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年金改革ウォッチ 2016年1月号~ポイント解説:次期年金改革の方向性と課題
保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫
1 ――― 先月までの動き
○社会保障審議会 年金部会
12月8日(第31回)テーマ 年金制度に関する状況報告、年金積立金の管理運用に係る法人 ほか
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106438.html (配布資料)
12月25日(第32回)テーマ 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000108144.html (配布資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
12月8日(第19回) テーマ 日本年金機構の業務改善に向けての審議
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106418.html (配布資料)
2 ――― ポイント解説:次期年金改革の方向性と課題
1│次期年金改革の方向性:年金財政の安定性改善と厚生年金の適用拡大は、前進。
次期年金改革に向けては、2014年6月に年金財政の見通し等が公表され、それを受けて2015年1月に年金部会が議論の整理を公表していましたが、昨年は法案が国会提出されませんでした。12月8日の同部会では、これまで政府与党間で調整してきた内容が報告され、法案提出に向けてさらに調整していく方針が示されました。
制度の見直しが予定されている項目をみると、年金部会での議論は少なかったものの「賃金スライドの徹底」1が盛り込まれており、年金財政の安定性改善が期待されます。また厚生年金の適用拡大は、2016年10月から正規従業員2501人以上の企業に勤める一部の短時間労働者に実施することが既に法改正されています。当初はこれを前倒しする意見もありましたが前倒しは見送られ、2016年10月から500人以下の企業でも任意拡大できるよう、政府与党間で調整が行われています。
見直しが予定されている項目がある一方、低~中所得者への影響が大きい基礎年金の水準低下問題への対策は、見送られています。この背景には、水準低下を抑制すると国庫負担(補助)が想定より増加して国家財政が悪化する、という財務省等の指摘があります。しかし、2014年の見通しでは、現在の制度へ改正された2004年当時の見通しと比べて、国庫負担が大きく減る見込みです(図表2)。これを踏まえ、「増加」ではなく「減らしすぎからの改善」という視点での議論も、必要でしょう。
また、基礎年金の水準低下防止に向けては、60~64歳への国民年金適用などの対処療法だけでなく、この問題の原因である年金財政のいびつな構造への対処3が不可欠です。将来世代に問題を先送りしないよう、根本的な対策が期待されます。
1 詳細は拙稿「特例水準解消後の年金スライドの課題」『ニッセイ基礎研REPORT』2011年12月号、を参照。
2 人厳密には、現在の基準で厚生年金が適用される従業員。改正後の基準で適用される従業員ではない点に、要留意。
3 具体的には、(1)加入者全員に共通の基礎年金の給付水準が、自営業などが関係する国民年金財政だけに左右される、(2)基礎年金の給付水準が低下すると厚生年金の給付削減が緩和されるため、低~中所得勤労者への影響が大きい、などの問題。詳細は拙稿「年金数理部会の指摘と今後の年金改革への影響」『年金ストラテジー』2011年6月号、同「年金改革ウォッチ 2014年11月号~ポイント解説:給付削減の1・2階同時終了」を参照。
03-3512-1859
(2016年01月05日「基礎研レター」)
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