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不動産景況見通しの悪化に際して長期投資家に求められる対応
増宮 守
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対して、年金基金などの長期投資家が保有する不動産ポートフォリオについては、取引価格の変動から受ける影響は限定的とみられる。年金基金などの多くは、私募ファンドや私募REIT、あるいは現物不動産といった非上場の形態で不動産投資を実施している。ポートフォリオを構成する各物件の価格は鑑定評価額であり、一般に、鑑定評価額の変動は取引価格動向に遅行し、その変動幅も小さい。実際、アベノミクスが開始した2012年末からの価格推移をみると、鑑定評価額の上昇は僅か6.3%に止まっていた(図表-3)。株価が大幅に上昇する中、不動産投資市場でも高額の取引が増加しており、鑑定評価額と実態との乖離は大きいと感じられる。その遅行性から、鑑定評価額は今後も上昇し続ける可能性が高く、市況悪化により取引価格が下落する場合も、鑑定評価額の下落は限定的に止まると予想される。
そもそも、不動産賃貸収益は一般的な株式の配当金などよりも大きく、ある程度の価格変動を賃貸収益で補完し得ることが不動産投資の特徴のひとつである。そのため、長期投資家にとってまず重要なことは、毎年の賃貸収益の維持、改善である。また、価格サイクルよりも、各物件の立地およびスペックに関する長期的な競争力あるいは需要動向の予測、さらには、それらに対する戦略が重要といえる。
物件売買の判断についても、ポートフォリオ全体のバランスや長期的な戦略に沿う物件か否かが前提となり、また、タイミングに関しても、長期的な投資判断の基準が重要といえる。価格サイクルの転換点の見極めは容易ではないがⅱ、基準が明確であれば、長期的にみた高値圏での売却判断ができ、また、新規取得についても、さらなる価格上昇に期待してサイクルのピークで取得するような不利益を回避できる。
2 増宮守 「不動産価格サイクルの先行的指標~ピーク感が強まる中、各指標の現状を確認~」 ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート、2015年8月28日
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(2016年03月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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