- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 【7月米FOMC】利上げ時期に関する示唆はなく、9月利上げの可能性は低下
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
【要旨】
1.金融政策の概要:予想通り政策金利の変更はなし
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月28-29日(現地時間)に開催された。金融政策の変更はなし。声明文では、住宅市場や労働市場の現状判断について上方修正されたほか、フォワードガイダンスでは政策金利引上げ開始の条件としている労働市場の「更なる改善」に、「もう一段」(some)の文言が追加され、労働市場の改善を踏まえた表現に変更された。一方、政策金利引上げ時期を示唆する表現の追加は見送られた。今回の決定は、全会一致での採決となった。
2.金融政策の評価:9月の政策金利引上げの可能性は低下、12月利上げ予想に変更
今回のFOMCでは、事前の予想通り政策金利の変更はなかった。声明文では前回会合(6月)以降の経済指標を踏まえて、住宅市場や労働市場の景気判断が上方修正されたものの、全体的に小幅な変更に留まった。
一方、前回会合に関する議事要旨では米国経済のリスクとして、ギリシャ問題や中国問題が言及されていた。前回会合以降、とくに7月に入ってからは、これら問題が非常に深刻化しており、海外経済に対する不透明感が相当程度高まっていた。このため、声明文では海外経済について何らかの評価が示されると考えていたが、今回は判断が避けられた。このことはFRBが米国経済への影響が軽微であると評価しているとも考えられるが、実際は評価が定まっておらずメッセージとして発表できる所まで分析できていないと考えるべきであろう。
さらに、前回盛り込まれたエネルギー価格の安定に関する記述も、足元の原油価格の下落を踏まえて削除されており、物価に対する不透明感も増したとみるべきだ。
このようにみると声明文の上方修正とは裏腹に、政策金利引上げに向けてFRBが米国経済に対する自信を深めているとは思えない。
来月予定されているジャクソンホール会議では、イエレン議長が講演を行わないことが決まっている。このため、FRBが9月に政策金利の引上げを開始する場合には、今回の声明文でその可能性を示唆する文言が盛り込まれると考えていた。しかしながら、今回は引上げ開始時期を示唆する文言の追加は見送られた。これを上記の点と併せて考えると9月利上げの可能性は後退したと言わざるをえない。これまで当研究所では9月の政策金利引上げを予想していたが、海外経済を中心に不透明感が高まっていることから、その影響を見極めるために、FRBは12月まで利上げを見送ると予想する。
(2015年07月30日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1824
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/08/04 | 米雇用統計(25年7月)-非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったほか、過去2ヵ月分が大幅に下方修正 | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
2025/08/01 | 低迷が続く米住宅市場-住宅ローン金利の高止まりから、当面住宅市場の本格回復は見込み難い | 窪谷 浩 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/08/01 | 米個人所得・消費支出(25年6月)-PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに前月から上昇、市場予想に一致 | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
2025/07/31 | 米FOMC(25年7月)-市場予想通り、5会合連続で政策金利を据え置き。理事2名が利下げを主張し反対票 | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年08月15日
マレーシア経済:25年4-6月期の成長率は前年同期比+4.4%~堅調な内需に支えられて横ばいの成長に -
2025年08月15日
グローバル株式市場動向(2025年7月)-米国と日欧の関税大枠合意により安心感が広がる -
2025年08月15日
生成AIを金融リスク分析の視点から読み解いてみる-なぜ人間によるファクトチェックが必要なのか -
2025年08月15日
QE速報:2025年4-6月期の実質GDPは前期比0.3%(年率1.0%)-トランプ関税下でも輸出が増加し、プラス成長を確保 -
2025年08月15日
地方で暮らすということ-都市と地方の消費構造の違い
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【【7月米FOMC】利上げ時期に関する示唆はなく、9月利上げの可能性は低下】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【7月米FOMC】利上げ時期に関する示唆はなく、9月利上げの可能性は低下のレポート Topへ