2015年02月27日

家計調査15年1月~個人消費の持ち直しは依然として緩慢

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・実質消費支出は減少幅が拡大
・先行きは実質所得の増加が個人消費の回復を後押し

■要旨

総務省が2月27日に公表した家計調査によると、15年1月の実質消費支出は前年比▲5.1%となった。減少幅は12月の同▲3.4%から拡大し、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲4.1%、当社予想は同▲4.3%)を下回る結果となった。実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲0.7%(12月:同▲0.6%)と2ヵ月連続で低下した。消費税率引き上げ直後から夏場にかけての最悪期は脱したものの、持ち直しのペースは極めて緩やかなものにとどまっており、駆け込み需要が本格化する前の水準を大きく下回っている。
同日、経済産業省から公表された商業動態統計によると、15年1月の小売業販売額は前年比▲2.0%(12月:同0.1%)と7ヵ月ぶりの減少となった。季節調整済指数も前月比▲1.3%の低下となった。商業動態統計の販売額は金額ベース(消費税を含む)となっており、ここにきて物価上昇率が低下していることが伸び率を押し下げる一因になっている。また、13年度末にかけて消費税率引き上げ前の駆け込み需要を主因として高い伸びとなっていたため、前年と比べた伸び率はその裏が出る形で低く出ている面もある。ただし、物価上昇分を考慮した実質ベースの季節調整済の販売額指数(当研究所による試算値)で見ても、14年9月をピークに水準が徐々に低下しており、個人消費の回復が足踏み状態にあることを示すものとなっている。

個人消費は低調な動きが続いているが、雇用・所得環境の改善が続く中、原油価格下落を主因とした消費者物価上昇率の低下によって、実質所得の押し下げ圧力は和らいでいる。消費者物価指数のうち、家計が実際に購入している財・サービスを対象とした「持家の帰属家賃を除く総合」は消費税率引き上げ後の14年5,6月には前年比4.4%の高い伸びとなったが、その後は鈍化傾向が続き15年1月には同2.9%となった。
14年度入り後の名目賃金の伸びは均してみれば前年比1%程度となっており、依然として物価上昇率を大きく下回っているが、消費税率引き上げの影響(2.4%)を除くと実質賃金上昇率はほぼゼロ近傍まで持ち直している。先行きについては、消費者物価上昇率がさらに低下することに加え、15年春闘では14年を上回る賃上げ見込まれるため、15年度入り後には実質賃金上昇率が前年比でプラスとなる可能性が高い。
GDP統計の個人消費は駆け込み需要の反動を主因として14年4-6月期に前期比▲5.1%と急速に落ち込んだ後、7-9月期、10-12月期ともに前期比0.3%の低い伸びにとどまったが、実質所得の持ち直しを主因として15年1-3月期以降は伸びを高めるだろう。ただし、消費税率引き上げによって個人消費の水準は大きく落ち込んでおり、駆け込み需要が本格化する前の水準に戻るのは16年までずれ込むことが予想される。

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2015年02月27日「経済・金融フラッシュ」)

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