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- 【インドネシア7-9月期GDP】前年同期比+4.7%~予算執行加速も低調な景気~
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7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%と前期(同+4.7%)から横ばいとなり、市場予想(同+4.8%)を僅かに下回った。成長率が5%を下回ったのは3期連続となる。個人消費が伸び悩み、輸出が資源を中心に4期連続で減少したことが景気停滞に繋がった一方、政府の予算執行が改善し、政府消費や建設投資が景気の下支え役となった。
消費は、まずGDPの5割強を占める個人消費が2期連続で5%を下回った。内訳を見ると食料・飲料といった必需品は底堅いものの、アパレルやホテル・レストランなど裁量的な消費は鈍化している。こうした消費の低迷は、インフレ率がルピア安に伴う輸入インフレ、金利が通貨防衛のためにそれぞれ高止まりし、景気低迷による受注量の減少を受けて労働集約型産業を中心にレイオフが増加するなど、消費を巡る環境が悪化したことが背景にある。実際、9月の消費者心理指数は87.8ポイントと過去5年間の最低水準を記録している。また政府消費は予算の見直しや省庁再編のために執行が遅れた年前半とは異なり、7-9月期は改善した。
一方、投資は改善の動きが見られた。建設投資は政府の予算執行の改善によって3期ぶりに上昇し、投資全体を押上げた。実際、政府の資本支出が増加しており、セメント販売量には回復傾向が見られる。また設備投資が7期ぶり、自動車が10期ぶりにプラス(前年比)に転じたことは好材料といえるが、ルピア安に伴う調達コストの増加や景気の先行き不透明感を受けて企業のマインドは低調であり、今回の改善が一時的な動きに止まる可能性もある。
インドネシア経済は、今後も消費と輸出の不調が続き、政府部門が更なる予算執行の加速で景気を下支えする構図は変わらず、10-12月期も景気は停滞するだろうが、その後は徐々に下げ止まる可能性が見え始めている。足元のインフレ率は景気減速を受けて低下し始めており、これから年末にかけて燃料補助金削減による物価押上げ要因が一巡すると、2015年のインフレ目標(3.0~5.0%)を達成する可能性は高く、中央銀行は年内にも小幅の利下げに踏み切ることが予想される。また政府は8月の内閣改造以降、経済政策を相次いで打ち出しており、規制緩和や投資手続きの簡素化・迅速化など数多くの施策を進めるとしている。構造改革が進展すれば、企業の投資マインドが回復し、徐々に投資主導の景気回復に向かう可能性もある。もっとも同国の政治の歩みは遅く、期待外れに終わる可能性も大きいだけに、経済政策が早期に実施に移されるか注意して見る必要があるだろう。
(2015年11月05日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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