2015年07月30日

【7月米FOMC】利上げ時期に関する示唆はなく、9月利上げの可能性は低下

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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【要旨】

1.金融政策の概要:予想通り政策金利の変更はなし

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月28-29日(現地時間)に開催された。金融政策の変更はなし。声明文では、住宅市場や労働市場の現状判断について上方修正されたほか、フォワードガイダンスでは政策金利引上げ開始の条件としている労働市場の「更なる改善」に、「もう一段」(some)の文言が追加され、労働市場の改善を踏まえた表現に変更された。一方、政策金利引上げ時期を示唆する表現の追加は見送られた。今回の決定は、全会一致での採決となった。

2.金融政策の評価:9月の政策金利引上げの可能性は低下、12月利上げ予想に変更

今回のFOMCでは、事前の予想通り政策金利の変更はなかった。声明文では前回会合(6月)以降の経済指標を踏まえて、住宅市場や労働市場の景気判断が上方修正されたものの、全体的に小幅な変更に留まった。
一方、前回会合に関する議事要旨では米国経済のリスクとして、ギリシャ問題や中国問題が言及されていた。前回会合以降、とくに7月に入ってからは、これら問題が非常に深刻化しており、海外経済に対する不透明感が相当程度高まっていた。このため、声明文では海外経済について何らかの評価が示されると考えていたが、今回は判断が避けられた。このことはFRBが米国経済への影響が軽微であると評価しているとも考えられるが、実際は評価が定まっておらずメッセージとして発表できる所まで分析できていないと考えるべきであろう。
さらに、前回盛り込まれたエネルギー価格の安定に関する記述も、足元の原油価格の下落を踏まえて削除されており、物価に対する不透明感も増したとみるべきだ。
このようにみると声明文の上方修正とは裏腹に、政策金利引上げに向けてFRBが米国経済に対する自信を深めているとは思えない。
来月予定されているジャクソンホール会議では、イエレン議長が講演を行わないことが決まっている。このため、FRBが9月に政策金利の引上げを開始する場合には、今回の声明文でその可能性を示唆する文言が盛り込まれると考えていた。しかしながら、今回は引上げ開始時期を示唆する文言の追加は見送られた。これを上記の点と併せて考えると9月利上げの可能性は後退したと言わざるをえない。これまで当研究所では9月の政策金利引上げを予想していたが、海外経済を中心に不透明感が高まっていることから、その影響を見極めるために、FRBは12月まで利上げを見送ると予想する。

(2015年07月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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