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- 企業物価指数(2015年11月)~円安の進行で物価押し下げ圧力が和らぐ
2015年12月10日
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1.原油安による物価押し下げ圧力が和らぐ

国内企業物価注1の前月比寄与度をみると、為替・海外市況連動型(前月比▲0.1%)、鉄鋼・建材関連(同▲0.0%)、素材(同▲0.0%)が物価下落に寄与した。もっとも、為替・海外市況連動型のマイナス寄与は10月の前月比▲0.3%から同▲0.1%へ縮小している。世界経済の減速を受けて、非鉄金属が下落幅を拡大(10月:▲1.1%⇒▲2.3%)する一方で、ウェイトの高い石油・石炭製品が前月比▲0.2%(10月:同▲4.0%)と前月から下落幅を縮小したことが影響したようだ。鉄鋼・建材関連は、アジア需給の悪化を背景とした鉄鋼(前月比▲0.3%)やスクラップ(同▲2.8%)の下落などから弱含んでいる。一方、その他については天候不順を背景とした農林水産物の価格高騰が落ち着いたこともあり、前月比での伸び率は10月の1.5%から0.8%へ縮小している。
注1 1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属
5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物
2.輸入物価は大幅な下落が続く
11月の輸入物価(円ベース)は前年比▲17.4%(10月:同▲15.6%)と前月から下落幅が拡大した。前月比では、契約ベースが▲0.6%(10月:▲1.1%)とマイナスが続く一方で、円ベースは0.7%(10月:▲1.3%)と5ヵ月ぶりにプラスに転じている。
輸入物価(円ベース)注2の前月比寄与度をみてみると、石油・石炭・液化天然ガス(前月比0.2%)、食料品・飼料(同0.1%)、機械器具(同0.3%)、その他(同0.2%)が物価を押し上げた。
原油価格下落を背景にマイナス寄与が続いていた石油・同製品がプラス寄与に転じたため(10月:前月比寄与度▲2.3%⇒11月:同1.4%)、石油・石炭・天然ガスの伸び率は前月比0.9%と5ヵ月ぶりにプラスに転じている。もっとも、契約通貨ベースでは前月比▲1.0%と下落しており、円安が進展したことが影響した(10月:119.99円/ドル⇒11月:122.58円/ドル、変化率:2.2%)。食料品・飼料についても、円ベースでは前月比0.1%と上昇している一方で、契約ベース(▲1.1%)では下落するなど輸入物価(円ベース)の上昇は円安の進展によるところが大きかった。12月に入ってから、原油価格(ドバイ)は1バレル=30ドル台半ばで推移しており、今後原油安による輸入物価の下落基調が強まるだろう。
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品
輸入物価(円ベース)注2の前月比寄与度をみてみると、石油・石炭・液化天然ガス(前月比0.2%)、食料品・飼料(同0.1%)、機械器具(同0.3%)、その他(同0.2%)が物価を押し上げた。
原油価格下落を背景にマイナス寄与が続いていた石油・同製品がプラス寄与に転じたため(10月:前月比寄与度▲2.3%⇒11月:同1.4%)、石油・石炭・天然ガスの伸び率は前月比0.9%と5ヵ月ぶりにプラスに転じている。もっとも、契約通貨ベースでは前月比▲1.0%と下落しており、円安が進展したことが影響した(10月:119.99円/ドル⇒11月:122.58円/ドル、変化率:2.2%)。食料品・飼料についても、円ベースでは前月比0.1%と上昇している一方で、契約ベース(▲1.1%)では下落するなど輸入物価(円ベース)の上昇は円安の進展によるところが大きかった。12月に入ってから、原油価格(ドバイ)は1バレル=30ドル台半ばで推移しており、今後原油安による輸入物価の下落基調が強まるだろう。
注2 1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品
3.最終財は振れを伴いつつも緩やかな上昇へ
10月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲31.4%(10月:同▲30.6%)、中間材が前年比▲5.9%(10月:同▲5.7%)、最終財が前年比▲0.5%(10月:同0.0%)となった。
原油価格の下落を背景に素原材料、中間財がマイナス圏で推移しているなか、最終財は一進一退の動きが続いている。最終財は価格転嫁の動きが強まったこともあり、2015年2月以降前年比でプラスとなっていたが、原油をはじめとした国際商品市況下落の影響から夏場以降ゼロ近傍の動きが続いている。15年度末にかけて、前年比でみた原油価格の下落幅は緩やかに縮小することが見込まれ、最終財は明確な上昇基調に転じることが予想される。最終財のうち、消費財が緩やかな上昇を伴えば、原油価格の下落を主因に前年比マイナスとなっている消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)は遅行する形で再びプラスに転じるだろう。
原油価格の下落を背景に素原材料、中間財がマイナス圏で推移しているなか、最終財は一進一退の動きが続いている。最終財は価格転嫁の動きが強まったこともあり、2015年2月以降前年比でプラスとなっていたが、原油をはじめとした国際商品市況下落の影響から夏場以降ゼロ近傍の動きが続いている。15年度末にかけて、前年比でみた原油価格の下落幅は緩やかに縮小することが見込まれ、最終財は明確な上昇基調に転じることが予想される。最終財のうち、消費財が緩やかな上昇を伴えば、原油価格の下落を主因に前年比マイナスとなっている消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)は遅行する形で再びプラスに転じるだろう。
4.国内企業物価は緩やかながら下落幅を縮小
中国の景気減速などを受けて下落基調を続けている国際商品市況や原油価格は、今後緩やかな持ち直しに向かうだろう。一方、為替については米国が利上げに向かうなか、日本銀行による量的・質的金融緩和が継続されるため、緩やかな円安が続くとみている。今後、円安に伴うコスト増を価格転嫁する動きが続くことや原油価格が持ち直すことを前提として、国内企業物価は15年度末にかけて緩やかながら下落幅を縮小することが予想される。ただし、中国の景気減速や米利上げに伴う新興国の景気減速が鮮明となれば、需要低迷による国際商品市況の悪化を受け企業物価は下落基調を強める恐れがある。
(2015年12月10日「経済・金融フラッシュ」)
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