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人口減少と一億総活躍社会-「介護離職ゼロ」が目指す社会とは

土堤内 昭雄

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2014年の日本の出生数は約100万人、死亡数は約127万人、人口の自然減は約27万人にも上る。地方中核市がひとつ消滅するほどの人口減だ。人口減少社会の課題は単に人口の減少にとどまらない。重要な点は、人口構造が現在と相似形で縮小するのではなく、相対的に生産年齢人口が大きく減少し、社会的扶養が拡大することだ。いわゆる「騎馬戦型」社会から「肩車型」社会へ移行するのである。
そのため労働力人口の確保が喫緊の課題となるが、少子化対策により出生数を大幅に増やすことは、日本の人口ピラミッドをみるとあまり期待できないのは明らかだ。従って、現有勢力である就業人口が少しでも減らないように、「介護離職」や「育児離職」などを食い止めることが必要になる。しかし、そこには人口減少という人口数の問題への対応だけでなく、国民一人ひとりの能力のパフォーマンスの向上促進を図るというもうひとつの重要な意味がある。
前述の緊急対策には、『子育てや介護と仕事が両立しやすくなることなどにより、様々な人材が参加することで、社会に多様性が生まれる。それが労働参加率の向上だけでなく、イノベーションを通じて生産性の向上を促し、経済の好循環を強化する』とある。即ち、社会保障という安全ネットが整備された社会では、国民は安心して働くことができるために生産性の高い社会が構築されるというのだ。
これまで私は人口減少社会への対応として、人口を増やす努力だけでなく、人々の能力を十分発揮できる社会構築の必要性を主張してきた。サーカスの綱渡りにたとえると、安全ネットがない場合、演技者は転落のリスクを考えて8割程の能力しか発揮できないかもしれないが、安全ネットがあれば全ての能力を、あるいはそれ以上の能力を発揮するかもしれない。社会保障という安全ネットの整備により国民の就業率とパフォーマンスが1割上昇すれば、たとえ人口が1割減少してもGDPは維持、一人当たりGDPは増加する。「介護離職ゼロ」が目指す社会とは、国民が将来不安を感じないような生活保障に支えられた、誰もが存分に自らの能力を発揮できる“個を活かす”社会なのである。
(2015年12月08日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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