- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢者のQOL(生活の質) >
- 退職後の“居場所づくり”-求められる「新たなコミュニケーション能力」
退職後の“居場所づくり”-求められる「新たなコミュニケーション能力」

土堤内 昭雄
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
年齢別性比を見ていくと、0歳*から徐々に低下しはじめ、53歳で100(男女同数)になり、それ以上では100を下回る。65歳以上の高齢者全体では75.8、75歳以上の後期高齢者全体では62.5となり、100歳以上の長寿高齢者に限ると性比は15.1で、女性が9割近くを占めている。日本人の平均寿命が男性80.50歳、女性86.83歳であることからも、超高齢社会は女性が多数派であることがわかる。
先日、ある自治体主催の『退職後の生きがい探し』をテーマにした講座で、退職した男性の方々に話をする機会があった。退職後に会社から地域に居場所を移し、地域で生きがいを持って暮らしたいと考える退職高齢者は多いが、実は彼らが思うほど地域の居場所づくりは容易ではない。その理由は、地域社会は女性が中心で、男性が慣れ親しんだ企業社会とは様々な違いがあるからだ。
男性が退職後に地域に居場所をつくるには、高齢社会の多数派である女性とのコミュニケーション能力が必要だ。仕事上では名刺交換して相手との社会的距離感を把握すると円滑に会話できる男性も、相手の正体が不明だと巧くコミュニケーションできない人もいる。地域の会話は地域内や生活上の出来事が主たるテーマになるため話題についていけない男性も多い。前述の講座では、重要な生活力である料理づくりと配偶者以外の女性ともキチンと会話ができる講座を組み合わせているそうだ。
つぎに地域社会の行動様式を身につけることが重要になる。対等な住民同士の関係性が求められる地域社会では、全ての人に等しく情報開示し、意思決定に加わってもらうことが原則だ。それは時間と手間を要し、非効率的に思えるかもしれないが、企業とは異なる地域の行動様式や意思決定の方法を理解しなければ、地域の一員として受け入れてもらえないこともある。
一定の年齢で退職、即ち「定年」=「退職」の場合、「退職」を地域や家族との新たな関係性の出発点と捉える意識が薄く、「退職」を迎える準備が不十分になりかねない。退職後の“居場所づくり”は一日では成就しない。現役時代から少しずつ地域における「新たなコミュニケーション能力」を磨くことにより、生きがいのある高齢期の暮らしにソフトランディングできるのではないだろうか。
*男性の新生児や乳児の死亡率は女性より高く、「0歳性比」は「出生性比」より低くなっている。
(参考) 研究員の眼『中高年男性のワークライフバランス~いかに「きょうよう」と「きょういく」身につけるか』(2013年12月16日)
(2015年11月10日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
土堤内 昭雄
土堤内 昭雄のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/12/20 | 「定年退社」します!-「生涯現役」という人生の「道楽」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/11/28 | 「人生100年時代」の暮らし方-どう過ごす?! 定年後の「10万時間」 | 土堤内 昭雄 | 基礎研レポート |
2018/11/27 | 「平成」の30年を振り返って-次世代へのメッセージは、「レジリエントな社会づくり」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/10/23 | 「幸せ」実感できぬ社会-豊かな時代のあらたな課題 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年03月21日
東南アジア経済の見通し~景気は堅調維持、米通商政策が下振れリスクに -
2025年03月21日
勤務間インターバル制度は日本に定着するのか?~労働時間の適正化と「働きたい人が働ける環境」のバランスを考える~ -
2025年03月21日
医療DXの現状 -
2025年03月21日
英国雇用関連統計(25年2月)-給与(中央値)伸び率は5.0%まで低下 -
2025年03月21日
宇宙天気現象に関するリスク-太陽フレアなどのピークに入っている今日この頃
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【退職後の“居場所づくり”-求められる「新たなコミュニケーション能力」】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
退職後の“居場所づくり”-求められる「新たなコミュニケーション能力」のレポート Topへ