- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- CSR/CSVとして見た健康配慮経営~健康配慮の社員食堂と一般向け食堂開業のT社を事例として~
従来、日本では内部ステークホルダーたる従業員の価値を高める企業の取組(労働CSR)として、長時間労働の抑制、女性活躍を含む人材ダイバーシティ、教育訓練、労働現場の安全が主たる論点であった。これらに加え、最近では、うつ病休業者の増加を踏まえたメンタルヘルス対策(セクハラ・パワハラを含む)も、CSR課題と位置付けられている。また、労働における人権・差別問題や社会的格差の拡大を背景に、同一価値労働・同一賃金も議論されるようになってきた。
さてここで、従業員の健康増進に焦点を絞ると、社員食堂のレシピを改善し話題となっているのが、健康計量器の製造・販売を手掛けるタニタである。同社では、生活習慣病の予備軍であるメタボリックシンドロームを企業経営の新たなリスク要因と認識し、2009年から「健康プログラム」を導入している。そのめざすところは、社員のメタボゼロの達成である。
実は、このプログラムのなかに社員食堂での食事・食育サポートが位置付けられている。健康ビジネスを展開する同社にとって、社員の健康管理は重要な経営課題であり、社員の生活を豊かにするだけでなく、企業のポテンシャルも高めるものである。2012年にはビジネス中心街の東京丸の内へ進出し、一般のサラリーマンやOL向けの食堂を開業した(メニューは社員食堂と同じ)。
労働コンプライアンスは当然ながら、自社事業による従業員へのネガティブ・インパクトの改善を図ることは最低限のCSRであるが、従業員にポジティブなインパクトをもたらすこともまたCSRである。つまり、従業員の健康に配慮し増進することは、もはや優れて労働CSRである。他方、自社のノウハウや強みを活かした製品・サービスにより社会的課題の解決を図るビジネスはCSV(共有価値の創造)と呼ばれるが、健康増進ビジネスはその範疇に入る。
このように見てくると、タニタの社員食堂と一般向け食堂は、労働におけるCSRとCSVに他ならず、いずれも本業で社会的課題の解決をめざす、新しいビジネスモデルを構築したということができる。
(注) 「CSR/CSV」の表記は、オルタナ編集長の森摂氏の提唱に基づく。
川村 雅彦
研究・専門分野
(2016年02月15日「研究員の眼」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【CSR/CSVとして見た健康配慮経営~健康配慮の社員食堂と一般向け食堂開業のT社を事例として~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
CSR/CSVとして見た健康配慮経営~健康配慮の社員食堂と一般向け食堂開業のT社を事例として~のレポート Topへ