- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 中国経済:2016年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探る
2016年07月26日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
4.金融政策には手詰まり感

一方、中国人民銀行は貸出・預金の基準金利の引き下げを見送り、短期金利の代表指標であるSHIBOR(翌日物)は2%前後で横ばい推移となった(図表-11)。年明けの中国では景気が大きく下振れしたため、市場には利下げ期待があった。しかし、原油価格が底打ちしたことや春節に食品価格が急騰したことで、消費者物価は上昇率を高めていた。また、住宅価格が上昇したことも利下げを見送った背景と思われる。住宅価格は昨年4月を直近底値に上昇傾向を続けており、2014年4月の直近高値に迫るところまで上昇してきた(図表-12)。特に深圳市では直近高値の1.7倍まで上昇するなどバブル懸念が高まり、景気テコ入れのために利下げに踏み切れば、バブル膨張を助長しかねなかった。
また、通貨供給量(M2)の動きを見ると、6月は前年同月比11.8%増と「13%前後」とされた今年の政府見通しを下回っており、経済への影響が懸念されている(図表-13)。内訳を見ると準通貨「その他預金」の伸び鈍化が目立つ。昨年夏には、株価安定策の影響で「その他預金」が急増した経緯があることから、その反動減の面が大きいと考えられる。但し、M1が前年同月比24.6%増と高い伸びを示しているにも拘らず、融資残高は同14.3%増と昨年9月の同15.8%増をピークにじりじりと伸びが鈍化している。この点に関して、中国人民銀行の盛調査統計局長は「流動性の罠」の可能性を指摘しており、民間企業の投資意欲に対する懸念は払拭しきれない。
5.2016年下期の注目点
第二に国有・持ち株企業と民間企業で二極化した投資の持続性である。2016年上期の投資は、民間企業の投資が前年同期比2.8%増と落ち込む一方、国有・持ち株企業の投資が同23.5%増と高い伸びを示し、全体では緩やかな減速に留まった(図表-15)。中国政府は、行政手続きの簡素化、公共事業や民生分野での参入障壁の解消、資金調達面での支援などを推進、民間企業の投資を促進し始めた。しかし、国有企業改革が進まない中で、民間企業が新たな投資分野を開拓するのは容易ではなく、民間企業の投資は低迷する可能性が高い。その時、国有・持ち株企業は、政府の意向を受けて成長率を維持するため高水準投資を維持するのか、二極化した投資の行方にも注目したい。
第三に住宅市場の販売・着工の好循環の持続性である。2016年上期には、商品住宅の販売(面積)が前年同期比28.6%増と急増する中で、在庫が減り始め、新規着工が同14.0%増と2年ぶりにプラスに転じた(図表-16)。しかし、住宅価格の急上昇でバブル懸念が高まった一部都市では購入制限の強化に動きだしている。住宅価格や販売・着工など関連指標の動きからも目が離せない。
第三に住宅市場の販売・着工の好循環の持続性である。2016年上期には、商品住宅の販売(面積)が前年同期比28.6%増と急増する中で、在庫が減り始め、新規着工が同14.0%増と2年ぶりにプラスに転じた(図表-16)。しかし、住宅価格の急上昇でバブル懸念が高まった一部都市では購入制限の強化に動きだしている。住宅価格や販売・着工など関連指標の動きからも目が離せない。
(2016年07月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
このレポートの関連カテゴリ
三尾 幸吉郎
三尾 幸吉郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 図表でみる世界の民主主義-日本の民主主義指数は上昇も、世界平均は低下。世界ではいったい何が起きているのか? | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/12/16 | 図表でみる世界のGDP-日本が置かれている現状と世界のトレンド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/07/30 | 図表でみる世界の人口ピラミッド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/04/05 | 不動産バブルの日中比較と中国経済の展望 | 三尾 幸吉郎 | 基礎研マンスリー |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【中国経済:2016年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
中国経済:2016年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探るのレポート Topへ