- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 土地・住宅 >
- 住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向
住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
消費税増税の影響への対応に関する設問では(図表1-3-6)、2013年全体の「今後のアップを考慮して取得を早めた」の割合は75.2%に及び、2014年も66.6%と高くなっている。
40歳未満では、2013年が76.5%、2014年が69.5%と、全体をさらに上回っており、ここでも駆け込み需要の大きさがわかる。
経過措置により、2013年9月30日までに請負契約が成立していれば消費税率5%が適用された。したがって、9月の契約までは8%への引き上げに対する駆け込み取得が考えられ、10月以降の成約サンプルには、10%への引き上げを見越した取得が含まれているものと考えられる。
また、全体の「住宅面積を縮小した」は、2013年の9.0%から2014年の13.8%に、「希望する住宅のグレードを下げた」の割合が、2013年の6.5%から2014年には9.3%と、前年より高くなっており、消費税増税が、住宅の質に影響を与えた状況も読み取れる。
40歳未満では、2014年の「希望する住宅のグレードを下げた」の割合は8.3%と、全体より低いものの、「住宅面積を縮小した」の割合が14.6%と全体より高くなっている。(図表1-3-6)
消費税率の引き上げが駆け込み取得を促し、質を低下させるということが、年収が低い低年齢層に、より強かったことが分かる。

消費税引き上げの質への影響が、実際にどの程度のものか平均延べ床面積の推移で見てみたい。全体では、税率引き上げ前の2013年の131.3㎡から、引き上げが行われた2014年は129.2㎡に低下している。ただしその水準は税率引き上げが決定した2012年と同程度である。
世帯人員一人当たり床面積でみても、2013年の37.5㎡/人から、2014年が37.2㎡/人と低下しているが、2012年の36.6㎡に比べるとさほどの落ち込みではない。(図表1-3-7)
これを、年代別に見ると、やや異なる傾向がある。延べ床面積は、おおむね50代までは年齢が上がるほど広くなることに気づく。これは、資金力の違いによるものと考えられる。
特に2012年以降の推移をみると、平均延べ床面積が最も小さい20代は、2012年度から直線的に低下しており、30代は20代よりゆるやかではあるが同様に低下している。これに対し、40代は2012年度の133.2㎡から2013年度は134.1㎡とやや上昇し、2014年は反転して、2012年を下回る131.5㎡となっている。一方50代は、2012年の138.3㎡から、2013年が142.4㎡、2014年が144.3㎡と直線的に上昇している。(図表1-3-8)
このように、2013年に全体の平均延べ床面積が上昇したのは、主に高年齢層が平均延べ床面積を拡大させたことによる。2014年が2012年ほど落ち込んでいないのも、50代、70代以上が拡大させたことに起因する。
資金力のある高年齢層は、建築費の高騰、消費税増税という状況下においても延べ床面積を縮小させることなく、そうではない低年齢層は延べ床面積を縮小させることによって、資金的負担を調整していたと読み取れる。
(2015年12月04日「基礎研レポート」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
塩澤 誠一郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/09 | 「計画修繕」は、安定的な入居確保に必須の経営手法~民間賃貸住宅における計画修繕の普及に向けて~ | 塩澤 誠一郎 | 基礎研レポート |
2024/08/13 | 空き家の管理、どうする?~空き家の管理を委託する際、意識すべき3つのこと~ | 塩澤 誠一郎 | 研究員の眼 |
2024/08/07 | 空き家の管理から活用へ~「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」の策定を機に、空き家を管理から活用へと導く不動産業者の増加に期待~ | 塩澤 誠一郎 | 研究員の眼 |
2024/06/24 | 賃貸住宅の断熱・遮音改修のススメ~家主にとっても入居者にとっても、地球温暖化対策にとっても意義のある賃貸住宅経営を目指して~ | 塩澤 誠一郎 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向のレポート Topへ