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- 日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る
2015年12月29日
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2――日本企業の海外事業展開の現状と経営課題
1|日本企業の海外事業展開の現状
〔日本企業の半数近くが海外事業を行う〕
ここで日本企業の海外事業展開の現状について、「ニッセイ景況アンケート6」の結果からみてみよう(図表3)。海外での生産・販売や調達など海外事業の実施について、全産業では「既に行っている」が4割弱(36.9%)を占める。これに「現在検討している」(2.2%)と「将来は可能性がある」(6.9%)を加えると、半数近く(46.0%)の企業が海外事業を展開していることになる。
これを業種別でみると、製造業では6割を超す(65.9%)が、非製造業では3割強(34.4%)と少ない。図示していないが、そのなかで特に一般・精密機械、電気機械、輸送用機械などの加工型製造業は7割強と多く、非製造業では卸売が約5割と比較的多い。企業規模別では、大企業は7割を超え(72.1%)、中堅企業が約6割(59.1%)、中小企業3割強(34.6%)と、規模が大きいほど海外事業展開の割合は高い。
〔日本企業の半数近くが海外事業を行う〕
ここで日本企業の海外事業展開の現状について、「ニッセイ景況アンケート6」の結果からみてみよう(図表3)。海外での生産・販売や調達など海外事業の実施について、全産業では「既に行っている」が4割弱(36.9%)を占める。これに「現在検討している」(2.2%)と「将来は可能性がある」(6.9%)を加えると、半数近く(46.0%)の企業が海外事業を展開していることになる。
これを業種別でみると、製造業では6割を超す(65.9%)が、非製造業では3割強(34.4%)と少ない。図示していないが、そのなかで特に一般・精密機械、電気機械、輸送用機械などの加工型製造業は7割強と多く、非製造業では卸売が約5割と比較的多い。企業規模別では、大企業は7割を超え(72.1%)、中堅企業が約6割(59.1%)、中小企業3割強(34.6%)と、規模が大きいほど海外事業展開の割合は高い。
6 実施主体:日本生命、ニッセイ・リース(調査協力:ニッセイ基礎研究所)、調査時期:2015年8月、回答企業数:3,937社(全国)、 企業属性:製造業37%・非製造業60%、大企業13%・中堅企業26%・中小企業61%
〔中国を中心にアジアで事業展開〕
次に、日本企業が海外事業(将来の可能性を含む)を行っている国をみると、多くはアジアである(図表4)。そのなかで中国が最も多く、7割近い(67.1%)企業が事業を行う。続けてタイ約4割、インドネシア3割強、シンガポール3割弱、インド約2割、さらにその他のアジア・オセアニアで5割を超す(54.1%)。アメリカ(36.1%)と欧州・ロシア(27.0%)も3割前後と少なくない。
これを業種別にみると、全ての業種において半数を超える企業が中国に進出していることが特徴的であり、特に製造業の繊維・衣服、化学、一般・精密機械、電気機械で約8割、非製造業の卸売で7割以上である。
次に、日本企業が海外事業(将来の可能性を含む)を行っている国をみると、多くはアジアである(図表4)。そのなかで中国が最も多く、7割近い(67.1%)企業が事業を行う。続けてタイ約4割、インドネシア3割強、シンガポール3割弱、インド約2割、さらにその他のアジア・オセアニアで5割を超す(54.1%)。アメリカ(36.1%)と欧州・ロシア(27.0%)も3割前後と少なくない。
これを業種別にみると、全ての業種において半数を超える企業が中国に進出していることが特徴的であり、特に製造業の繊維・衣服、化学、一般・精密機械、電気機械で約8割、非製造業の卸売で7割以上である。
2|海外事業における経営課題
〔経営課題は “経営資源”の確保、“競争力”の強化、“ESG”への対応〕
このように日本企業の海外事業展開が進むなかで、海外事業における重要な経営課題は、上位から列挙すると、現地の「人材確保」(48.6%)、「海外・現地企業との競合」(39.5%)、「品質管理」(26.4%)、「原材料や部品の調達」(25.2%)、そして「法令遵守を含む企業統治」(20.8%)、「労働問題」(10.8%)である。これらは海外事業の基本課題として、“経営資源”、“競争力”、“ESG”に分けて整理することができる(図表5)。
ESGについては、全体には必ずしもポイントは高くないが、法令順守や企業統治、労働問題をはじめ取組事項が多く、リスクマネジメントとして位置づけられているものと考えられる。続けて、ESG課題を列挙すると、環境規制(汚染や廃棄物)、消費者課題、事業撤退や工場閉鎖、人権問題(人権意識や差別撤廃)などがある。なお、日本企業には人権問題は労働問題との関連で理解されることが多いため、ポイントが少ないと考えられる。
海外事業における重要な経営課題を製造業と非製造業でみると、図表6に示すように、人材確保、企業統治、労働問題では差異は少なく、企業間競合、品質管理、資材調達については製造業が比較的多い。特徴的な業種をあげると、輸送用機械の人材確保や労働問題、電気機械の企業間競合、食品の資材調達、鉱業・石油や運輸・倉庫の企業統治などである。
企業規模別にみても、海外事業における経営課題の全体傾向は変わらないが、大企業では企業間競合と企業統治がより重要な経営課題と認識されている。なお、品質管理については、企業規模が小さいほど課題意識が強くなる(図表6)。
〔経営課題は “経営資源”の確保、“競争力”の強化、“ESG”への対応〕
このように日本企業の海外事業展開が進むなかで、海外事業における重要な経営課題は、上位から列挙すると、現地の「人材確保」(48.6%)、「海外・現地企業との競合」(39.5%)、「品質管理」(26.4%)、「原材料や部品の調達」(25.2%)、そして「法令遵守を含む企業統治」(20.8%)、「労働問題」(10.8%)である。これらは海外事業の基本課題として、“経営資源”、“競争力”、“ESG”に分けて整理することができる(図表5)。
ESGについては、全体には必ずしもポイントは高くないが、法令順守や企業統治、労働問題をはじめ取組事項が多く、リスクマネジメントとして位置づけられているものと考えられる。続けて、ESG課題を列挙すると、環境規制(汚染や廃棄物)、消費者課題、事業撤退や工場閉鎖、人権問題(人権意識や差別撤廃)などがある。なお、日本企業には人権問題は労働問題との関連で理解されることが多いため、ポイントが少ないと考えられる。
海外事業における重要な経営課題を製造業と非製造業でみると、図表6に示すように、人材確保、企業統治、労働問題では差異は少なく、企業間競合、品質管理、資材調達については製造業が比較的多い。特徴的な業種をあげると、輸送用機械の人材確保や労働問題、電気機械の企業間競合、食品の資材調達、鉱業・石油や運輸・倉庫の企業統治などである。
企業規模別にみても、海外事業における経営課題の全体傾向は変わらないが、大企業では企業間競合と企業統治がより重要な経営課題と認識されている。なお、品質管理については、企業規模が小さいほど課題意識が強くなる(図表6)。
(2015年12月29日「基礎研レポート」)
川村 雅彦
川村 雅彦のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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