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- J-REIT市場の収益見通し~現在の市場環境下、5年間で14%成長を見込む~
2015年11月30日
3――運用戦略の成果は、総資産利益率(ROA)の上昇に表れる
1|市場全体のROAはボトムの2.0%から2.4%に改善
3つの運用戦略がいかにしてROAを高めて分配金の増加をもたらすのか、J-REITの財務データをもとに確認したい。図表―5は、J-REIT全体の収益構造について、「経常利益(分配金原資)」=「NOI」-「支払利息」-「減価償却費」-「運用報酬等」の各項目を半期毎に集計し、それぞれ総資産(期初・期末平残)で割った数値(年率換算)を示している。これによると、2015年上期のNOI利回り(対総資産)は年率4.9%であり、そこから費用項目の「支払利息」0.6%、「減価償却費」1.2%、「運用報酬等」0.7%を控除したROAは2.4%であった。
このうち、「減価償却費」と「運用報酬等」は、総資産額に連動する固定費の性質が強く、総資産に対する両項目の合計値は1.8%から1.9%で毎期の変動は小さい。したがってROAを高めるにはトップラインのNOIを増やす(NOI利回り上昇)、あるいは金融機関などへの支払利息を削減する(負債利子率低下)ことが求められる。
2015年上期のROAは2.4%であり、2011年下期2.0%から0.4%上昇した。このうち、NOI利回り上昇の効果は0.2%(4.7%→4.9%)、支払利息削減の効果は0.3%(0.9%→0.6%)であった。この間、運用不動産の利回り向上と負債利子率の低下がともに分配金増に寄与したことになる。
3つの運用戦略がいかにしてROAを高めて分配金の増加をもたらすのか、J-REITの財務データをもとに確認したい。図表―5は、J-REIT全体の収益構造について、「経常利益(分配金原資)」=「NOI」-「支払利息」-「減価償却費」-「運用報酬等」の各項目を半期毎に集計し、それぞれ総資産(期初・期末平残)で割った数値(年率換算)を示している。これによると、2015年上期のNOI利回り(対総資産)は年率4.9%であり、そこから費用項目の「支払利息」0.6%、「減価償却費」1.2%、「運用報酬等」0.7%を控除したROAは2.4%であった。
このうち、「減価償却費」と「運用報酬等」は、総資産額に連動する固定費の性質が強く、総資産に対する両項目の合計値は1.8%から1.9%で毎期の変動は小さい。したがってROAを高めるにはトップラインのNOIを増やす(NOI利回り上昇)、あるいは金融機関などへの支払利息を削減する(負債利子率低下)ことが求められる。
2015年上期のROAは2.4%であり、2011年下期2.0%から0.4%上昇した。このうち、NOI利回り上昇の効果は0.2%(4.7%→4.9%)、支払利息削減の効果は0.3%(0.9%→0.6%)であった。この間、運用不動産の利回り向上と負債利子率の低下がともに分配金増に寄与したことになる。
これを、運用不動産の約50%を占める「オフィスビル」と「オフィスビル以外のアセット」に分けてみると、「オフィスビル」のNOIが10%減少する一方、「オフィスビル以外のアセット」のNOIは安定推移している。これは、アセットタイプ毎に市場賃料の動きやテナントとの賃貸借契約内容が異なるためである。一般に、オフィスビルやホテルの市場賃料は景気感応度が高く、上下に大きく変動する傾向が見られるのに対して、住宅や物流の市場賃料は景気に関わらず比較的安定している。また、オフィスビルや住宅の契約期間が通常2年に対して、商業や物流は5年から20年と長期にわたることが多い。さらに、商業やホテルは売上などに連動した歩合賃料を締結するケースもある。
三鬼商事の発表によると、オフィスビルの都心5区の平均募集賃料は2008年をピークに5年間で29%下落した(図表―7)。同様に、J-REITが保有するオフィスビルのNOIも市況悪化の後を追って2008年下期から2015年上期まで28%減少している。このように、J-REITのオフィスビル収益は市場賃料に連動したパッシブな動きが見て取れる。
現在、都心5区の募集賃料はオフィス需要の拡大やデフレ心理の後退などから22ケ月連続で前月比プラスとなり8.7%上昇している。また、ニッセイ基礎研究所の推計では、J-REITのオフィスビル賃料と市場賃料の乖離(賃料ギャップ)は個別ビル毎に差はあるもののこれまでの水準調整を経てほぼ解消したと見る。今後は市場賃料の上昇を反映し既存ビルでもNOIの増加が期待できそうだ。
三鬼商事の発表によると、オフィスビルの都心5区の平均募集賃料は2008年をピークに5年間で29%下落した(図表―7)。同様に、J-REITが保有するオフィスビルのNOIも市況悪化の後を追って2008年下期から2015年上期まで28%減少している。このように、J-REITのオフィスビル収益は市場賃料に連動したパッシブな動きが見て取れる。
現在、都心5区の募集賃料はオフィス需要の拡大やデフレ心理の後退などから22ケ月連続で前月比プラスとなり8.7%上昇している。また、ニッセイ基礎研究所の推計では、J-REITのオフィスビル賃料と市場賃料の乖離(賃料ギャップ)は個別ビル毎に差はあるもののこれまでの水準調整を経てほぼ解消したと見る。今後は市場賃料の上昇を反映し既存ビルでもNOIの増加が期待できそうだ。
3|外部成長戦略は分配金増加にプラス寄与。課題は取得利回りの低下
J-REITによる物件取得額はリーマンショック後に低迷し、2009年には2,000億円台に落ち込んだ。その後、2012年にJ-REITの新規上場が再開し取得額は8,000億円まで回復し、不動産価格の上昇を先取りして積極姿勢に転じた2013年の取得額は2.3兆円と過去最高を記録した(図表―8)。続く2014年の取得額は1.6兆円、2015年(1-9月)も1.3兆円と高水準で、直近5年間で取得した物件が現在の運用不動産の約50%を占める。
また、取得利回りは2009年以降、既存ポートのNOI 利回り(対総資産)を上回る水準を確保している。過去最高の取得額となった2013年の取得利回りは平均5.5%で既存ポートに対して0.7%上回った。前回の不動産価格上昇期(06年~08年)は、既存ポート利回りを下回る水準で外部成長を行い、結果的に全体の利回りを押し下げてしまったが、今回は利回り重視の外部成長戦略が既存物件の減収を補いポート全体の利回り向上に寄与している。
J-REITによる物件取得額はリーマンショック後に低迷し、2009年には2,000億円台に落ち込んだ。その後、2012年にJ-REITの新規上場が再開し取得額は8,000億円まで回復し、不動産価格の上昇を先取りして積極姿勢に転じた2013年の取得額は2.3兆円と過去最高を記録した(図表―8)。続く2014年の取得額は1.6兆円、2015年(1-9月)も1.3兆円と高水準で、直近5年間で取得した物件が現在の運用不動産の約50%を占める。
また、取得利回りは2009年以降、既存ポートのNOI 利回り(対総資産)を上回る水準を確保している。過去最高の取得額となった2013年の取得利回りは平均5.5%で既存ポートに対して0.7%上回った。前回の不動産価格上昇期(06年~08年)は、既存ポート利回りを下回る水準で外部成長を行い、結果的に全体の利回りを押し下げてしまったが、今回は利回り重視の外部成長戦略が既存物件の減収を補いポート全体の利回り向上に寄与している。
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
公式SNSアカウント
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