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住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
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3――消費税の影響
消費税の増税は、住宅取得に大きく影響を与える要因だと考えられてきた。先に見たように建築費が高騰していた状況下での消費税の5%から8%への引き上げが、実際にどのような影響を与えたのかを調査結果から見てみたい。
まず、この間の消費税率引き上げの動きを図表1-3-1で確認しておきたい。2012年6月26日に当時の民主党野田内閣において、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」(税制抜本改革法)が国会に提出され、8月10日に成立した。これにより、2014年4月1日より5%から8%へ、2015年10月1日より10%への引き上げが決定され、次の安倍内閣の下で、2014年4月1日より8%への引き上げが実施された。
その後、2014年11月に安倍首相が、経済状況等を総合的に勘案した結果として、消費税率10%への引き上げを、2017年4月1日に延長すると表明し、その後の解散総選挙を経て、2015年3月31日の平成27年度税制改正で、引き上げ時期の延長を決定した。
消費税率の引き上げに対する対策として、住宅税制では、平成25年度税制改正で、「住宅ローン減税」を拡充し、適用期限を2017年12月まで延長した。また、2013年10月1日の閣議決定で、住宅取得に係る給付措置を行うことが明記され、2014年4月1日より「すまい給付金」として実施された。これらは平成27年度税制改正において、消費税率10%への引き上げの延長に対応して、適用期間が2019年6月まで延長された。(図表1-3-1)
したがって、2013年度調査では引き上げを前にした駆け込み取得の状況、2014年度はその反動と2015年度以降の10%への引き上げ前の取得の状況が読み取れると予想される。

まず、建築動機について見ると、全体の「消費税が上がりそうだから」の割合が2012に20.9%、2013年に30.8%と、急激に高くなっている。
2013年は、「従前住宅の古さ」、「良好な住環境への住み替え」、「子どもの出生・成長・独立」などをしのぎ、例年最も割合の高い「従前住宅の狭さ」に続いて高くなっている。消費税率8%への引き上げは、駆け込みでの取得を大きく促したことがわかる。(図表1-3-2)
「消費税が上がりそうだから」の割合を全体と40歳未満で比較すると、常に40歳未満の割合が高くなっており、2012年、2013年では、その開きが約5~6ポイントと大きくなっている。消費税率の引き上げが、特に低年齢層に駆け込みを促す結果となっていたことがわかる。
一方、「住宅ローン減税があるから」という動機は、消費税とは反比例した動きとなっており、2010年以降の低下傾向は、拡充が決定された2013年まで続いてきた。この時点では、消費税率引き上げの圧力に比べ、住宅ローン減税の拡充効果は限定的であったことが読み取れる。ただし、40歳未満の割合は常に全体より高く、低年齢層への効果が比較的高かったと言える。(図表1-3-3)
消費税の資金計画への影響を見ると、「資金計画にかなり圧迫感があった」、「資金計画に少し圧迫感があった」の合計である「圧迫感あり」の割合は2007年以降年々低下し続け、2012年にはついに半数を下回った。しかし、2013年に反転し、消費税率が引き上げられた2014年は、全体で75.5%となっている。40歳未満の割合はさらに高く8割を超えており、やはり低年齢層の資金計画への影響がより高いことがわかる。(図表1-3-4)
この圧迫感は、ある程度建築費と相関しており、2008年以降建築費が低下するとともに、圧迫感ありの割合も低くなっている。したがって2013年の増加は、建築費の高騰による影響が高いと思われる。2014年は建築費の高騰に加え、実際に消費税率が8%に引き上げられたことで、取得層により高い圧迫感を与えたものと考えられる。(図表1-3-5)
(2015年12月04日「基礎研レポート」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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