2015年12月29日

日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る

  川村 雅彦

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3――長期的な企業価値創造に向けた、ESGの重要性認識

1|半数がESGの重要性を認識するも、判断しかねる企業も少なくない

さらに現時点における日本企業のESGの重要度に対する認識について、「ニッセイ景況アンケート」の結果からみてみよう。まず、「長期的な企業価値創造のためには、財務要素(売上高、利益あるいは株価やROEなど)だけでなく、今後は非財務要素(ESG要素)も重要となるか?」という質問に対しては、どのように回答しているのであろうか(図表7)。

〔全体では5割が今後ESGは重要とするも、4割は判断に迷う
全産業でみると、ESGは「かなり重要となる」が14.5%、「ある程度重要となる」は35.2%であり、合わせて約5割(49.7%)を占める。これに対して、ESGに対する否定的な「それほど重要とならない」(5.1%)と「ほとんど関係ない」(4.1%)は、合わせても1割に満たない(9.2%)。このことからESGの重要性に対する認識は決して低くないと言える。

ただし、「よくわからない」(24.7%)や「無回答」(16.2%)も少なくないことに留意すべきである。合わせて約4割(40.9%)もあり、現状では多くの企業がESGを判断しかねている様子がうかがえる。

〔製造業のESG認識が非製造業よりも高い〕
ESGの重要性認識を製造業と非製造業に分けてみると、「かなり重要となる」と「ある程度重要となる」を合計すると、製造業の6割弱(15.5%+40.7%⇒56.2%)に対して、非製造業は5割弱(14.1%+32.7%⇒46.8%)で約10ポイント低い。「よくわからない」と「無回答」は逆の傾向を示す。

〔大企業と中小企業のESG認識の差は大きい〕
また企業規模別にみると、規模が大きいほどESGの重要度認識は高くなる。「かなり重要となる」と「ある程度重要となる」を合計して、大企業の約7割(23.1%+46.2%⇒69.3%)に対して、中堅企業が約6割(17.3%+41.6%⇒58.9%)、中小企業は約4割(11.4%+30.2%⇒41.6%)と低くなる。逆に、「よくわからない」と「無回答」は大幅に増える。
図表7: 長期的な企業価値創造に向けた、今後のESGの重要性認識 (全体)
2海外展開や海外投資家とのかかわりを反映するESGの重要性認識

それでは、前述した今後のESGの重要性認識に差異をもたらす要因はどのようなものであろうか。そこで、要因として「海外事業の有無」「顧客のESG監査」「外国人持株比率」「投資家からのESG照会」との関係性を調べてみた。その結果、図表8の実線矢印で示すように、4つの〔仮説〕を導き出すことができる。

海外事業を行っていれば、ESGの重要性認識は高い。
顧客のESG監査があれば、ESGの重要性認識は高い。
外国人持株比率が高いほど、ESGの重要性認識は高くなる。
投資家からのESG照会があれば、ESGの重要性認識は高くなる。

上記の仮説を補完する逆仮説は、以下の通りである(図表8の破線矢印)。

・海外事業を行っていない場合、また顧客のESG監査がない場合、ESGの重要性の判断に迷う。
・外国人株主がいない場合、また投資家のESG照会がない場合、ESGの重要性の判断に迷う。
図表8: ESGの重要性認識と海外・外部要因の関係
3ESGの重要性認識を促進するもの

〔ESG重要度の業種別ランキング〕
ここでESGの重要性認識の促進要因を探るために、業種別にもう少し掘り下げてみたい。図表9は20業種のESGの重要性認識について、アンケートデータを基に独自のウエイト付けにより数値化7したものである(本稿では「ESG重要度」と呼ぶことにする)。

全体に、ESG重要度は前述のように製造業では素材型よりも加工型の方が高く、製造業は非製造業より高い。しかし、個別業種でみると比較的大きな差異がある。ESG重要度は、最上位の輸送用機械(42.1%)から最下位の出版・印刷(23.0%)まで、ほぼ2倍の開きがある。

ESG重要度が高いのは、素材型製造業では化学(40.1%)や鉱業・石油(39.9%)、非鉄金属(37.0%)、加工製造業では輸送用機械(42.1%)、電気機械(41.7%)に続いて、一般・精密機械(37.8%)が高い。非製造業では通信(40.0%)や電気・ガス(38.6%)が高い。逆に、ESG重要度が低いのは、製造業では繊維・衣服(27.8%)と出版・印刷(23.0%)、非製造業ではサービス(26.7%)である。

前節の〔仮説〕を踏まえ、このような業種別のESG重要度の違いの要因を探ってみよう。
図表9: 長期的な企業価値創造に向けた、今後のESGの重要性認識 (ESG重要度)
 
7 「ESG重要度(%)」=「ESGはかなり重要となる」×1.0+「ESGはある程度重要となる」×0.5
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