2016年05月12日

【ASEAN経済】ASEAN6の製造業生産(5月号)~6カ国の3極構造に変化なし

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表1)ASEAN6 製造業生産指数の伸び率 ASEAN主要6カ国の16年3月の製造業生産指数の伸び率(前年同月比)はベトナムとタイ、シンガポールの3カ国が前月から上昇し、フィリピンとインドネシアが低下、マレーシアは横ばいとなった。総じてベトナムとフィリピンが高めの伸び、インドネシアとマレーシアが低めながらも底堅い推移、タイとシンガポールがゼロ近辺で一進一退といった3極構造に変化は見られなかった(図表1)。
(図表2)インドネシア製造業生産指数(業種別)の伸び率 インドネシアの16年1-3月期1の製造業生産指数は前年同月比4.1%増と、10-12月期の同4.8%増から低下し、2四半期ぶりの低水準となった(図表2)。
業種別に見ると、全23業種中12業種が前年同月比で上昇、11業種が低下した。1-3月期は主力の食品加工が同5.3%増(前月:同3.9%増)上昇した。またアパレルが同10.0%減(前月:同14.6%減)、基礎金属が同7.6%減(前月:同3.7%減)と上昇した。一方、化学製品が同10.8%減(前月:同6.0%減)、輸送用機器が同0.8%増(前月:同1.9%増)と低下した。また堅調な拡大が続いていたたばこは同1.1%減(前月:同5.5%増)と大きく低下し、10四半期ぶりのマイナスとなった。
(図表3)タイ製造業生産指数(業種別)の伸び率 タイの16年3月の製造業生産指数は前年同月比1.8%増と、主要産業の加速によって3ヵ月ぶりのプラスに転じた。しかし、総じて昨年から輸出不振と干ばつを背景とする内需の回復の遅れを受けて停滞局面が続いており、製造業の生産動向に大きな変化は見られない(図表3)。
業種別に見ると、全21業種中11業種が前年同月比で上昇、10業種が低下した。3月は自動車が同7.3%増(前月:同4.2%減)と、内外のピックアップトラックの需要拡大を受けて3ヵ月ぶりのプラスに転じたほか、機械・設備が同10.9%増(前月:同3.4%増)と、温暖な天候が続いてエアコンの生産が拡大した。このほか、化学製品が同12.9%増(前月:0.4%減)、ラジオ・テレビ・通信機器が同3.9%増(前月:1.6%減)とそれぞれ上昇した。一方、織物(同10.6%減)やアパレル(同29.9%減)、ハードディスクを含むオフィス用機器(同22.0%減)は海外需要の減速で大幅な減少が続いている。
3月の出荷指数は同2.4%増(前月:同3.9%増)、在庫指数は同3.3%増(前月:同3.9%増)と、それぞれ前月から低下したものの、プラスを維持した。また3月の設備稼働率は72.5%と、前月の65.6%から大きく上昇した。これは過去3年間で最も高い水準となった。
(図表5)シンガポール製造業生産指数(分野別)の伸び率 シンガポールの16年3月の製造業生産指数は前年同月比0.5%減と、中国の旧正月の影響で一時的にプラスに転じた16年1月から2ヵ月連続のマイナスとなったものの、前月の同3.8%減からマイナス幅が縮小した(図表5)。
分野別に見ると、主にバイオ医療は同23.1%増(前月:同6.0%増)と医薬品原料や医療機器需要の拡大で大幅に上昇したこと、また電子製品が同5.8%増(前月:同4.4%減)と半導体需要の拡大でプラスに転じたことが全体を押上げた。一方、化学は同4.9%減(前月:同0.7%増)と石油および石油化学工場のメンテナンスによる操業停止が生産減に繋がった。また輸送エンジニアリングは同23.1%減(前月:同14.6%減)、精密エンジニアリングは同7.7%減(前月:同7.5%減)とそれぞれ低下した。
(図表6)フィリピン工業生産量指数(業種別)の伸び率 フィリピンの16年3月の工業生産量指数は前年同月比7.8%増の129.0ポイントと、前月の同11.2%増からは低下したものの、高めの伸びを維持している(図表6)。
業種別に見ると、全20業種中12業種が前年同月比で上昇、8業種が低下した。主要産業では、石油製品が同30.8%減(前月:同11.3%減)と大幅な減少傾向が続く一方、電気機械が同13.1%増(前月:同16.2%増)、食品加工が同15.3%増(前月:同28.5%増)、機械・設備が同28.0%増(前月:同24.8%増)と高い伸びを維持している。食品加工は3ヵ月連続の二桁増であり、旺盛な消費需要や原油価格の低迷による生産コストの安さ、そしてエルニーニョ現象が農業生産に及ぼす悪影響が消えつつあることがプラスに働いたと見られる。また2月9日にスタートとした大統領選挙関連の支出も押上げ要因となり、紙製品(同15.7%増)やゴム・プラスチック製品(同14.5%増)などが高い伸びを記録した。
また3月の設備稼働率は83.4%となり、前月から0.1%上昇した。
(図表7)ベトナム鉱工業生産指数(業種別)の伸び率 ベトナムの16年3月の鉱工業生産指数は前年同月比6.2%増と、前月の同7.9%増からやや低下した(図表7)。昨年7月をピークに低下傾向が続いている。3ヵ月連続の二桁増となった。業種別に見ると、製造業が同8.8%増、電気ガス業が同12.2%増、水供給業が同9.5%増と好調を維持しているものの、鉱業が同4.6%減と4ヵ月連続のマイナスとなって全体の重石となっている。
製造業の内訳を見ると、食品(同5.3%増)、ゴム・プラスチック製品(同6.6%増)が製造業平均を下回る一方、主力のコンピュータ・電子・光学機器(同16.8%増)をはじめ繊維(同10.8%増)、アパレル(同10.1%増)など外国企業の投資が伸びている分野は高い伸びを示している。
また製造業の出荷指数は同11.2%増と2ヵ月ぶりの二桁増となる一方、在庫指数は同8.7%増と前月から小幅に低下した。
 
1 インドネシアの製造業生産の業種別指数は四半期毎に開示されるため、ここでは1-3月期の結果について記述する。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2016年05月12日「経済・金融フラッシュ」)

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