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- 男性高齢者の「七五三」-「超高齢社会」生き抜く小さなヒント
日本の高齢者の状況を主要国と比べると、高齢化率および高齢化の進展の速さが著しいだけでなく、高齢者の就業率が21.7%(男性30.3%、女性15.0%)ときわめて高い水準になっている(平成27年)。「一億総活躍社会」を目指す日本にとって、高齢者の就業率向上は期待されるが、将来の生活不安などから高齢期も長く働かざるを得ない高齢者が多いとすれば、手放しで喜べることではない。
同資料の「高齢者の家計」を読むと、高齢者世帯(世帯主が65歳以上である二人以上世帯)の貯蓄高は、平均値が2430万円、中央値が1547万円で、高齢者世帯の間に大きな資産格差があることがわかる。また、高齢者の世帯支出は二人以上世帯全体の平均に比べ「保健医療」と「交際費」の割合が高くなっており、高齢者の就業理由も「家計のため」や「生きがい」などさまざまだ。
男女別高齢者人口をみると、男性1499万人、女性1962万人で、女性100人に対して男性76.4人だ。この人口性比は70歳以上で70.1、80歳以上で54.8、90歳以上で31.1となり、男性高齢者の割合はほぼ「七五三」になっている。100歳以上に限ると15.9で、超高齢社会では年齢を重ねるほどに男性は「七五三」と少数派になってゆくことがわかる。
同資料の「高齢者の人口移動」によると、平成27年の高齢者の都道府県別転出超過数は東京都が最多、転入超過数は埼玉県、千葉県、神奈川県が多い。男性は65~69歳で都道府県間移動率が高く、退職後に東京都から周辺各県に移動する人が多いとみられる。高齢者の都道府県間の移動率は低いものの、一人暮らしの高齢者が増える一方で、高齢期の居住地の移動は社会的孤立を招き易く、職住分離した現役時代の生活から地域に密着したライフスタイルへの転換が求められる。
少数派となった男性高齢者が幸せな最期を迎えるためには、地域における役割を見つけ、女性や他世代とのコミュニケーション能力を涵養し、社会的孤立を防ぐことが有効だ。子どもの健やかな成長を願う「七五三」だが、男性高齢者が自ら「七五三」の現状を意識すれば、超高齢社会を幸せに生き抜く小さなヒントになるのではないだろうか。
(参考) 研究員の眼 『退職後の“居場所づくり”~求められる「新たなコミュニケーション能力」』 (2015年11月10日)
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土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2016年09月27日「研究員の眼」)
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