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導入迫るリスク分担型企業年金-DB制度改正(案)の概要とリスク分担型企業年金への移行時に留意すべきポイント

金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 梅内 俊樹
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1――目前に迫るDB制度の改正
2――DB制度の主な改正内容
現行では、掛金収入現価と積立金の合計が給付現価と一致する状態を財政均衡とし、掛金収入現価と積立金の合計が給付現価を上回る場合には掛金の増額はできない。その反面、積立金の減少などにより、掛金収入現価と積立金の合計が給付現価を下回る積立不足に陥ると、財政の均衡を図り、将来の給付の確実性を高める必要性から、掛金の追加拠出が強いられる仕組みとなっている。つまり、積立不足の発生が、掛金の追加拠出に直結する仕組みとなっており、運用損失などにより積立金が減少し易い景気悪化局面では、追加の掛金拠出と企業収益の悪化が同時に発生し、DB制度を運営する企業の負担を高める一因ともなっている。
今回の改正は、DB制度を運営する企業の負担軽減を図るべく、掛金拠出を弾力化し、同時に、財政均衡の考え方を見直すものである。具体的には、予め算定された将来の財政悪化時に想定される積立不足(以下、財政悪化リスク相当額)の範囲で、リスク対応掛金という名目での追加拠出を認め1、このリスク対応掛金を含む掛金収入現価と積立金の合計が、「給付現価」と「給付現価+財政悪化リスク相当額」の範囲に収まっている状態を財政均衡とする改正である(図表1)。掛金収入現価と積立金の合計が給付現価を上回る場合であっても、給付現価と財政悪化リスク相当額の合計額を超えない範囲で掛金の増額が可能となるため、母体企業が財務面で余裕のあるときに、将来の財政悪化に備えて掛金を増額することができ、景気悪化時に積立不足に陥るリスクを抑えることができるようになる。別な言い方をすれば、企業が拠出する掛金額が、景気変動の影響を受け難くなり、その分、財政の安定化が期待できることになる。
1 正確には、リスク対応掛金設定時のリスク対応掛金を含む掛金収入現価と積立金の合計が、給付現価と財政悪化リスク相当額の合計を超えない範囲で、リスク対応掛金の設定が認められる。
リスク対応掛金の拠出限度に当たる財政悪化リスク相当額は、20年に一度の頻度で発生すると予想される積立不足の最大額として、原則として全てのDB制度において定期的な算定が求められる。算定方法には、画一的で簡便的な算定が可能な標準方式と、個々の財政上の特質を考慮することが求められる特別方式がある。標準方式では、資産の価格変動により積立金が減少するリスクのみを財政悪化リスク相当額とし、所定の資産区分ごとの残高に、各資産に対応する所定のリスク係数を乗じた額の総和により算定することとされる(図表2)。ただし、“その他”の構成割合が20%以上などの場合には、特別方式による算定が義務付けられる。特別方式は、資産の価格変動により積立金が減少するリスクだけでなく、予定利率・予定死亡率・予定脱退率等の基礎率と実績とが乖離することに伴い発生しうる危険を考慮するよう努めることとされ、厚生労働大臣の承認を受ける必要がある。いずれにせよ、こうして算定される財政悪化リスク相当額からリスク対応掛金設定前のリスク充足額(現行の規定における積立剰余で、「掛金収入現価と積立金の合計が給付現価を上回る額」)を控除した額を限度に、リスク対応掛金の設定が可能になる。
(2016年09月30日「基礎研レポート」)

03-3512-1849
- 【職歴】
1988年 日本生命保険相互会社入社
1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
2009年 ニッセイ基礎研究所
2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
2013年7月より現職
2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
2021年 ESG推進室 兼務
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