- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-
2016年06月06日
ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-
このレポートの関連カテゴリ
■要旨
ドイツの責任準備金評価用の最高予定利率制度については、2015年の10月から12月にかけて、財務省(BMF:Bundesministerium der Finanz:Federal Ministry of Finance)からの撤廃提案、それに対する保険業界等からの反対意見を受けての制度継続と、めまぐるしい動きが見られた。結果的に、2016年1月からの新契約に対する責任準備金評価用の最高予定利率についても、それまでの1.25%の水準が据え置かれて、現在に至っている。こうした動きについては、これまで2回の基礎研レターで報告した。
前回の報告時に、2016年1月からの最高予定利率の水準は、とりあえず1.25%の水準に据え置かれたが、2017年1月以降の水準の引き下げ等の可能性についても触れておいた。その後、財務省から、2017年1月以降、最高予定利率を0.9%に引き下げる案が提示されており、これを受けて、保険業界やドイツ・アクチュアリー会等からの意見表明も行われている。
今回のレポートでは、こうしたドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、報告する。
■目次
1―はじめに
2―財務省からの提案
3―ドイツ・アクチュアリー会の反応
4―ドイツ保険協会の反応
5―被保険者団体等からの反応
1|BdV(被保険者連盟)
2|保険雑誌(versicherungs magazin)よりの記事
6―まとめ
ドイツの責任準備金評価用の最高予定利率制度については、2015年の10月から12月にかけて、財務省(BMF:Bundesministerium der Finanz:Federal Ministry of Finance)からの撤廃提案、それに対する保険業界等からの反対意見を受けての制度継続と、めまぐるしい動きが見られた。結果的に、2016年1月からの新契約に対する責任準備金評価用の最高予定利率についても、それまでの1.25%の水準が据え置かれて、現在に至っている。こうした動きについては、これまで2回の基礎研レターで報告した。
前回の報告時に、2016年1月からの最高予定利率の水準は、とりあえず1.25%の水準に据え置かれたが、2017年1月以降の水準の引き下げ等の可能性についても触れておいた。その後、財務省から、2017年1月以降、最高予定利率を0.9%に引き下げる案が提示されており、これを受けて、保険業界やドイツ・アクチュアリー会等からの意見表明も行われている。
今回のレポートでは、こうしたドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、報告する。
■目次
1―はじめに
2―財務省からの提案
3―ドイツ・アクチュアリー会の反応
4―ドイツ保険協会の反応
5―被保険者団体等からの反応
1|BdV(被保険者連盟)
2|保険雑誌(versicherungs magazin)よりの記事
6―まとめ
1―はじめに
ドイツの責任準備金評価用の最高予定利率制度については、2015年の10月から12月にかけて、財務省(BMF:Bundesministerium der Finanz:Federal Ministry of Finance)からの撤廃提案、それに対する保険業界等からの反対意見を受けての制度継続と、めまぐるしい動きが見られた。結果的に、2016年1月からの新契約に対する責任準備金評価用の最高予定利率についても、それまでの1.25%の水準が据え置かれて、現在に至っている。こうした動きについては、これまで2回の基礎研レター1で報告した。
前回の報告時に、2016年1月からの最高予定利率の水準は、とりあえず1.25%の水準に据え置かれたが、2017年1月以降の水準の引き下げ等の可能性についても触れておいた。その後、財務省から、2017年1月以降、最高予定利率を0.9%に引き下げる案が提示されており、これを受けて、保険業界やドイツ・アクチュアリー会等からの意見表明も行われている。
今回のレポートでは、こうしたドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、報告する。
1 基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃を提案-EUソルベンシーⅡ導入に伴う監督規制の見直しの動きに対して、関係者の反応はいかに-」(2015.10.14)
基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃提案を撤回」(2015.12.28)
前回の報告時に、2016年1月からの最高予定利率の水準は、とりあえず1.25%の水準に据え置かれたが、2017年1月以降の水準の引き下げ等の可能性についても触れておいた。その後、財務省から、2017年1月以降、最高予定利率を0.9%に引き下げる案が提示されており、これを受けて、保険業界やドイツ・アクチュアリー会等からの意見表明も行われている。
今回のレポートでは、こうしたドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、報告する。
1 基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃を提案-EUソルベンシーⅡ導入に伴う監督規制の見直しの動きに対して、関係者の反応はいかに-」(2015.10.14)
基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃提案を撤回」(2015.12.28)
2―財務省からの提案
ドイツの財務省は、生命保険会社の責任準備金評価に使用される最高予定利率の水準を法令で規定しているが、2017年1月1日から、現行の1.25%の最高予定利率を0.9%に引き下げる、ことを提案している。
ドイツの最高予定利率水準については、米国や日本における標準利率のように算式に基づいて定められているものではなく、今回の0.9%の根拠についても、明示的には開示されていない。ただし、基準金利とされている「ドイツ10年国債の利回り」や「ユーロの10年スワップレート」の過去の平均数値は、以下の表の通りとなっており、これらに基づいて、決定されているものと想定される。
なお、この表に基づけば、本来的には、2016年1月1日からの引き下げも考えられたと思われるが、1で述べたような動きがあった中で、それは見送られている。
ドイツの最高予定利率水準については、米国や日本における標準利率のように算式に基づいて定められているものではなく、今回の0.9%の根拠についても、明示的には開示されていない。ただし、基準金利とされている「ドイツ10年国債の利回り」や「ユーロの10年スワップレート」の過去の平均数値は、以下の表の通りとなっており、これらに基づいて、決定されているものと想定される。
なお、この表に基づけば、本来的には、2016年1月1日からの引き下げも考えられたと思われるが、1で述べたような動きがあった中で、それは見送られている。
なお、ドイツにおいては、最近数年間において市場金利が急速に低下したことから、上記の過去5年平均等の数値では、こうした状況が十分には反映できず、さらには、現在の金利環境が続けば、さらなる予定利率水準の引き下げも想定される状況になっているものと思われる。こうした状況を見るために、直近3年間の月別の市場金利の動向を見てみると、以下の通りとなっている。
仮に、これに基づいて、日本の標準利率設定ルールに従った場合の数値を試算してみると、(1)過去3年平均も使用する形になることから、基準となる利率は低下するが、(2)一方で、1%以下での安全率係数が0.9と高くなり、「×60%」というような大きな安全割引がなされないため、結果として、ユーロの10年スワップレートを使用して、6月末で判断した場合には、ほぼ0.9%程度の水準となるものと想定されることになる。
ただし、この場合でも、現在の金利が継続するとした場合には、1年後には0.6%程度、2年後には0.5%程度の水準に低下していかざるを得なくなる。
仮に、これに基づいて、日本の標準利率設定ルールに従った場合の数値を試算してみると、(1)過去3年平均も使用する形になることから、基準となる利率は低下するが、(2)一方で、1%以下での安全率係数が0.9と高くなり、「×60%」というような大きな安全割引がなされないため、結果として、ユーロの10年スワップレートを使用して、6月末で判断した場合には、ほぼ0.9%程度の水準となるものと想定されることになる。
ただし、この場合でも、現在の金利が継続するとした場合には、1年後には0.6%程度、2年後には0.5%程度の水準に低下していかざるを得なくなる。
3―ドイツ・アクチュアリー会の反応
なお、DAVは、今後の最高予定利率制度について、これまで2段階方式を提案3してきているが、今回、財務省はこの方式を採用していない。これについて、今回DAVはコメントしていない。
2 DAV のポジション・ペーパーhttps://aktuar.de/politik-und-presse/positionen-und-stellungnahmen/Stellungnahmen/2016-05-10-DAV-Stellungnahme-DeckRV-final.pdf
3 DAVの提案する2段階方式については、基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃提案を撤回」(2015.12.28)を参照のこと。
2 DAV のポジション・ペーパーhttps://aktuar.de/politik-und-presse/positionen-und-stellungnahmen/Stellungnahmen/2016-05-10-DAV-Stellungnahme-DeckRV-final.pdf
3 DAVの提案する2段階方式については、基礎研レター「ドイツ財務省が責任準備金評価用の最高予定利率の撤廃提案を撤回」(2015.12.28)を参照のこと。
このレポートの関連カテゴリ
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月25日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2023年決算数値等に基づく現状分析- -
2024年04月24日
中国経済の現状と注目点-24年1~3月期は好調な出だしとなるも、勢いが持続するかは疑問 -
2024年04月24日
人手不足とインフレ・賃上げを考える -
2024年04月24日
米国でのiPhone競争法訴訟-司法省等が違法な独占確保につき訴え -
2024年04月23日
他国との再保険の監督に関する留意事項の検討(欧州)-EIOPAの声明
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-のレポート Topへ