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日本企業の信用リスクは磐石か-CDSスプレッドの縮小トレンドに潜む不安材料
金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
5――まとめ
また、最も信用リスクに関する情報をすばやく数値に反映するはずのCDSスプレッドが、これらの信用リスク指標が示唆する不安材料を織り込んでないように見える点については注意すべきだろう。このCDSスプレッドと他の信用リスク指標との乖離した動きの要因として指摘されているのが、CLN等のCDSの売りポジションを内包した金融商品に対する需要の高まりの影響である。CDS市場が売りサイドの需要のインパクトを受ければ受けるほど、CDSスプレッドは縮小していくことになる。図表11は日本銀行より公表されている日本の主要金融機関におけるCLNの購入残高の推移である。当該データから日本におけるCLNに対する投資家需要の全てを確認することは出来ないが、「量的・質的金融緩和政策」(2013年4月)導入後にCLNの購入残高が増加している状況を垣間見ることができる。CDS市場での取引の大部分を占める10年未満の年限で国債利回りが低位安定することになれば、投資家の利回り追求による需給の偏りから、CDSスプレッドが参照企業の信用リスクの実態と乖離してしまう可能性もありうる。
日本企業の信用リスクについては、各指標において需給や政策の影響が複雑に絡み合っている側面もあるため、多面的な観点で分析を行っていくことが必要になるだろう。
03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
(2016年09月29日「基礎研レポート」)
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