- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 貿易統計15年3月~貿易収支(季節調整値)は約4年ぶりの黒字も、1-3月期の外需寄与度はマイナスに
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■見出し
・貿易収支(季節調整値)は東日本大震災以降では初の黒字に
・輸出入ともに回復
・貿易黒字の定着には至らず
・1-3月期の外需寄与度は4四半期ぶりのマイナスに
■要旨
財務省が4月22日に公表した貿易統計によると、15年3月の貿易収支は2,293億円の黒字となった。輸出が前年比8.5%(2月:同2.5%)と前月から伸びを大きく高める一方、輸入の減少幅が2月の前年比▲3.6%から同▲14.5%へと拡大したため、貿易収支は前年に比べ16,794億円の大幅改善となった。
季節調整済の貿易収支は33億円(2月は▲5,732億円の赤字)と小幅ながら4年1ヵ月ぶりの黒字となった。輸出が前月比3.7%(2月:同▲6.9%)と2ヵ月ぶりに増加する一方、輸入が前月比▲5.0%(2月:同▲2.9%)と4ヵ月連続で減少した。
貿易収支には季節性があるため、実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。原数値の貿易収支は2年9ヵ月ぶりの黒字だが、季節調整値では東日本大震災発生直前の11年2月以来の黒字となる。実態としては東日本大震災以降、初の貿易黒字とみることができる。
3月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=54.8ドル(当研究所による試算値)となり、2月の49.5ドルから上昇した。ドバイ原油は、3月は50ドル台半ばで2月とほぼ変わらなかったが、4月に入り60ドル台まで上昇している。このため、通関ベースの原油価格は、4月は3月からほぼ横這いとなるが、5月以降は上昇に転じる可能性が高い。一方、調達価格が原油価格連動型の長期契約となっている液化天然ガス(LNG)の輸入価格は、既往の原油価格下落の影響が反映されることによりしばらく低下するが、夏場以降は上昇に向かうだろう。
輸出数量はここにきて持ち直しているが、海外経済の回復が緩やかにとどまっていることから伸びを大きく高めることは期待しにくい。一方、輸入数量は個人消費を中心とした国内需要の回復を受けて15年度入り後には増加ペースが高まることが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は当面、ゼロ近傍で一進一退の動きが続いた後、夏場以降は再び赤字基調になると予想する。
3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、15年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比1%台半ばの増加、輸入が前期比2%台後半の増加となることが見込まれる。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.1%(年率▲0.5%程度)と4四半期ぶりのマイナスとなることが予想される。
現時点では、設備投資が増加に転じることなどから国内需要の伸びが高まる一方、外需が成長率の押し下げ要因となるため、実質GDP成長率は前期比年率1%台半ばになると予想している。
(2015年04月22日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/09/17 | 貿易統計25年8月-関税引き上げの影響が顕在化し、米国向け自動車輸出が数量ベースで大きく落ち込む | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/09/08 | 2025・2026年度経済見通し-25年4-6月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/09/01 | 法人企業統計25年4-6月期-トランプ関税の影響で製造業は減益も、非製造業が堅調を維持 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/08/29 | 鉱工業生産25年7月-自動車中心に下振れリスクが高く、7-9月期は減産の可能性 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年09月18日
資金循環統計(25年4-6月期)~個人金融資産は2239兆円と過去最高を更新、投信・国債・定期預金への資金流入が目立つ -
2025年09月18日
欧州委員会、Googleに制裁金-オンライン広告サービス市場での支配力濫用 -
2025年09月18日
米住宅着工・許可件数(25年8月)-着工件数(前月比)は減少に転じたほか、市場予想も下回る -
2025年09月17日
ふるさと納税「お得競争」の終焉-ポイント還元の廃止で問われる「地域貢献」と「持続可能な制度」のこれから -
2025年09月17日
貿易統計25年8月-関税引き上げの影響が顕在化し、米国向け自動車輸出が数量ベースで大きく落ち込む
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【貿易統計15年3月~貿易収支(季節調整値)は約4年ぶりの黒字も、1-3月期の外需寄与度はマイナスに】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
貿易統計15年3月~貿易収支(季節調整値)は約4年ぶりの黒字も、1-3月期の外需寄与度はマイナスにのレポート Topへ