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- 【7月米雇用統計】悲観する内容ではないが…、「質」の改善は進んでいない
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【要旨】
結果の概要:市場予想を下回る
8月1日、米国労働省(BLS)は7月の雇用統計を公表した。7月の非農業部門雇用者数は前月対比で20.9万人の増加(前月改定値:+29.8万人)となり、増加幅は前月から縮小、市場予想の+23.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)に届かなかった。しかし、雇用改善の目途となる20万人は6カ月連続で達成した。
失業率は6.2%(前月:6.1%、市場予想:6.1%)と前月より上昇、こちらも横ばいを見込んでいた市場予想より悪い結果となった。ただし、労働参加率は62.9%(前月:62.8%)と改善している(詳細はPDFを参照)。
結果の評価:「質」の回復は進まず
7月の雇用増は予想を下回ったが、6月までの雇用拡大幅が大きかったため、今回の結果を悲観的に捉える必要はないだろう。雇用増は7月だけでも雇用回復の目安となる20万人を超えており、6カ月平均で見れば24.4万人、12カ月平均でも21.4万人に達している。素直に良好な結果だったと言って良いだろう。
ただし、市場で注目される雇用の「質」の回復は進んでいない。
「質」の指標のなかでもFRBのイエレン議長が「雇用環境の改善は最終的に賃金に波及する」として挙げたことで、賃金上昇率への注目度は高まっている。しかし、7月の時間当たり賃金伸び率(全雇用者ベース)は前年同期比で見て+2.0%(前月:+1.9%、市場予想:+2.2%)、前月比で見て+0.0%(前月:+0.2%、市場予想:+0.2%)と伸び率はほぼ横ばいにとどまり、市場予想を下回っている。管理者を除く生産者ベースで見ると、2012年の後半を底にして上昇基調にあったが、2014年に入ってからは上昇ペースに鈍化が見られる。少なくとも、イエレン氏が適正水準とする3-4%とはまだ大きな差がある。
その他の「質」に関する指標について見ると、7月は労働参加率が全体で見るとやや改善したことは好感される。しかし、労働力の中心となる年齢層(25-54才)についてはむしろ悪化している(6月:80.9%→7月:80.8%)。この世代の労働参加率を見ると、これまでの低下トレンドと比較して底入れした兆しはあるものの、明確な改善には至っていない。賃金上昇圧力が高まるためにも、まずこの世代の労働需給が引き締まることが必要になると思われるが、回復にはまだ時間を要すると見られる。それだけに、しばらくは「質」の改善ペースが注目されるだろう。
(2014年08月04日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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