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- 約款の数字 1から1095まで-第3回 「3」について(指定代理請求制度)
第3回のテーマである「3」については、約款上、さまざまな条項で登場する。
保険金や給付金などを請求する権利が消滅する「時効」の期間は「3年」であるし、保険料が支払われず、保険契約が失効したのちも一定の手続により従来の保障が回復する「復活」の可能期間も「3年」である。
ここでは、「指定代理請求制度」の指定代理請求人の範囲として規定されている、「3親等内の親族」について取り上げることとしたい。
実は、筆者はこの制度の1992年の創設や、2002年の改定などに携わっている1ので、ひときわ思い入れの強い制度である。
指定代理請求制度は、1992年に発売された、がん・心筋梗塞・脳卒中に罹患した場合に保険金を支払う3大疾病保障保険(特定疾病保障保険)、余命6か月と診断された場合に保険金を支払うリビング・ニーズ特約において、受取人である被保険者が、がん不告知や余命6か月の不告知、意思能力喪失の場合など、保険金を受け取ることができないといった事態を防ぐために導入されたものである。
この制度は、(1)被保険者が受取人となる保険給付について、(2)被保険者が保険給付を受け取ることのできない特別な事情がある場合に、(3)保険契約者が被保険者と一定の関係を有する者からあらかじめ被保険者の同意を得た上で指定した指定代理請求人が、(4)被保険者の代理人として保険給付を受け取ることができるという制度である。
(1)指定代理請求制度の対象となる保険給付は、被保険者が受取人となる「第三分野の保険」2とよばれるものが中心で、入院給付金、手術給付金、3大疾病保険金(がん・心筋梗塞・脳卒中に罹患したときに支払われる保険金)、リビング・ニーズ保険金(余命6か月と診断されたときに支払われる保険金)などである。さらに、後述の通り、年金や満期保険金なども対象保険給付としている会社も多い。
(2)被保険者が保険給付を受け取ることのできない特別な事情とは、保険給付の請求を行う意思表示を被保険者自身が行うことが困難である場合、被保険者ががんなどに罹患しているにもかかわらず、被保険者自身が傷病名の告知を受けていない場合などである。
(3)保険契約者が被保険者と一定の関係を有する者として、指定代理請求人として指定できる者は、戸籍上の配偶者、直系血族(被保険者の父母、子などの直系)、兄弟姉妹、被保険者と同居または生計を一にする3親等内の親族(甥・姪など)は、各社がほぼ共通して定めている。このほか、被保険者と同居し、または被保険者と生計を一にしているその他の者(内縁の妻など)や、被保険者の療養看護に努め、または被保険者の財産管理を行っている者も対象として定めている会社がある。
このように、指定代理請求人の範囲は、被保険者の代理人として受け取った保険給付を、被保険者のために役立ててくれることが期待できる者として各社が独自に設定している。
3親等内の親族については、民法において、配偶者や直系血族、兄弟姉妹には、互いに扶養する義務があるが、3親等内の親族についても、特別の事情があるときは、家庭裁判所の審判により、扶養の義務を負わせることができるとされていることを参考に設定している。
このほか、健康保険においても、被保険者との同居と生計を一にしていることなどを条件に、3親等内の親族を被扶養者とすることを認めていることも参考とした。
(4)指定代理請求人が被保険者の代理人として保険給付を受け取る際には、通常の医師による診断書などの請求書類のほかに、被保険者との関係を証明する戸籍謄本、同居の事実を証明する住民票、生計を一にすることを証明する健康保険証の写しなどが必要となる。
当初、第三分野の保険について導入された指定代理請求制度は、高齢化社会の進展の中で、対象給付を拡大し、年金や満期保険金などについても対象とする生保会社が多くなってきている(たとえば、日本生命では2002年に対象給付を拡大するなどの改定を行っている)。
一定年齢以降に支払が開始される年金や、一定年齢時に満期を迎える満期保険金などは、受取時に被保険者が加齢による認知症などで意思無能力となっている事態が想定され、こうしたケースに保険制度上あらかじめ備える制度と位置づけられる。
指定代理請求制度は、重病に対する病名の不告知状態や、認知症による意思無能力状態など、もっとも保険給付を必要とするケースにあらかじめ備えるものであり、将来の保険金や給付金などを必ず受け取るための「転ばぬ先の杖」としての制度といえよう。
実際に、「万一の場合の保険金請求のための代理人を自分の信頼できる者にあらかじめ指定しておくことができれば保険金請求権者である被保険者にとっても便宜である」3とされ、広く普及している。
指定代理請求人は「万一の際もっとも信頼できる人物」を指定すべきであり、家族状況などに変化があれば、適宜適切な見直しが必須となる。
なお、損保会社が発売している第三分野の保険などにも同様の制度があるが、海外にはこうした取扱はない模様である。
(2015年05月25日「研究員の眼」)
小林 雅史
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