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- どうつくる「共働き社会」-“ストップ!少子化”への期待
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日本の主な少子化要因は、婚姻件数と完結出生児数(夫婦の最終的な出生子ども数)の減少である。2013年の婚姻件数は66万組と過去最低、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)は5.3になり、2010年の生涯未婚率は男性20.1%、女性10.6%にのぼる。一方、2010年の完結出生児数は1.96とはじめて2人を下回り、夫婦の出生力が低下している。
婚姻件数の減少は、ライフスタイルとして非婚を選ぶという自発的要因もあるが、近年では、『結婚したくてもできない』という非自発的要因が増えている。その背景には若年層の非正規雇用の増加による経済基盤の脆弱さがある。また、仕事と子育ての両立が難しい状況下では、出産を機に離職する女性も多く、出産による機会損失を恐れて結婚自体を躊躇する人もいる。女性が経済力を身につけることで、結婚生活に求める水準が高まり、それに応えられる男性対象者が少ないこともあるだろう。
完結出生児数の減少は、平均初婚年齢が高まり(晩婚化)、母親の出産年齢が高くなったこと(晩産化)による。2013年の平均初婚年齢は夫が30.9歳、妻が29.3歳、第1子出生時の母親の平均年齢は30.4歳だ。また、日本では高等教育における私的負担など子育て費用が高いことや、増える共働き世帯の仕事と子育ての両立が難しいために、望む数の子どもを産み・育てることを諦めている夫婦も多い。
婚姻件数と完結出生児数を増やすための方策のひとつは、新たな「共働き社会」を創造することだ。日本の高度経済成長期の『働く夫+専業主婦』という男性片働きモデルでは少子化解消は困難である。世帯収入の多寡に関わらず、妻が就労することで夫の家計負担を、夫が主体的に家事を担うことで妻の家事負担を軽減できれば、“夫と妻”双方の仕事と子育てが両立する「共働き社会」が可能になる。
あるネット婚活サイトには、男性プロフィールに必須項目の「年収」を女性にも明記して欲しいという男性の書き込みがあった。結婚を躊躇させ阻害している男性の「扶養呪縛」と女性の「結婚リスク」を低減するためにも、女性の「経済力」と男性の「家事力」を向上・支援することが求められる。
最近の若者の結婚状況をみると、高所得者または低所得者の男女同士による同類婚が進んでいる。前者のパワーカップルは、恵まれた経済環境のもとで子どもをつくり、社会格差が世代連鎖してゆく。社会が多様であるためには、経済状況に大きな制約を受けずに、望む人だれもが結婚・出産できることが重要だ。今日の少子化を食い止める有効な手段は、男女の意識改革と様々な協働による「共働き社会」をつくることであり、仕事と子育てを共に担うための「男女の活躍」推進ではないだろうか。
(2015年07月14日「研究員の眼」)
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