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- 【インドGDP】7-9月期は前年同期比+7.4%~3期連続の投資加速で景気回復
2015年12月01日
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1. 7-9月期は前年同期比+7.4%
2015年7-9月期の実質GDP成長率1は前年同期比+7.4%の上昇と、前期(同+7.0%)と市場予想2(同+7.3%)を上回る結果となった。
需要項目別に見ると、政府消費と総固定資本形成が成長率上昇の主因となったことが分かる(図表1)。内需については、個人消費が前年同期比+6.8%(前期:同+7.4%)とやや低下した一方、政府消費が同+5.2%(前期:同+1.2%)、総固定資本形成が同+6.8%(前期:+4.9%)とそれぞれ上昇した。輸出入については、輸出が同▲4.7%(前期:▲6.5%)、輸入が同▲2.8%(前期:同▲5.4%)となり、それぞれマイナス幅が縮小した。その結果、純輸出の成長率への寄与度は▲0.4%ポイントと、前期の▲0.2%ポイントからマイナス幅が拡大した。
実質GVA成長率は前年同期比+7.4%の上昇と、前期(同+7.1%)を上回り、市場予想2(同+7.4%)どおりの結果となった。
産業別に見ると、第三次産業が実質GVA成長率を押し上げたことが分かる(図表2)。成長を支える第三次産業は、小売・ホテル・運輸・通信業が同+10.6%(前期:同+12.8%)とやや低下したものの、金融・不動産・専門サービス業が同+9.7%(前期:同+8.9%)、行政・国防が同+4.7%(前期:同+2.7%)とそれぞれ上昇した。第二次産業は、製造業が同+9.3%(前期:同+7.2%)と上昇した一方、建設業が同+2.6%(前期:同+6.9%)、鉱業が同+3.2%(前期:同+4.0%)と低下した。また第一次産業は同+2.2%(前期:同+1.9%)と小幅に上昇した。
需要項目別に見ると、政府消費と総固定資本形成が成長率上昇の主因となったことが分かる(図表1)。内需については、個人消費が前年同期比+6.8%(前期:同+7.4%)とやや低下した一方、政府消費が同+5.2%(前期:同+1.2%)、総固定資本形成が同+6.8%(前期:+4.9%)とそれぞれ上昇した。輸出入については、輸出が同▲4.7%(前期:▲6.5%)、輸入が同▲2.8%(前期:同▲5.4%)となり、それぞれマイナス幅が縮小した。その結果、純輸出の成長率への寄与度は▲0.4%ポイントと、前期の▲0.2%ポイントからマイナス幅が拡大した。
実質GVA成長率は前年同期比+7.4%の上昇と、前期(同+7.1%)を上回り、市場予想2(同+7.4%)どおりの結果となった。
産業別に見ると、第三次産業が実質GVA成長率を押し上げたことが分かる(図表2)。成長を支える第三次産業は、小売・ホテル・運輸・通信業が同+10.6%(前期:同+12.8%)とやや低下したものの、金融・不動産・専門サービス業が同+9.7%(前期:同+8.9%)、行政・国防が同+4.7%(前期:同+2.7%)とそれぞれ上昇した。第二次産業は、製造業が同+9.3%(前期:同+7.2%)と上昇した一方、建設業が同+2.6%(前期:同+6.9%)、鉱業が同+3.2%(前期:同+4.0%)と低下した。また第一次産業は同+2.2%(前期:同+1.9%)と小幅に上昇した。
1 11月30日、インド中央統計機構(CSO)が国内総生産(GDP)統計を公表。
2 Bloomberg調査
2.3期連続の投資加速で景気回復
インドの実質GDP成長率は2期ぶりに上昇し、7%台半ばまで回復した。多くのアジア新興国が資源価格下落や輸出不振を受けて景気が停滞するなか、同国は堅調な内需を背景に景気回復が進んでいる。需要項目別に見ると、消費を除く項目で伸び率が上昇しており、なかでも投資は3期連続で上昇している。また供給側から見ても製造業は3期連続で全体を上回る成長が続いており、モディ首相の目指す製造業の育成・振興は進展していると言える。
投資加速の背景としては、年明け以降の1.25%の利下げとインフレ圧力の後退による実質金利の低下や新政権による外資規制の緩和、投資認可の加速といった投資環境の改善が挙げられる。実際、海外直接投資(FDI)はモディ首相の積極的な外交政策による投資誘致も追い風となり、2014年から平均して前年比20%増を上回るペースで拡大してきた(図表3)。また、政府は原油安を追い風に実施した燃料補助金削減によって捻出した予算をインフラ整備などに充てており、政府の資本支出は2015年度に大幅に増加している。7-9月期の資本支出は執行加速によって前年比41.1%増と拡大し、公共部門も投資の拡大に寄与している。
GDPの約6割を占める個人消費は、モンスーンの雨不足による干ばつ被害を受けた地域では農業収入が減ったほか、政府は今年の雨季作物の最低支持価格(MSP)や全国農村雇用保障法(NREGA)による現金給付の伸びを抑制するなど農村保護策が不十分であることから、農村部の需要鈍化が消費全体を下押しした。労働人口の約5割が農業に従事する同国では、農村部の所得悪化が消費に及ぼす悪影響は大きい。実際、農村部が主な購買層である二輪車の販売台数は7-9月が前年比1.3%減と低迷している(図表4)。しかし、乗用車の販売台数は7-9月が同6.9%増と、低インフレ環境と金利低下を受けて都市部を中心に堅調に推移するなど、都市部の消費が全体を下支えしている。
このように7-9月期は引き続き内需中心の景気回復を遂げたものの、今後も更に成長率が加速するほど同国の景気は強くはないだろう。まず、先行きの物価は原油安による下押し圧力が後退するほか、雨不足による食料インフレ懸念も燻るなど緩やかな上昇基調を辿る可能性が高い。また中央銀行が示す適切な実質金利(1.5-2.0%)を考慮すると先行きの利下げ余地は小さく、商業銀行の不良債権問題が燻るなかでは貸出金利の引下げに対する期待は持ちにくい。さらに足元では対内証券投資が流出、対内直接投資は鈍化している。結果、個人消費と民間投資が加速するとは見込みにくい。しかし、物価を低水準にコントロールできれば来年前半にも小幅の利下げが見込まれる。また11月から始まる冬季国会で物品・サービス税(GST)導入を前進させるなど構造改革期待を高められれば、消費・投資が底堅く推移し、当面は横ばい圏での経済成長が続くだろう。
投資加速の背景としては、年明け以降の1.25%の利下げとインフレ圧力の後退による実質金利の低下や新政権による外資規制の緩和、投資認可の加速といった投資環境の改善が挙げられる。実際、海外直接投資(FDI)はモディ首相の積極的な外交政策による投資誘致も追い風となり、2014年から平均して前年比20%増を上回るペースで拡大してきた(図表3)。また、政府は原油安を追い風に実施した燃料補助金削減によって捻出した予算をインフラ整備などに充てており、政府の資本支出は2015年度に大幅に増加している。7-9月期の資本支出は執行加速によって前年比41.1%増と拡大し、公共部門も投資の拡大に寄与している。
GDPの約6割を占める個人消費は、モンスーンの雨不足による干ばつ被害を受けた地域では農業収入が減ったほか、政府は今年の雨季作物の最低支持価格(MSP)や全国農村雇用保障法(NREGA)による現金給付の伸びを抑制するなど農村保護策が不十分であることから、農村部の需要鈍化が消費全体を下押しした。労働人口の約5割が農業に従事する同国では、農村部の所得悪化が消費に及ぼす悪影響は大きい。実際、農村部が主な購買層である二輪車の販売台数は7-9月が前年比1.3%減と低迷している(図表4)。しかし、乗用車の販売台数は7-9月が同6.9%増と、低インフレ環境と金利低下を受けて都市部を中心に堅調に推移するなど、都市部の消費が全体を下支えしている。
このように7-9月期は引き続き内需中心の景気回復を遂げたものの、今後も更に成長率が加速するほど同国の景気は強くはないだろう。まず、先行きの物価は原油安による下押し圧力が後退するほか、雨不足による食料インフレ懸念も燻るなど緩やかな上昇基調を辿る可能性が高い。また中央銀行が示す適切な実質金利(1.5-2.0%)を考慮すると先行きの利下げ余地は小さく、商業銀行の不良債権問題が燻るなかでは貸出金利の引下げに対する期待は持ちにくい。さらに足元では対内証券投資が流出、対内直接投資は鈍化している。結果、個人消費と民間投資が加速するとは見込みにくい。しかし、物価を低水準にコントロールできれば来年前半にも小幅の利下げが見込まれる。また11月から始まる冬季国会で物品・サービス税(GST)導入を前進させるなど構造改革期待を高められれば、消費・投資が底堅く推移し、当面は横ばい圏での経済成長が続くだろう。
(2015年12月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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