- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 社会保障全般・財源 >
- 生活保護受給世帯増加の主因は?-貧困の連鎖を断ち切るためにも「就労支援」への取組強化を-
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
7月半ばに公表された「平成25年 国民生活基礎調査の概況」によれば、我が国の相対的貧困率は、全体の16.1%に対し、ひとり親と子世帯では54.6%と、依然として高い水準となっている。このような経済的困窮に対するセーフティネットである生活保護制度の適用状況についてみると、生活保護の受給世帯数は20年以上も増加を続けており、最新の結果では160.2万世帯にのぼっている。世帯類型別の内訳をみると「高齢者世帯」が概ね4~5割で最も多く、実数、構成比とも伸び続けているのに対し、「障害・傷病者世帯」、「母子世帯」はそれぞれ実数としては伸びているものの、全体に占める構成比では概ね一貫して低下傾向を示している。このように、高齢化の進展を背景として伸び続ける「高齢者世帯」は、受給世帯数増加の主因であるように考えられがちである。しかし、実際には、占率の高い「高齢者世帯」の影で「その他世帯」の増加が15年以上続いており、その増加率は「高齢者世帯」や生活保護受給世帯全体の伸び率を上回っている。
母子世帯とその他世帯の保護開始の理由をみると、両世帯とも「離死別」や「失業・倒産」、「その他収入の減少」といった経済的な要因が約半数を占めて多くなっていることから、雇用や所得の減少などの経済的な要因が、近年では母子世帯のみならず様々な世帯にとって大きな問題となっている可能性を示していると考えられる。
生活保護制度は、国民のセーフティネットとして重要な役割を担っているものの、これ以上の生活保護受給世帯の増加は、出来る限り抑制されることが望ましい。貧困の連鎖を断ち切るとともに、受給世帯数の増加を抑制していくためには、母子世帯やその他世帯といった就労可能な世帯を対象とした就労支援の仕組みのより一層の強化が、急務といえるのではないだろうか。
(2014年08月14日「基礎研レター」)
井上 智紀
井上 智紀のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/03/07 | 4つの志向で読み解く消費行動-若者は「所有より利用」志向、女性やシニアは「慎重消費」志向 | 井上 智紀 | 基礎研マンスリー |
2024/01/19 | 4つの志向で読み解く消費行動(1)-若者は「所有より利用」志向、女性やシニアは「慎重消費」志向 | 井上 智紀 | 基礎研レポート |
2023/04/27 | 投資経験の拡がりと今後の意向-経験者は増えるものの課題はリテラシーの向上 | 井上 智紀 | 基礎研レポート |
2023/04/27 | 「第12回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要 | 井上 智紀 | その他レポート |
新着記事
-
2025年04月25日
世界人口の動向と生命保険マーケット-生保マーケットにおける「中国の米国超え」は実現するのか- -
2025年04月25日
年金や貯蓄性保険の可能性を引き出す方策の推進(欧州)-貯蓄投資同盟の構想とEIOPA会長の講演録などから -
2025年04月25日
「ほめ曜日」×ご褒美消費-消費の交差点(9) -
2025年04月25日
欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- -
2025年04月25日
若手人材の心を動かす、企業の「社会貢献活動」とは(2)-「行動科学」で考える、パーパスと従業員の自発行動のつなぎ方
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【生活保護受給世帯増加の主因は?-貧困の連鎖を断ち切るためにも「就労支援」への取組強化を-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
生活保護受給世帯増加の主因は?-貧困の連鎖を断ち切るためにも「就労支援」への取組強化を-のレポート Topへ