- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- NY州がPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)採択の方針を表明-必要な責任準備金保護手段設定のためのワーキンググループを設立-
2016年07月12日
NY州がPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)採択の方針を表明-必要な責任準備金保護手段設定のためのワーキンググループを設立-
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
米国における PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価:Principle Based Reserving)制度の導入を巡る動きについては、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-ついに、2017 年からスタートか-」(2016.4.18)(以下「前々回の保険年金フォーカス」という)で報告した。その中で、「PBR 制度が効力を発するためには、各州が、一定の要件を満たす形で、標準責任準備金法等の改正に関する NAIC(全米保険監督官会議)のモデル法を採択する必要があったが、各州の採択が進んで、4 月上旬の時点において、改正法が効力を発するための数的要件が満たされた。」ことを報告した。
さらに、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向 -NAIC が、2017 年からの実施を採択-」(2016.6.21)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認も行われ、「2017 年1月1 日から、PBR 制度がスタートする」こととなった、と報告した。
ところが、この段階では、最大規模の収入保険料を有するニューヨーク州がいまだNAICのモデル法を採用するかどうかが不透明で、これはニューヨーク州で事業展開する保険会社を不安定な状況におくことになる懸念がもたれていた。
7月6日に、ニューヨーク州のDFS(Department of Financial Services:金融監督局)の局長であるMaria T. Vullo 氏が、「DFSは、2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用する」こと及び「必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを召集した」と発表した。
今回のレポートでは、(1)7月6日に、DFSがプレス・リリースした内容、(2)PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯及び③NAICの「2017年1月からのPBR実施」の公表を受けての保険業界への影響に関するFitch の報告書の内容、について報告する。
■目次
1―はじめに
2―ニューヨーク州のDFSのプレス・リリースの内容
3―PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯
1|ニューヨーク州の金融監督局長の交代
2|今回の方針変更
3|今回の方針変更を受けての今後の動向
4―業界からの反応
5―Fitch の報告書
6―まとめ
1|全体的には一歩前進
2|今後の最大の課題
米国における PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価:Principle Based Reserving)制度の導入を巡る動きについては、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-ついに、2017 年からスタートか-」(2016.4.18)(以下「前々回の保険年金フォーカス」という)で報告した。その中で、「PBR 制度が効力を発するためには、各州が、一定の要件を満たす形で、標準責任準備金法等の改正に関する NAIC(全米保険監督官会議)のモデル法を採択する必要があったが、各州の採択が進んで、4 月上旬の時点において、改正法が効力を発するための数的要件が満たされた。」ことを報告した。
さらに、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向 -NAIC が、2017 年からの実施を採択-」(2016.6.21)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認も行われ、「2017 年1月1 日から、PBR 制度がスタートする」こととなった、と報告した。
ところが、この段階では、最大規模の収入保険料を有するニューヨーク州がいまだNAICのモデル法を採用するかどうかが不透明で、これはニューヨーク州で事業展開する保険会社を不安定な状況におくことになる懸念がもたれていた。
7月6日に、ニューヨーク州のDFS(Department of Financial Services:金融監督局)の局長であるMaria T. Vullo 氏が、「DFSは、2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用する」こと及び「必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを召集した」と発表した。
今回のレポートでは、(1)7月6日に、DFSがプレス・リリースした内容、(2)PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯及び③NAICの「2017年1月からのPBR実施」の公表を受けての保険業界への影響に関するFitch の報告書の内容、について報告する。
■目次
1―はじめに
2―ニューヨーク州のDFSのプレス・リリースの内容
3―PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯
1|ニューヨーク州の金融監督局長の交代
2|今回の方針変更
3|今回の方針変更を受けての今後の動向
4―業界からの反応
5―Fitch の報告書
6―まとめ
1|全体的には一歩前進
2|今後の最大の課題
1―はじめに
米国における PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価:Principle Based Reserving)制度の導入を巡る動きについては、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向-ついに、2017 年からスタートか-」(2016.4.18)(以下「前々回の保険年金フォーカス」という)で報告した。その中で、「PBR 制度が効力を発するためには、各州が、一定の要件を満たす形で、標準責任準備金法等の改正に関する NAIC(全米保険監督官会議)のモデル法を採択する必要があったが、各州の採択が進んで、4 月上旬の時点において、改正法が効力を発するための数的要件が満たされた。」ことを報告した。
さらに、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向 -NAIC が、2017 年からの実施を採択-」(2016.6.21)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認も行われ、「2017 年1月1 日から、PBR 制度がスタートする」こととなった、と報告した。
ところが、この段階では、最大規模の収入保険料を有するニューヨーク州がいまだNAICのモデル法を採用するかどうかが不透明で、これはニューヨーク州で事業展開する保険会社を不安定な状況におくことになる懸念がもたれていた。
7月6日に、ニューヨーク州のDFS(Department of Financial Services:金融監督局)の局長であるMaria T. Vullo 氏が、「DFSは、2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用する」こと及び「必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを招集した」と発表した。
今回のレポートでは、(1)7月6日に、DFSがプレス・リリースした内容、(2)PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯及び(3)NAICの「2017年1月からのPBR実施」の公表を受けての保険業界への影響に関するFitch の報告書の内容、について報告する。
さらに、保険年金フォーカス「米国 PBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)制度の動向 -NAIC が、2017 年からの実施を採択-」(2016.6.21)(以下「前回の保険年金フォーカス」という)で、各州の採択内容がNAICのモデル法と「実質的に同等」である、との要件の確認も行われ、「2017 年1月1 日から、PBR 制度がスタートする」こととなった、と報告した。
ところが、この段階では、最大規模の収入保険料を有するニューヨーク州がいまだNAICのモデル法を採用するかどうかが不透明で、これはニューヨーク州で事業展開する保険会社を不安定な状況におくことになる懸念がもたれていた。
7月6日に、ニューヨーク州のDFS(Department of Financial Services:金融監督局)の局長であるMaria T. Vullo 氏が、「DFSは、2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用する」こと及び「必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを招集した」と発表した。
今回のレポートでは、(1)7月6日に、DFSがプレス・リリースした内容、(2)PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯及び(3)NAICの「2017年1月からのPBR実施」の公表を受けての保険業界への影響に関するFitch の報告書の内容、について報告する。
以上のように、DFSは、
(1)2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用すること
(2)必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを設立したこと
を公表している。
(1)2018年1月から、その規制下にある生命保険会社に対して、プリンシプル・ベースの責任準備金評価(PBR)制度を採用すること
(2)必要な責任準備金保護手段を設定する上でDFSを支援するために、業界と消費者の代表から構成されるワーキンググループを設立したこと
を公表している。
3―PBRを巡るニューヨーク州の方針に関してのこれまでの経緯
今回、ニューヨーク州がPBRを採択するとの表明を行ったことは、ニューヨーク州の方針の転換を示している。
1|ニューヨーク州の金融監督局長の交代
現在のMaria Vullo氏の前の局長であったBenjamin Lawsky氏は、「PBRは、会社の責任準備金要件を弱めるので、それを採用することを拒否する。」ことを声高に述べていた。
PBRの導入により、定期保険に対するXXX規制や2次保証付ユニバーサル生命保険(ULDG)に対するAXXX規制で求められている責任準備金の積立額を減らすことができることになる。
Benjamin Lawsky氏の下でのニューヨーク州は、PBRが会社の恣意性に基づいて評価され、不適切で不十分な積立に繋がる懸念があることから、まずはトライアル・ベースで導入すること等を提案していた。
Benjamin Lawsky 氏は2015年6月に4年間の任務の後に退任した。その後Anthony Albanese 氏が秋まで代理を務めていたが、Andrew Cuomo ニューヨーク州知事との考え方の相違があり、2016年1月に退任している。Maria Vullo氏は、その後任として、1月に代理に任命されて、その職務を果たしてきた。そうした代理としての職務実績を踏まえて、ニューヨーク州は、6月15日に、Maria Vullo氏を、新たな監督局長に任命している。これを受けて、有名なBenjamin Lawsky 氏の後任として、Maria Vullo氏がどのような手腕を示すのかが大変注目されていた。
1|ニューヨーク州の金融監督局長の交代
現在のMaria Vullo氏の前の局長であったBenjamin Lawsky氏は、「PBRは、会社の責任準備金要件を弱めるので、それを採用することを拒否する。」ことを声高に述べていた。
PBRの導入により、定期保険に対するXXX規制や2次保証付ユニバーサル生命保険(ULDG)に対するAXXX規制で求められている責任準備金の積立額を減らすことができることになる。
Benjamin Lawsky氏の下でのニューヨーク州は、PBRが会社の恣意性に基づいて評価され、不適切で不十分な積立に繋がる懸念があることから、まずはトライアル・ベースで導入すること等を提案していた。
Benjamin Lawsky 氏は2015年6月に4年間の任務の後に退任した。その後Anthony Albanese 氏が秋まで代理を務めていたが、Andrew Cuomo ニューヨーク州知事との考え方の相違があり、2016年1月に退任している。Maria Vullo氏は、その後任として、1月に代理に任命されて、その職務を果たしてきた。そうした代理としての職務実績を踏まえて、ニューヨーク州は、6月15日に、Maria Vullo氏を、新たな監督局長に任命している。これを受けて、有名なBenjamin Lawsky 氏の後任として、Maria Vullo氏がどのような手腕を示すのかが大変注目されていた。
(2016年07月12日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/02 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【NY州がPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)採択の方針を表明-必要な責任準備金保護手段設定のためのワーキンググループを設立-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
NY州がPBR(プリンシプル・ベースの責任準備金評価)採択の方針を表明-必要な責任準備金保護手段設定のためのワーキンググループを設立-のレポート Topへ