コラム
2016年08月02日

人間ドックのスケジューリングについて思うこと-医療資源の効率的な活用と受診者の待ち時間の短縮化-

中村 亮一

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人間ドックのスケジューリングの研究

必要性
こうした人間ドックのスケジューリングについては、医療機関にとっては、(1)医療資源(医療機器台数や看護師数等)の適切な管理、(2)効率的な業務運営、(3)待ち時間をできるだけ少なくすることによる受診者の不満解消によるサービス水準の向上、という観点から、大きな意味を有している。加えて、これから、さらなる高齢化社会を迎えて、人間ドック受診者が増大してくることが想定されることから、この問題は、社会全体にとっても、同様に重要な意義を有してくることになる。従って、こうした人間ドックのスケジューリングについては、いくつかの研究も行われてきている。

目的
目指すべきは、「(一定の医療資源の制約下で)受診者全員の総検査時間が最小となる最適スケジュールを作成する」ということになる。より具体的には「各受信者の検査項目の順番を決定する」ルールを定めていくことになる。

この問題を考える上においては、モデルの単純化等のため、一定程度、受診者や検査項目をグルーピングすることも必要になってくる。

スケジューリングにおいて考慮すべき要素
ただし、実際のスケジューリングを考える上においては、各受診者の、検査開始時間、検査項目、検査時間等が異なってくる、ことも考慮する必要がある。さらには、検査項目の順番を考える上においては、「特定の検査項目を受けるためには、ある他の特定の検査項目を終了していなければならない。」というような制約(この観点から、「(11)胃部レントゲン(バリウム検査)」は、必ず最後の方で行われることになる)もある。加えて、できれば、「受診者は、検査開始の順番で全ての検査を終了する」ことが望まれることになる。なお、これに関連して、全体の総検査時間が最小化されたとしても、一方で、特定の受診者の検査時間が長くなることも望ましくなく、「受診者間での検査時間の平準化」も求められてくることになる。

実際への適用
こうしたいくつかの制約要因も踏まえた上で、モデリングを行うことが考えられるが、これに伴い、より問題が複雑化していくことになる。こうした点を考えていくと、全てを事前に決定することは難しく、大きく原則的な考え方を定めた上で、実際の運営において、状況に応じて適宜修正を行っていくことが不可欠になってくるように思われる。

その意味では、先に述べたスマートフォンを活用したスケジューリングは、ある意味で1つの望ましい方式を示しているのかもしれない。
 

おわりに

久しぶりに胃カメラを受診して
今回は、久しぶりに、内視鏡による胃カメラを受けてみた。大分以前に胃カメラを受けたことがあるが、その時は口から挿入する形で、大変苦しい思いをして、できれば2度と受けたくないものだと思っていたが、年齢的に一度はしっかり診てもらうことも必要だと思って、胃カメラを選択した。

今回は鼻から挿入する形であったが、かなりスムーズに終わり、これだったら、来年以降も毎年受けてもいいな、と感じた。ただし、鼻から挿入する場合でも、医師や看護師の腕によるところもあるようで、今回はたまたまラッキーだったのかもしれない、という気もする。いずれにしても、若干食わず嫌いな点もあったと、認識を新たにしている。実は私と同じような経験・考え方をして、胃カメラを敬遠している人はかなりいるのではないかと思っているので、再考されることをお勧めしたい。

因みに、多くの人がバリウムによる検査を選択しているので、胃カメラによる検査を選択した場合には、予約制で少数派となり、待ち時間も少なく終わるようである。通常の人間ドックでは、バリウムによる検査が最後になり、最も多くの待ち時間を費やすことが多いと思われるが、胃カメラを選択した場合には、このプロセスが効率化されることになる。ただし、料金は上乗せされる形になるので、この点は了承する必要がある。
 
人間ドックに思うこと
人間ドックのスケジューリングの重要性を述べてきたが、受診者の立場からは、基本的には3時間程度の人間ドックの時間は、自分の健康を見つめ直す良い機会であると思われる。従って、あまりあくせくせずに、少なくとも受診日当日はストレスも感じずにゆったりと構えておくのが望ましい、と思われる。

待ち時間には、通常はあまりじっくりと読む機会のない雑誌に目を通したり、(平日に受診すれば)同様に通常ならば見ることのないテレビ番組を見たりすることで、何か新たな発見をすることになるかもしれない。もちろん、そんな前向きに物事を捉えずに、ただぼーっとして、リラックスしているのでもよい。

いずれにしても、通常は、健康にあまり気を使わない、あるいは使うことができないほど日々の仕事等に没頭している人も、この時ぐらいは、スケジューリングは医療機関にお任せして、待ち時間があれば、ゆっくりして、日常とは異なるわずかな時間を楽しむことでよいのではないか、と感じた次第である。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2016年08月02日「研究員の眼」)

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