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2016年02月29日
■要旨
近年、国内においても不動産投資に精通した機関投資家を中心に、海外不動産への投資が増えつつある。その投資対象の多くは安定的な賃料を収益の源泉とした稼動不動産で、必然的に先進国が主な投資対象となっている。中でも米国不動産は、市場規模、取引流動性の高さなどから、投資先として検討されることが多いが、米国は投資対象地域が広く、不動産マーケットも一様ではない。本稿では、オフィスビルを中心に米国不動産の都市別データを概観するとともに、実際の投資手法と事例についても触れる。
■目次
1――米国主要都市オフィスの長期累積リターン
2――米国主要都市オフィスの市場規模、賃料水準
3――各都市間のオフィス・リターンの相関
4――オフィス以外の用途のリターン
5――投資家の地域・投資形態選定の事例
おわりに
近年、国内においても不動産投資に精通した機関投資家を中心に、海外不動産への投資が増えつつある。その投資対象の多くは安定的な賃料を収益の源泉とした稼動不動産で、必然的に先進国が主な投資対象となっている。中でも米国不動産は、市場規模、取引流動性の高さなどから、投資先として検討されることが多いが、米国は投資対象地域が広く、不動産マーケットも一様ではない。本稿では、オフィスビルを中心に米国不動産の都市別データを概観するとともに、実際の投資手法と事例についても触れる。
■目次
1――米国主要都市オフィスの長期累積リターン
2――米国主要都市オフィスの市場規模、賃料水準
3――各都市間のオフィス・リターンの相関
4――オフィス以外の用途のリターン
5――投資家の地域・投資形態選定の事例
おわりに
1――米国主要都市オフィスの長期累積リターン
2007、2008年の金融危機は、金融市場、経済への影響が広範囲に及び、米国の各地域で投資用不動産のリターンを押し下げた。このため、米国オフィスの累積リターンの推移には各都市に共通の傾向が見て取れるが、低迷の度合と回復状況は、都市ごとに異なっている(図表2)。米国全体の数値と比較すると、ニューヨーク・ボストンは同程度の傾きで上昇しているのに対して、サンフランシスコとロサンゼルスはより急勾配で上昇、ワシントンDCは2011年頃から米国全体より上昇が緩やかになっている。エネルギー産業への依存度の高いヒューストンは、下落幅が他都市より小さかったが、昨今の原油価格低迷を受けて、いち早く上昇局面からやや下降に転じている。その他の都市は概ね米国全体より緩やかな回復過程を辿っているが、マイアミについては、2014年の後半から急回復している。なお、これらの都市のみが現在のところ、MSCIの米国実物不動産指数「IPD USA Quarterly Property Digest」において、「都市レベル」でリターン等が算出される対象となっている(後述のようにオフィス以外にも、商業、物流、住宅の指数がある)。同指数は、実際に投資対象となっている物件の収益データを集めて作成されることから、これらの都市の不動産は、機関投資家の米国における投資対象として一定のシェアがあるといえる。
1 不動産のトータル・リターンは投資額に対する賃料収益から計算されるインカム・リターンと価値増減から計算されるキャピタル・リターンで構成される。本稿では時間加重収益率として計算されるトータル・リターンを「リターン」と表記する。
2――米国主要都市オフィスの市場規模、賃料水準
米国主要都市のオフィス市場規模を、貸床面積の総量で見ると図表3左のようになる(参考までに東京、大阪、名古屋も順位に含めた2)。総貸床面積が大きくても賃料水準が低い場合には経済的な規模としては小さくなることから、総賃貸面積に募集賃料単価を乗じた経済的な賃貸市場規模も示した(図表3右)。いずれもニューヨークが最も規模が大きく、次いでワシントンDC、シカゴ、ロサンゼルスまでは同様であるが、それより規模が小さくなると、総貸床面積では、ヒューストン、ボストン、ダラスと続くのに対し、経済的な市場規模では、ボストン、サンフランシスコがヒューストンを上回る。また、貸床面積16位のサンフランシスコが6位まで浮上するなど、面積規模は小さくても経済的にインパクトの大きい賃貸マーケットとなっている都市の事例も確認できる。
賃料水準のみで見ると(図表4)、ニューヨークに次ぐのが、サンフランシスコとその周辺のサンフランシスコ・ペニンシュラ、シリコンバレーで、それにワシントンDC、ロサンゼルスと続く。7位にはマイアミが入っており、床面積による規模は小さいながら、1棟あたりの収益は比較的大きいマーケットであることが分かる。
賃料水準のみで見ると(図表4)、ニューヨークに次ぐのが、サンフランシスコとその周辺のサンフランシスコ・ペニンシュラ、シリコンバレーで、それにワシントンDC、ロサンゼルスと続く。7位にはマイアミが入っており、床面積による規模は小さいながら、1棟あたりの収益は比較的大きいマーケットであることが分かる。
2 三鬼商事の各ビジネス地区の総賃貸面積を使用。対象に含めるビルのグレード、貸床面積の定義、共用部分の取り扱いは、各国・地域により異なることもあるため、正確な数値の比較とはいえないが、規模の目安として記載した。
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加藤 えり子
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