- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 中国経済見通し~景気は一旦持ち直しも、成長率の鈍化傾向は続く
2016年05月27日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
3|輸出
輸出金額(ドルベース)の動きを見ると、2015年は前年比2.9%減とリーマンショック後の2009年以来6年ぶりに前年を下回った(図表-8)。景気が上向いた米国向けは前年比3.4%増と好調だったものの、景気が低迷を続けたEU向けは同4.0%減、日本向けは同9.2%減と前年割れになり、その他の国・地域向けも原油安などで資源国が不振だったため同3.1%減となった。2016年に入っても世界経済の成長の勢いは鈍く、1-4月期の輸出も前年同期比7.6%減とマイナス幅を拡大しており、米国向けが前年比8.9%減、EU向けが同4.4%減、日本向けが同7.0%減、ASEAN向けが同8.9%減と、軒並み前年割れとなっている。3月には輸出の先行指標となる新規輸出受注指数が拡張収縮の境界線となる50%を1年6ヵ月ぶりに回復したことから、今後は若干の反動増があると見られるものの、世界経済の回復が緩やかなものに留まりそうなことを踏まえると、輸出が中国経済を牽引するとは期待できないだろう(図表-9)。
輸出金額(ドルベース)の動きを見ると、2015年は前年比2.9%減とリーマンショック後の2009年以来6年ぶりに前年を下回った(図表-8)。景気が上向いた米国向けは前年比3.4%増と好調だったものの、景気が低迷を続けたEU向けは同4.0%減、日本向けは同9.2%減と前年割れになり、その他の国・地域向けも原油安などで資源国が不振だったため同3.1%減となった。2016年に入っても世界経済の成長の勢いは鈍く、1-4月期の輸出も前年同期比7.6%減とマイナス幅を拡大しており、米国向けが前年比8.9%減、EU向けが同4.4%減、日本向けが同7.0%減、ASEAN向けが同8.9%減と、軒並み前年割れとなっている。3月には輸出の先行指標となる新規輸出受注指数が拡張収縮の境界線となる50%を1年6ヵ月ぶりに回復したことから、今後は若干の反動増があると見られるものの、世界経済の回復が緩やかなものに留まりそうなことを踏まえると、輸出が中国経済を牽引するとは期待できないだろう(図表-9)。
3.住宅バブルと金融政策
住宅価格は上昇している。中国国家統計局が発表した新築分譲住宅価格(除く保障性住宅 )を元に当研究所で70都市平均を計算したところ、2015年4月を直近底値として4.6%上昇した(図表-10)。住宅価格が上昇した背景には、購入制限の緩和と金融緩和により、販売が増勢を強めたことがある。2015年には住宅を購入する際の戸数や戸籍などの規制緩和が各地で相次ぎ、住宅ローンを借りる際の頭金比率の条件も緩和されていった。また、2014年11月以降、中国人民銀行(中央銀行)は6度に渡って利下げを実施、預金基準金利(1年定期)を当初の3.0%から現在の1.5%へと1.5ポイント引き下げ、貸出基準金利(1年以内)も当初の6.0%から現在の4.35%へと1.65ポイント引き下げた(図表-11)。それに伴って住宅ローン金利も低下、住宅ローン残高は勢い良く伸びを高めた(図表-12)。住宅販売が増勢を強めたことで、価格は上昇、在庫が減って新規着工は増えて、住宅市場のサイクルは上向き、景気にプラス効果をもたらし始めている。
ところが、都市別に見ると、深圳市では直近高値(2014年4月)を64.8%も上回るなどバブル懸念が高まる一方、温州市(浙江省)では直近高値(2011年8月)を22.4%も下回るなど二極化が鮮明となっている(図表-13)。直近高値を超えたのは70都市のうち12都市に過ぎず58都市では下値不安が燻る(図表-14)。中国政府は、バブル懸念が高まった都市では購入制限の強化や土地供給の積極化などでバブルを防止する一方、下値不安が残る都市では購入制限の緩和(頭金比率の引き下げなど)や税制優遇(不動産取得税、営業税)などで販売を支援している。即ち、地域事情に応じて、住宅販売の促進とバブルの抑制という正反対の政策を同時に実施している。
今後、インフレ率は原油価格上昇から緩やかな上昇基調と見られるが、バブルを警戒して利上げを急げば住宅販売が低迷する都市では景気が悪化しかねず、景気を重視して利上げを躊躇すればバブル懸念が高まりかねない。全国一律で同一方向に作用する金融政策は難しい舵取りが求められる。
今後、インフレ率は原油価格上昇から緩やかな上昇基調と見られるが、バブルを警戒して利上げを急げば住宅販売が低迷する都市では景気が悪化しかねず、景気を重視して利上げを躊躇すればバブル懸念が高まりかねない。全国一律で同一方向に作用する金融政策は難しい舵取りが求められる。
4.経済見通し
2016年の成長率は前年比6.6%増、2017年は同6.5%増と「緩やかな減速」を予想する。個人消費は、雇用指標に大きな落ち込みは見られず、中間所得層の充実というトレンドが引き続き追い風となることから比較的高い伸びを維持すると見ている。但し、景気減速で賃金上昇率が鈍るのに加えて、インフレ率の底打ちで実質所得が目減りすることから、実質消費の伸びは若干鈍化するだろう。一方、投資は、過剰設備・過剰債務を抱える製造業では伸びの鈍化が続くものの、消費主導への構造転換が追い風となる消費サービス関連や、新型都市化・環境対応で大きな潜在需要を抱えるインフラ関連は堅調、住宅市場のサイクルも上向いてきており、投資は小幅に回復すると見ている。また、消費者物価は原油価格上昇から緩やかな上昇基調を予想する(図表-15)。
(2016年05月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
このレポートの関連カテゴリ
三尾 幸吉郎
三尾 幸吉郎のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/10/01 | 図表でみる世界の出生率-出生率が高い国・地域と低い国・地域、それぞれにどんな特徴があるのか? | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
| 2025/05/23 | 図表でみる世界の外為レート-世界各地の通貨をランキングすると、日本円はプラザ合意を上回るほどの割安で、人民元はさらに安い | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
| 2025/04/15 | 図表でみる世界の民主主義-日本の民主主義指数は上昇も、世界平均は低下。世界ではいったい何が起きているのか? | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
| 2024/12/16 | 図表でみる世界のGDP-日本が置かれている現状と世界のトレンド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年11月06日
世の中は人間よりも生成AIに寛大なのか? -
2025年11月06日
働く人の飲酒量とリスク認識:適正化に気づくのはどのような人か -
2025年11月06日
Meta、ByteDanceのDSA違反の可能性-欧州委員会による暫定的見解 -
2025年11月06日
財政赤字のリスクシナリオ -
2025年11月06日
老後の住宅資産の利活用について考える
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【中国経済見通し~景気は一旦持ち直しも、成長率の鈍化傾向は続く】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
中国経済見通し~景気は一旦持ち直しも、成長率の鈍化傾向は続くのレポート Topへ














