2014年12月19日

【12月米FOMC】利上げに向けた慎重な地均しを開始

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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【要旨】

金融政策の概要

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が12月17-18日(現地時間)に開催された。予想通り、金融政策の変更は無かった。注目された声明文のフォワードガイダンスでは、市場の予想通り「相当な期間」(for a considerable time)から、「忍耐強く」(patient)という単語に変更されたものの、予想外に、従前の「相当な期間」と整合的であるとの一文がわざわざ加えられた。このため、声明文の内容は15年の物価見通しが下方修正されたことと併せ、市場ではハト派的と解釈された。また、FOMC後に行われたイエレン議長の記者会見においても、今後2回の会合では利上げしないと言及されたことから、一部で予想されていた早期利上げ観測は後退した。
一方、前回(10月会合)に引き続き、タカ派のフィッシャー(ダラス連銀総裁)とプロッサー(フィラデルフィア連銀総裁)、およびハト派のコチャラコタ(ミネアポリス連銀総裁)が、それぞれよりタカ派的、よりハト派的な変更を求めて反対しており、FOMC参加者間で金融政策に対するスタンスに幅があることを示した。(声明の詳細はPDFを参照)。

金融政策の評価

今回のFOMCでは、金融政策の変更は予想されていなかったことから、声明文でどの程度政策金利引き上げに向けた地均しをしてくるか注目された。すなわち、従前のゼロ金利解除までの「相当な期間」との表現が、政策金利引き上げまで「忍耐強く」との表現に変更される場合には、FRBは政策金利引き上げに対して、より積極的になったことを示すとの見方がされていた。
発表された声明文では、事前の予想通りに「忍耐強く」との表現に変更されたものの、従前の表現と整合的(consistent)であることも示された。この点について、イエレン議長は記者会見で、今回の変更が、金融政策に対するスタンス変更を意味する訳ではないと明確に述べた上で、従前の表現(「相当な期間」)が既に終了した量的緩和策(QE3)からの期間を示しているため、より経済情勢に注目する表現に変更するのが好ましいと考えた結果であるとの見方を示した。もっとも、市場とのコミュニケーションの視点からは、今回の表現変更は分かり難く、イエレン議長の発言にも歯切れの悪さは残った。
一方、景気判断については、労働市場は、前回から大きな変更はないものの、インフレについては、原油価格をはじめとするエネルギー価格の下落に伴い、短期的には下振れする可能性について認め、15年の個人消費支出(PCE)価格指数の見通しを1.6-1.9%のレンジから、1.0-1.6%に下方修正した。もっとも、16年以降の見通しについては据え置いており、イエレン議長は、短期的なインフレの下振れを認めつつも、労働市場が改善していくもとでインフレは緩やかに目標水準に向かうとの見方を示した。

(2014年12月19日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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