コラム
2012年12月20日

未婚男性と非婚女性の少子社会-「扶養呪縛」と「結婚リスク」からの解放

土堤内 昭雄

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日本の少子化が進んでいる。その理由の一つは婚姻率の低下だ。では、なぜ「結婚していない人」が増えているのだろう。「結婚しない」のか、あるいは「結婚できない」のか。「未婚」と「非婚」には大きな違いがある。いずれも「結婚していない状態」だが、「非婚」は「結婚しないことを主体的に選択すること」(広辞苑第六版)とある。

国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向調査」では、未婚者が独身にとどまっている理由を、「結婚できない理由」と「結婚しない理由」に区分している。25~34歳の男性は主に「結婚資金が足りない」など「結婚できない理由」が多く、同女性は「自由さや気楽さを失いたくない」など「結婚しない理由」が多い。また、雇用形態別の未婚率をみると、30歳代男性では非正規雇用者75.6%、正規雇用者30.7%、30歳代女性は非正規雇用者22.4%、正規雇用者46.5%と正反対の傾向を示している*。つまり男性は非正規雇用者で未婚(結婚できない)が多く、女性は正規雇用者で非婚(結婚しない)が多いことになる。

理由を推測すると、男性は自分一人で家族を扶養しなければならないという「扶養呪縛」があり、経済力がないと「結婚できない」と考えてしまうのではないだろうか。一方、女性は経済力があれば自分一人で暮らすことはできるが、結婚すると仕事と家庭の両立が難しくなるという「結婚リスク」があるので「結婚しない」と考えるのだろうか。

「第14回出生動向調査」によると、男女共に未婚者の8~9割は結婚の意思を持っていることから、『結婚望む人が、結婚できる社会』の実現が必要だ。そのためには、男性が自分一人で家族を扶養しなければならないという呪縛から解放され、夫婦で一緒に家計を支えることが重要だ。年収300万円でも夫婦で世帯収入600万円になれば十分生活できる。また、女性が結婚リスクを払拭するには、男性自身が家事、育児の半分を担うことをコミットし、社会的には男女の賃金格差を是正することが重要だ。そうすれば女性は結婚リスクを回避し、安心して結婚に踏み切ることができるだろう。

2012年の内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」では、『夫は外で働き、妻は家庭を守るべき』との考えに賛成する人が51.6%と2009年の前回調査から10.3%も増加している。未婚男性と非婚女性が増加する今日、性別役割分業は婚姻率の低下に繋がり、ますます少子化を促進することになるだろう。今後、未婚男性が「扶養呪縛」から、非婚女性が「結婚リスク」から解放され、男女が協働して家庭と社会を支えていくことが、少子社会の課題解決にとって効果的な処方箋になると思われる。


 
* 厚生労働省「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」(2012年8月公表)


(2012年12月20日「研究員の眼」)

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