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3――分析結果
厚生年金加入者のうち収入高グループの正答率は、他の2つのグループより上回るが、それほど高いというわけでもない。複利計算と外国投資に関しては約5割の正答率であったが、リスク分散の正答率は約3割と低い。5問の平均正答率は38%であった。自助努力を前提とした老後の準備に必要な金融リテラシーのクイズとしては、最もリテラシーが高いこのグループでも、平均正答率が5割に達せず、合理的なライフプラン形成に関して大きな課題があると言えよう。
このうち、ドルコスト平均法に関しては、わからないとの回答が6~7割に達していた。確かに、カタカナの専門用語という感じもある。単に定期積立なら、言葉の意味は分かりやすいかもしれない。しかし、ドルコスト平均法には他の意味もあり、株価の変動に関わりなく、定期的に一定の金額を積み立てるのは、老後のための資産形成には重要な概念である。この概念を簡単に説明する日本語がない以上、もう少し、この言葉が普及しても良いのではないかと思われる。
将来、公的年金の実質的な削減が予想され、自分で老後のための資産形成を進める必要がある。そのための金融商品としては、株式・株式投信への投資、個人年金保険や生命保険などへの加入が考えられる。これらの金融資産に関しても、金融リテラシーが高いほど、保有比率・加入比率が高まる傾向があった。特に、厚生年金加入者に関しては収入低・高のどちらのグループにおいても、金融リテラシーが高いほど、これらの金融商品を使った準備が行われている。年金商品などに関しては、職場での環境が影響するという研究結果もあり、その影響等があるものと思われる。これに対して国民年金加入者では、個人年金や生命保険の加入率は金融リテラシーで差がなかった。
4――結論と課題
今回は、金融リテラシーが老後の準備や金融商品の保有に関連性があると想定して分析を行った。しかし、実は、逆の可能性もある。つまり、何らかの理由により、老後の準備や金融商品の保有に関心があると、金融リテラシーが高まるというルートである。近年では、このような相互関係を考慮して分析を行うことが主流であり、今後の課題としたい。
参考文献
Lusardi A. and O. Mitchell (2011) “Financial Literacy and Retirement Planning in the United States,” Journal of Pension Economics and Finance 10(4), pp.509-525
北村 智紀
研究・専門分野
(2016年03月03日「基礎研レター」)
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