないPBR効果
3――PBR効果はキャピタル・リターン差でほぼ説明できる
4――PBR成長率と資本成長率に注目
5――PBR効果はPBRの収斂次第
6――背景には成長格差の拡大か
7――PBR効果の復活はまだ先の話か

1――はじめに

1――はじめに

PBR(Price to Book-value Ratio)とは、株価を自己資本で割った指標です。自己資本に対してPBRが大きいほど株価は割高、小さいほど株価は割安であることを意味します。昨今急速に活用が広がっているスマート・ベータにも、企業の割安度合いを測る際に活用されるくらい、一般的な株価指標です。

日本の株式市場では、低PBR銘柄への投資は高PBR銘柄へ投資するよりも高い収益が得られる傾向がありました(本稿ではこの傾向を「PBR効果」と呼びます)。しかし、近年その傾向が見られなくなっています。

そこで本稿では、PBR効果が見られなくなった要因を探ると共に、今後PBR効果は復活するかについても考えたいと思います。
 

2――2010年以降、見られてないPBR効果

2――2010年以降、見られてないPBR効果

まず、プロ(機関投資家)の間でよく用いられるラッセル野村スタイル・インデックスの年度ごとのリターン(収益率)を見てみましょう【図表1】。ラッセル野村スタイル・インデックスでは、バリュー指数が低PBR銘柄で構成された指数、グロース指数は高PBR銘柄で構成された指数となっています。バリュー指数がグロース指数よりも高いリターンをあげている年は、PBR効果があったといえます。

2012年度以降、バリュー指数はグロース指数よりも低パフォーマンスでした。それ以前の2010年度も、グロース指数が優位。2011年度は、バリュー指数がグロース指数を上回るリターンをあげましたが、リターンの差は0.6%しかありませんでした。直近6年(2010~2015年度)だと、バリュー指数はグロース指数よりも累積で26%、リターンが劣後しました。

バリュー指数がグロース指数を明確に上回るリターンをあげた年は、2009年度が最後です。
【図表1】 ラッセル野村スタイル・インデックスのバリュー指数とグロース指数の年度リターンの推移
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前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

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【消えたPBR効果~足元の復調は続くのか~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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